このコラムの著者、マーク・ダフィ(56)は、広告業界辛口ブログ「コピーランター(コピーをわめき散らす人)」の運営人。米BuzzFeedで広告批評コラムを担当していた業界通コピーライターだが、2013年に解雇を通達された。今回のコラムは、YouTubeの「バンパー」広告の作り方について。
このコラムの著者、マーク・ダフィ(56)は、広告業界辛口ブログ「コピーランター(コピーをわめき散らす人)」の運営人。米BuzzFeedで広告批評コラムを担当していた業界通コピーライターだが、2013年に解雇を通達された。趣味のホッケーは結構うまい。
記事タイトルを読んで「絵文字を使う!」と閃いた人は、大間違いだ。
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去年、YouTubeは新しいビデオ広告のフォーマットを導入した。それは、6秒の「バンパー」と呼ばれる形式だ。この新しい形式に対するブランドからの反応は、どれも良くなかった。だからこそ、今年のサンダンス映画祭でYouTubeは、いくつかの「クリエイティブ」広告エージェンシーを連れて来て、この形式の可能性を披露した。それでもブランドたちは、納得した様子ではない。しかし、正しいクリエイティブさえ使えば、ここには良い広告を作れる可能性が潜んでいる。Vineで流された昔の広告を参考にして欲しい。ここを検索すると、いくつか例も見られる。
かつては、気取った「実験的な」アート風な、かつ意義深い4分の「短編映画」なんてものを自信満々に作り、語っていた諸君たち「コンテンツ」クリエイティブにとって、この流れは非常に居心地の悪いものだろう。ちょうどここにメガホンが転がっていたので、いつもお伝えしている言葉を繰り返しておきたい。「諸君らの仕事は営業だ。諸君たちはライターではない。アーティストでもない、作家ではないのだ!!」。ふぅ、これは何度言っても言い足りない。
それでもインスピレーションが足りないという人は、インターネットの「ミーム(meme)」形式を使って、ブランドの広告を作ることからはじめると良い。繊細かつ複雑な君たちには、これほど単純な作業は難しすぎるかもしれない。しかし、頑張れば、君たちにも記憶に残る6秒広告を作ることができる。これは重要だ。なんてったって、諸君がかつて作った4分の下らない自己満足作品よりは、記憶に残らせないといけない(という言い方をすると簡単に聞こえるかもしれない)。
と、ここまで読んでも、まだ怖がっている方のために、「ミームを使った広告の考え方」を参考にやってみたいと思う。忘れてはいけない、ブランドにとって重要な要素と結びつけることが重要なのだ。
漂白剤「クロロックス」
クロロックスとしてはとにかく「白さ」を極めたいわけだ。なら、FOXニュースのコメンテーターのタッカー・カールソンや白人至上主義者のリチャード・スペンサー以上に「白い」ものは、存在しないことに気付くだろう。この広告を出して、カールソンやスペンサーが訴訟を起こしてきたら、さらに良い。これによって、オンラインやオフラインにおける「白さ/白人」にまつわる会話にブランドが登場すること、間違いなしだ。実際にクロロックスのエグゼクティブも真っ白なようだから、企業の実態にも即していると言える。
ビール「クアーズ」
これは簡単だ。サム・エリオットはもちろん、クアーズのCMのナレーションを担当してきた俳優だ。この広告もちょっとギャラを上げて顔も使わせてもらえば良い。タグラインに「dude(おい/お前/野郎/兄ちゃん)」とくっつけるだけで全体が一気に若くてオシャレな雰囲気になる。そこでナレーションが流れる「元気かよ。クアーズのバンケットビールでも飲みな。こうでないとな、兄ちゃんよ」。
TV番組「カーダシアン一家についていく」

Image via @kimkardashian
これはキム・カーダシアンが、6まで数字を指を使って数える姿を捉えるものだ。この6秒広告は、無音でも理解出来る必要がある。重要なのは、このスポットが番組のタイトル・コンテンツの比喩となっている点だ。中身もないし、複雑でもないし(数字を数えるのに「ついていく」のは)、誰でもできるくらい低レベルということが、伝われば良い。
ブリトー「チポートレイ」

Mir diamond mine photo via Wikipedia. Pentagon photo via Flickr.
チポートレイは商品であるブリトーの広告において、常に「大きく」て「リアル」だという点を押してきた。ヴェナブルズベル&パートナーズによる彼らの最新のスポットでは、巨大なブリトーのなかを歩く、コメディアンが登場する。しかし、この内容を6秒で実施するのは難しい。そこで代わりに、ブリトーが地球上に存在する大きな「穴」を埋める様子を見せる。もちろん音響効果や土煙の特殊効果もつける。フォントは映画『ハンガー・ゲーム』のタイトルに使われたものを使う。
ケチャップ「ハインツ」
このスポットには最高にかっこいい6秒の音楽が必要だ。ほかには何も付け足すものはない。ハインツの「舌」のように見える画像が2008年、ピッツバーグのエージェンシーによってカンヌに提出されたという経緯を知っておく必要はある。それはフェイクの広告だった。(注:このマット・ラブランク出演のハインツTVコマーシャルは1987年にカンヌで金獅子を受賞している)上のスポットの最後のコピーは、「誰とフレンチキスしたい?」。
これらの「広告」を考えるのにかかった所要時間は、それぞれ15分程度だった。カーダシアンのスポットに関しては、6秒しかかからなかった。6秒広告を考えるための足がかりとして、これらを使ってもらえると幸いだ。
Mark Duffy(原文 / 訳:塚本 紺)