今年はホリデーシーズンの買い物を店舗でする人が減るなかで、玩具売り上げの多くはオンラインへと移行すると予想されている。一方で玩具ブランドたちはTikTokやYouTubeといったデジタルプラットフォームに注力している。コロナウイルスの感染拡大前からこの流れは存在していたが、それがさらに加速している。
リテール業界においては、あらゆるプロダクト・カテゴリーにおいてコロナウイルスが以前のビジネス形態を覆した。玩具カテゴリーも例外ではない。
今年はホリデーシーズンの買い物を店舗でする人が減るなかで、玩具売り上げの多くはオンラインへと移行すると予想されている。このことは大手玩具ブランドであるマテル(Mattel)やハズブロ(Hasbro)と同様に、ウォルマート(Walmart)やターゲット(Target)といったリテーラーたちもマーケティングの取り組みをオンラインにシフトする必要があることを意味している。彼らの人気玩具リストをオンラインで提示し、可能な限りの独自のプロモーション取引を獲得しようとしている。一方で玩具ブランドたちはTikTokやYouTubeといったデジタルプラットフォームに注力している。コロナウイルスの感染拡大前からこの流れは存在していたが、それがさらに加速している。
eマーケター(eMarketer)によると、玩具のeコマース売り上げは年比較で34.9%の増加が予測されている。前年の成長率は15.5%であった。また今年、eコマースは玩具の全売り上げのうち45.1%を占めるだろうと予測している。しかし、店舗における売り上げは、引き続き大きな割合を占めるだろう。アメリカにおける最大手の玩具リテーラーたちは、アメリカの実店舗を抱えるリテーラーの最大手とかぶっているからだ。トイザラス(Toys ‘R’ Us)が2017年に破産申告をして以来、玩具分野の売り上げを独占しているのは、eコマース大手のAmazonに加えてウォルマートとターゲットだ。
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「(玩具は)おそらく本格的にオンラインへと移った2番目、もしくは3番目のカテゴリーだろう。最初は本だった」とeマーケター、eコマース・アナリストのアンドリュー・リップスマン氏は言う。「両親は子どもの代わりに玩具を購入するが、両親は店舗の買い物体験が必ずしも必要ではない」。彼が指摘するのは、むしろ親にとっては子どもが欲しがっているプロダクトをオンラインでいかに簡単に見つけられるかの方が求められており、それがどれだけ早く配達され、どこのリテーラーが安く販売しているか、の方が重要だということだ。
不透明な今年の「売れ筋」商品
毎年、ウォルマート、Amazon、ターゲットは、レゴ(Lego)、ディズニー(Disney)、マテルといったトップ企業からの独自の限定セールを可能な限り獲得して、競合他社よりも優位に立とうと試みている。限定セールを獲得すれば、それをオンラインやカタログを通じて「玩具トップリスト」で高々と称賛するのだ。Amazonは2018年に紙に印刷されたカタログでホリデー向けのトップ玩具を宣伝することを始めている。リストといった古くからのマーケティング戦術が、玩具分野ではいかに大きな牽引力を持っているかを示している。
しかし、リテーラーたちが今年抱える課題のひとつは、何が「大人気の玩具」となるかが明確でない点だと、キアニー消費者研究所(Kearney Consumer Institute)のリーダーであるケイティー・トーマス氏はeメールで回答した。「伝統的な映画ローンチがなく、子供のアクティビティやハイブリッド形式の学習形式が原因で、子どもたち同士が会う機会も減っている。特定の玩具に関心が集まる会話があまり起きていない」。
昨年のウォルマート、Amazon、ターゲットによる「トップ玩具」リストには「アナと雪の女王2(原題:Frozen 2)」「スターウォーズ:スカイウォーカーの夜明け(原題:Star Wars: The Rise of Skywalker)」関連の玩具が含まれていた。どちらの映画も11月と12月に上映開始された。今年はそのような新しい映画はなく、リテーラーたちは代わりに過去の成功例から推測せざるを得なくなっている。ターゲットとウォルマートのリストには、ハリーポッター(Harry Potter)とスターウォーズのレゴセット、「アナ雪2」の人形が含まれている。
しかし、リテーラーたちは新しい限定セールを得るためにエンタメ・スタジオ以外にも、新しいパートナーを探している。たとえばターゲットの場合、ニューヨークの有名な玩具屋、FAOシュワルツ(FAO Schwartz)と提携。同社の有名な店舗内巨大ピアノのようなピアノ・ダンスマットといった限定プロダクトを提供する。
トライアル体験の新たな模索
リテーラーたちはまた、ホリデー・プロダクトを例年よりも早くから宣伝開始している。これは親たちが例年よりも早くにホリデー向けの買い物を開始するだろうとの読みだ。たとえば、ウォルマートはホリデー向け玩具のトップリストを9月の頭に公開した。
もうひとつの課題は、店舗での買い物をする人の数が減っているなかで、ブランドやリテーラーたちは店舗での玩具を「試してみる」体験を再現する方法を求めていることにある。これはここ数年、玩具売り上げがオンラインへと移るなかで、リテーラーたちがすでに準備を進めていたことでもある。
2018年、スタートアップであるキャンプ(Camp)がローンチされ、彼らは店舗にプロダクト・デモのためのスペースを増やした。それにより、近代的な玩具購入の体験を生み出すことを狙いとしている。同年、ウォルマートは動画スタートアップのエコー(Eko)との共同ベンチャーを生み出した。そのパートナー関係を通じて子どもたちがバーチャルにアンボックス(玩具のパッケージを開けて試す)ことができるウェブサイト、ウォルマート・ワンダー・ラボ(Walmart Wonder Lab)が生まれた。
「サイト上に動画コンテンツを持つリテーラーの数が増えている」と、カンター・コンサルティング(Kantar Consulting)のリテール分析部門シニア・バイスプレジデントであるトーリー・ガンデラック氏は言う。
一方で玩具ブランドたちは動画プラットフォームでの広告を増やしたり、インフルエンサーと提携して玩具のバーチャルお披露目を展開する契約を結ぶなどしている。ズールー(Zuru)やIMCトイズ(IMC Toys)などの玩具メーカーたちは、玩具を見せる動画がTikTok上でバイラルになることと売り上げの急増が同時に起きていることを確認している、とCNBCは先週報じた。一方でマテルのCOOであるリチャード・ディックソン氏は、米DIGIDAYの兄弟サイトであるモダンリテール(Modern Retail)で先月出演したポッドキャストにおいて、彼らにとっての重要なフォーカスのひとつとしてYouTubeを挙げた。マテルは公式チャンネル用の動画制作、インフルエンサーとのパートナー契約も増やしている。マテルのテレビ部門はNetflixとアニメーションの新作シリーズを制作する契約を結んだ。
「消費者のいる場所に継続して存在すること。それは今日ではあらゆる場所に存在することを意味している。我々の消費者にとって重要なすべてのプラットフォームに我々のブランドがいる必要があると認識することを意味している」と、彼は述べた。
[原文:How toy retailers and brands are preparing for a whole new world]
Anna Hensel(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)