Amazonがコロナ禍による配達遅延問題を解決するなか、意外にもTikTokがAmazonにおけるビューティ商品の売上を後押ししている。Amazonが同部門をいっそう重視するなか、ビューティブランドは次々とAmazonに公式ストアを立ち上げている。そのうえAmazonは、特にZ世代の支持を高めてもいる。
Amazonが新型コロナウィルスに起因する配達遅延問題を解決するなか、意外にもTikTokが同プラットフォームにおけるビューティ商品の売上を後押ししている。
Amazonがビューティ部門をなおいっそう重視するなか、ビューティブランドは独立系をはじめ、次々とAmazonに公式ストアを立ち上げている。新型コロナのせいで、米国では物流が2カ月ほど遮断されていたが、Amazonはすでに、同プラットフォームをセールスチャンネルのひとつとする大半のビューティブランドの商品については、配達時間を平時のそれとほぼ変わらない状態に戻している。
そのうえAmazonは、特にZ世代の支持を高めてもいる。リテール業界に精通するデジタル広告エージェンシー、CPCストラテジー(Strategy)による2019年の調査では、Z世代の女性の実に72%が商品の発見にAmazonを利用しているとの結果が出た。投資銀行パイパー・ジャフレー(Piper Jaffray)が米ティーンエイジャーを対象に実施した2019年の調査によれば、ビューティ商品の購入チャンネルとして、Amazonの人気は2018年の17位から5位に急上昇している。
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「もっとも手軽だと思った」
韓国系ビューティスタートアップ、ミミボックス(Memebox)の創設者/CEOハ・ヒョンソク氏は、Amazonでの販売における「No.1トラフィックドライバーは、我々の場合、TikTokにほかならない」と断言し、配達遅延が生じたパンデミック期間中にも、売上は伸び続けたと言い添える。同社のブランド、アイデューケア(I Dew Care)とアイムミミ(I’m Meme)はそれぞれのTikTokアカウントからAmazonの公式ストアにリンクしており、いずれの動画にも人気のハッシュタグ#amazonfindsが付いている。
ヒョンソク氏によれば、両ブランドとも、Amazonに公式ストアをオープンしたのは2020年1月のことで、TikTokの利用をはじめたのもその前後だという。アイデューケアが動画をTikTokにはじめてアップしたのは2019年12月であり、ペイド広告もハッシュタグチャレンジも行なわずに、すでに36万人のフォロワーを獲得している。アイムミミは2020年4月からTikTokへの投稿を開始した。
Amazonへのリンクは、ヒョンソク氏によれば、「もっとも手軽だと思った」からであり、「いまのところ非常に好調であり、今後もこのまま続けていくと思う」と言い添える。この先、ほかのリンクを試す可能性もあるが、「いまはまだ、このコミュニティにおけるTikTokオーディエンスの実体を見極め、彼女らの好みを把握している段階にある」という。
TikTok動画は現在、ECに直接リンクはしていない一方、中国版TikTokのドウイン(抖音)の動画にはコマースボタンが埋め込まれており、そこからアリババのTモール(天猫)をはじめ、いくつかのチャンネルに飛べる。TikTokが将来、米国でこれと同様の形態をとる可能性は十分に考えられる。
人気のタグ #amazonfinds
ただ、米ビューティブランド勢はいまだ、AmazonにフォーカスするTikTokには目を向けておらず、大半は自社のD2Cサイトにリンクさせている。たしかに、米人気シンガーのレディ・ガガ氏は、ミレニアルの若年層とZ世代がファンの大半を占めているにもかかわらず、自身のブランド、ハウスラボラトリーズ(Haus Laboratories)を2019年にAmazonとの独占契約で立ち上げ、TikTokアカウントから同プラットフォームに構えたD2Cストアにリンクさせているが、これは稀な例だ。ただし、多くのインフルエンサーは自らキュレートしたアフィリエイトリンクを介して、TikTokからAmazonに飛べるようにしている。米女優クリスタ・アレン氏(映画『13ラブ30(13 Going on 30)』での13歳の少女役)は人気のTikTokアカウントと、自らキュレートしたさまざまなビューティ商品をサードパーティ事業者に販売させるAmazonの公式ストアをリンクさせている。
Amazon絡みのビューティコンテンツは実際、TikTokで人気だ。ハッシュタグ#amazonfindsを付した動画の視聴数は7億2000万回に上り、特に注目度の高い投稿には、リングライトやフェイスローラー、頭皮マッサージ器など、さまざまなビューティ関連商品がフィーチャーされている。アイデューケアのフェイスパック商品、シュガーキトゥン(Sugar Kitten)に関する投稿は、このハッシュタグを付した動画のなかでもとりわけ高い人気を誇る。あるインフルエンサーによる米大手コスメブランド、レブロン(Revlon)の皮脂コントロール成分を含むファンデーション――ニキビ関連のコンテンツが豊富なプラットフォームで大きな反響を得られる商品――に関する投稿も然りだ。
Amazonの広報担当者によれば、ビューティおよびパーソナルケア商品の売上は、2020年4月、前年比で2倍近く増え、なかでもスキンケアおよびバス用品の伸びが著しかったという。ほかのカテゴリーでは、ブルーとピンクのヘアカラーリング剤――TikTok「eガール」のお気に入り――が好調だった。また、ネイルポリッシュの売上も倍増しており、売れ筋のカラーはエッシー(Essie)のバレエスリッパ(Ballet Slippers)と、O.P.I.のファニーバニー(Funny Bunny)、バブルバス(Bubble Bath)、ブラックオニキス(Black Onyx)だという。
配送状況はすでに平時に戻った
米Amazonの複数の倉庫で発生した新型コロナのアウトブレイク、そして同社のソーシャルディスタンシング対策により、一時は配達時間が最長1カ月にも及んだため、同プラットフォームを重用する多くのビューティブランドは3月から4月末にかけて、出品事業者(マーチャント)によるフルフィルメントに切り替えた。たとえば、ナチュラルスキンケアブランド、バイオクラリティ(BioClarity)も然りで、3月にマーチャントフルフィルメントへ切り替えたが、4月末に再びAmazonフルフィルメントに戻した。ミミボックスは一方、配達遅延を厭わず、Amazonフルフィルメントを変えなかった。ヒョンソク氏によれば、配送状況は平時のそれに完全に戻ったという。
「自社ネットワークのキャパシティ拡充と17万5000人の新規雇用により、プライム会員へ1日または2日で無料配送できる商品数を急ピッチで拡大している」と、前出のAmazon広報担当者はメールで回答した。「ビューティブランドを含め、サプライヤーが弊社フルフィルメントセンターに配送できる商品数の制限はすでに解除した」。
LIZ FLORA(原文 / 訳:SI Japan)