高級店は顧客に対して、数千ドルもする新作ハンドバッグなどを買う気にさせる「ハイエンドな体験」を提供する必要がある。
しかし、ECサイトの世界では、高級店であっても、ほかの小売店と同じ戦場で戦わねばならず、ピクセルだけでプレミアムな体験を作ることはできない。どうすればWebサイトを豪華に見せることができるかという課題に、高級なデザイナーブランド各社は取り組んでいる。
以下にて、バーバリー、エルメス、ルイ・ヴィトンなど、デジタルに精通した一流ブランドが、どのようにしてプレミアムなオンライン体験を作り上げているかを解説しよう。
高級店は顧客に対して、数千ドルもする新作ハンドバッグなどを買う気にさせる「ハイエンドな体験」を提供する必要がある。
豊富な知識を有する親切な店員に案内されて店内を見て回る間に、シャンパンの入ったグラスを饗されることもあるだろう。たいてい店舗そのものも、ピカピカに磨き上げられている。「ハイエンドっぽいデザイン」を提供する、ファストファッションの店舗のゴチャゴチャぶりとは大違いだ。
一方、ECサイトの世界では、高級店であっても、ほかの小売店と同じ戦場で戦わねばならず、ピクセルだけでプレミアムな体験を作ることはできない。どうすればWebサイトを豪華に見せることができるかという課題に、高級なデザイナーブランド各社は取り組んでいる。
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以下にて、バーバリー、エルメス、ルイ・ヴィトンなど、デジタルに精通した一流ブランドが、どのようにしてプレミアムなオンライン体験を作り上げているかを解説しよう。
■ コンテンツ
単なる製品リストに留まらないオンライン体験を提供するうえで、何よりも重要なのはコンテンツだ。エルメスのオンラインショップでは、実店舗ではおそらく目にする機会のない、このブランドの奇抜で楽しい側面を体験できる。「スカーフのエルメスハウス(Hermès House of Scarves)」はイラストを使ったデザインで、ショッピングする際、顧客はエルメスハウスのいろいろな部分をクリックして、アイテムをウィッシュリストやショッピングカートに追加したり、製品動画を視聴することが可能だ。
エルメスのサイト「Hermès House of Scarves」のデザイン
バーバリーとルイ・ヴィトンは、実店舗のブランドイメージをオンラインでも踏襲しているが、ファッションショーの動画を再生したり、ファッションレビューを書いたりできるようになっている。これは実店舗ではあり得ない体験だ。
「コンテンツは重要なポイントだ。値札についているプレミアムな価格を、製品以外の要素で正当化できるからだ」と語るのは、デジタル広告会社アール・ジーエー(R/GA)でグループ・アカウント・ディレクターを務めるネダ・ホイットニー氏。「各ブランドは、自社のブランドロゴのすぐ横に製品ページを置くときには、巧みに行わなければいけない。重要なのは、ストーリーを語ること」。
■ パーソナライゼーション
高級店を頻繁に訪れ、高額な買い物をする顧客にとって、パーソナライズ化された体験は、小売店の価値を高めることにつながる。エルメスでは、カートにアイテムが追加されると、配送の方法や場所を尋ねるポップアップが表示される。Webサイトは顧客の好みや場所を記憶し、さらに多くのオプションを顧客に提示するのだ。バーバリーやルイ・ヴィトンも、顧客の位置情報を保存し、「独占的な情報」を徹底して提供している。
「高級店にとって、パーソナライゼーションは関係性を意味する」とヒュージ(Huge)のユーザーエクスペリエンス担当バイスプレジデントのクリスティーナ・ホワイト氏は語る。「こうしたブランドが本当に優れている部分は、顧客へのフォローだ。顧客について知っていることを活用し、その顧客情報に沿って独占情報を提供したり、イベントへの招待状を送ったりしている」。
■ 顧客サービス
高級店にとって、オンラインでの優れた体験とは、シームレスな顧客サービスを意味する。バーバリーもルイ・ヴィトンもエルメスも、送料無料、店舗または郵送による返品も無料、オンラインで購入または予約もでき、店舗で受け取ることも可能だ。
ルイ・ヴィトンとバーバリーは、どちらもポップアップ式ではないライブチャット機能を備えている。そのため、ユーザーは情報を求めて、無闇に探し回る必要もない。
また、バーバリーには「コールバック」(折り返し電話サービス)という機能があり、「コンサルタント」が顧客にすぐに連絡をするか、指定の時間に連絡するかを選ぶことができる。ルイ・ヴィトンはソーシャルメディアサービスを提供しているので、ブランドと連絡を取りたい場合は、@LVServicesでツイートするか、Facebookでメッセージを送ることで、対応してくれるという。どこも顧客とのコミュニケーションを充実させている。
L2のアナリスト、ジェーン・ソーンレソン氏は、「すべての高級小売店が採用すべき主要機能はいくつかあるが、いまのところ採り入れているのは、トップを走るブランドだけだ」と説明。そして、オンラインでの購入品を実店舗で受け取れるようにしているのは、高級小売店全体のうちの11%だけだと付け加えた。「メインとなる戦略は、必ずしも人々を店に呼び寄せることではなく、マルチチャンネルでの体験全体を革新することにある」と、語った。
Hilary Milnes(原文 / 訳:ガリレオ)
Image via Hermès House of Scarves