廃棄物リサイクルの テラサイクル (TerraCycle)は、D2Cブランドの間で人気のソリューションになりつつある。同社は、大企業と主にプラスチック廃棄物のリサイクルに取り組んでいるが、この1カ月間で、D2C消費者向けスタートアップ企業である下着ブランドのパレードと寝間着メーカーのリリーシルクとの提携した。
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廃棄物リサイクリング企業のテラサイクル(TerraCycle)は、D2Cブランドのあいだで人気のあるソリューションになりつつある。
2001年に設立されたテラサイクルは、大企業と協力して主にプラスチック廃棄物のリサイクルに取り組んでいる。同社のパートナーにはロレアル(L’Oréal)や、ペプシコ(PepsiCo)、プロクター・アンド・ギャンブル(Procter & Gamble)が名を連ねており、最近では、クローガー(Kroger)が加わった。クローガーは昨年、顧客がクローガーのプラスチック製パッケージを店舗に返せるリサイクリングプログラムを数千のプライベートブランド商品に拡大した。
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アパレル・繊維業界への参入を推進
テラサイクルはこの1カ月間で、ふたつのD2C消費者向けスタートアップ企業、下着ブランドのパレード(Parade)と寝間着メーカーのリリーシルク(Lilysilk)との提携を発表した。テラサイクルのブランドパートナーシップ担当シニアバイスプレジデントを務めるザカリー・ドミニッツ氏は、スタートアップ企業は「リソースが限られており」、しかし廃棄物の削減とリサイクルの「重要性を理解している」ため、テラサイクルのような企業と協力することを望んでいると述べる。このような種類のパートナーシップは、D2Cブランドの総合的なサステナビリティ目標のなかでますます大きな部分を占めるようになってきており、これらのブランドのエグゼクティブたちは、このような目標を自社のブランディングやマーケティングの取り組みに取り入れると語っている。
テラサイクルは、廃棄物を収集してから分解し、材料を住宅用断熱材、家具、寝具などあらゆるものに再利用する。同社は各社から顧客向けリサイクリングプログラムを運用する料金を徴収して利益を得る。2020年の米国テラサイクルの実売上は2500万ドル(約28億5000万円)で、パンデミックに関係する経済減速のため2019年より9%減少した(同社は2021年の決算をまだ発表していない)。同社は現在20を超える諸国で操業しており、顧客とのあいだで迅速に配送を行うため、国全体にいくつかの商品収集ハブを保有している。
テラサイクルは過去に、ファッション商品のアップサイクリングに手を出したことがある。2021年4月に同社はフットウェアブランドのテバ(Teva)と、顧客の使用済みテバフォーエバー(TevaForever)サンダルのリサイクリングについて提携した。その月に同社はカーターズ(Carter’s)とともに、キッドサイクル(Kidcycle)というキッズウェアのリサイクリングプログラムも開始した。
しかし同社は今年、D2Cブランドと契約を結ぶことで、アパレルや繊維への参入をさらに推し進めようとしている。
D2Cブランドがリサイクリングを外注する理由
D2Cの下着ブランドのパレードは1月下旬、テラサイクルとともに「セカンド・ライフ・バイ・パレード(Second Life by Parade)」を開始した。
このプログラムでは、消費者がどのブランドの下着でもリサイクルできる。元払いの郵送パッケージで利用できるほか、消費者は使用済みアイテムをパレードのニューヨーク市店舗で回収してもらうこともできる。引き換えに、消費者は次にパレード商品を購入するとき20%の割引を受けることができる。このインセンティブは、エイチ・アンド・エム(H&M)の商品回収プログラムと類似のものだ。
パレードのブランド&インパクト担当バイスプレジデントを務めるケリー・ステイブ氏は次のように述べている。「当社は、多くの顧客が古い商品のリサイクルに興味を抱いていることを知っていた。しかし、下着は再販売をしたり、古着を買ったりすることはできない」。
そのときパレードはテラサイクルを探し出したと、ステイブ氏は語る。パレードのような若いスタートアップ企業は、このプログラムによって、顧客も参加しやすい、シームレスなリバースロジスティクスが実現したと同氏は説明している。
繊維製品に特化したリサイクルプログラムを作り上げるため、パレードはテラサイクルとともに素材分析を行った。両社にとって、初めての下着の全国的なリサイクル活動であるためだ。
ファッションとアパレルはテラサイクルにとって新しい分野への参入で、プログラムを開始する前により多くの計画が必要となった。ドミニッツ氏は米モダンリテールに対し、アパレル業界では多くの素材が本当の意味でリサイクルされていないことが多いため、テラサイクルの研究開発チームは、下着が衛生的な方法で分解可能かどうかを評価する必要があると語った。
通常、テラサイクルが取引するブランドの多くはプラスチック製品を扱っている。しかしパレードのようなアパレルブランドでは、材料を完全に破砕するために特殊な機械技術が必要だった。
このパートナーシップは、2025年までに気候変動に対応できる企業になることを目指すパレードのサステナビリティ・ロードマップ全体の一部だ。パレードは今年、1000社以上の企業が気候変動対策計画を策定しているサイエンス・ベースト・ターゲット・イニシアチブ(Science Based Targets Initiative)に加盟している。
同社は2020年、初のカーボンニュートラル下着であるユニバーサル(Universal)を発売した。そして昨秋には、従来の寝間着よりも95%少ない水で製造されたというスーパーソフト(SuperSoft)スリープコレクションを公開した。
パレードは、よりアップサイクルしやすい製品を開発するために、ほかの方法も引き続き模索していく。「課題となるのは、同じ価格帯でより優れたリサイクル可能な商品を作ることだ」とステイブ氏は述べている。
3年契約を結んだリリーシルク
1月上旬には、D2Cの寝間着および寝具ブランドのリリーシルクも、テラサイクルと共同でリサイクルプログラムを立ち上げた。
リリーシルクとテラサイクルのリサイクルプログラム(Lilysilk X TerraCycle Recycling Program)では、顧客がシルクとカシミヤの商品を送ってリサイクルしてもらうことができる。対象アイテムは、寝具、寝間着、婦人服、紳士服などだ。現在のところ、リリーシルクの使用済み商品のみを受け付けているが、ほかのブランドにもプログラムを拡大することを検討している。
リリーシルクのマーケティングリーダーを務めるウェンディ・チャン氏は米モダンリテールに、同ブランドはこのようなプログラムを進めるためパートナーが必要なことに気がついたと語った。「サステナビリティはワンマンショーではなく、ひとつのブランドで推し進めるのは困難だ」とチャン氏は語る。このため同社は、資材を効率的に分解してリサイクルするため、専門的な支援を探し求めていた。
「これは当社の収益に直接的な影響を及ぼさないが、当社のブランドの立場を示すための投資だと考えている」と同氏は語る。また、創設者のデビッド・ワン氏はテラサイクルを1年間テストする代わりに、3年間の契約を結ぶことを決定したという。
パレードと同様に、商品のリサイクルはリリーシルクのサステナビリティ目標の一部であると、チャン氏は述べる。またリリーシルクは、製造中に発生する廃棄物も、たとえばTシャツの切り捨て部分をシルクのアクセサリーに利用するなど、生産時の廃棄物を減らすことも試みている。
テラサイクルのプログラムを推進するため、リリーシルクはインフルエンサーのネットワークと連携していると、チャン氏は話す。今後は、オフィスや共同住宅にテラサイクルの回収ブースを設置することも計画している。
テラサイクルのプレゼンスの拡大
テラサイクルのドミニッツ氏は、「商業チェーンのあらゆる部分から、当社のリサイクルソリューションへの関心が増している」と述べている。これは、消費者向け商品の廃棄物と、それが環境に与える影響に対する認識の広まりによるものだと、同氏は説明している。
商品レビューサイトのシングテスティング(Thingtesting)の設立者であるジェニー・ギランダー氏は、使用済み商品のリサイクルと再販売は、ブランドが廃棄物を減らすための「正しい第一歩」だと、以前に米モダンリテールに語った。「各ブランドは、世に送り出す商品に責任を持ち、その商品の最終的なライフサイクル全体を考慮すべきだ」と同氏は述べている。しかし、テラサイクルのソリューションでは、リサイクルを取り囲む障害も明らかになっている。これは、すでに決着済みだが、不透明な行いがされているとされ、最近テラサイクルに対して起こされた訴訟により明らかだ。
テラサイクルが成長するなか、大規模と小規模の両方のブランドに対する同社の売り文句は、一貫したリサイクルプログラムを作り上げることは企業がいくつもの目標を達成するため役立つということだ。「これはつまり、より多くの廃棄物を収集してリサイクルするほど、大きな好影響があり、ステークホルダーにより良いストーリーを提供することにつながる」とドミニッツ氏は述べている。
[原文:How TerraCycle is partnering with DTC brands on recycling programs]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Parade