ブランドにとって2021年最大の課題のひとつは、Covid-19のアウトブレイクや繊維価格の変動、輸送の障害などによって引き起こされたサプライチェーンにまつわる多くの問題だった。サステナビリティに注力しているブランドはどのように解決を図っているのか?
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
ブランドにとって2021年最大の課題のひとつは、Covid-19のアウトブレイクや繊維価格の変動、輸送の障害などによって引き起こされたサプライチェーンにまつわる多くの問題だった。サステナビリティに注力しているブランドには、解決策があったのだろうか。
エコファッションコープ:地元コミュニティとテクノロジーへの投資で生産を正確に管理計画
エコファッションコープ(EcofashionCorp)は社会的目的に特化した企業で、ファッションブランドのイエスアンド(YesAnd)やQVCブランドのシードトゥスタイル(Seed to Style)を所有している。同社では地元の農業コミュニティへの投資を優先しているが、その目的はサプライチェーンの管理を改善し、消費者に自分の衣類の出所を確認できる新たなオプションを提供することで、最終的には信頼できるサプライへのアクセスと技術の採用を増やすことにある。
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ブロックチェーン技術でサプライチェーンをデジタル化
先月、エコファッションコープはブロックチェーン技術の企業イニフィンチェインズ(Inifinchains)と共同で、ブロックチェーンを利用したトレーサビリティプラットフォームをローンチした。現在、ザ・クレディブル(The Credible)と呼ばれるそのシステムを利用して、ホリデーシーズン用ニットウェアの追跡のためにQRコードを活用している。エコファッションコープの創業者マーシー・ザロフ氏は「このブロックチェーン技術を通じて、農場から紡績、編み、織り、裁断、縫製、プリント、染色、刺繍、包装にいたるまで、私たちのサプライチェーンのあらゆるタッチポイントをデジタル化することができる。(これらのステップのなかには)サプライチェーンのなかで7~10回発生するものもある」と語った。CO2排出量の70%以上は生産過程で発生するため、サプライチェーンをデジタル化することで、持続可能性に向けた正当な努力を追跡することができる。
同社のブランドは従業員を大切にし、会社のニーズを優先することで、今年のサプライチェーン問題を乗り切ってきた。商品の生産はインドで行われているため、Covid-19の広大な影響を切り抜けるのはむずかしい状況となっている。今年の5月には、致命的な感染拡大の第二波がインド全土を襲い、昨年はインド政府がウイルスの感染拡大を抑えるために世界でもっとも厳しいロックダウンを実施した。その結果、経済的なダメージが大きく、国民や労働者が苦境に立たされることとなった。
サステナビリティの次のステップはテクノロジー
ボストンコンサルティンググループ(Boston Consulting Group、BCG)のリテールのマネージング・ディレクターでパートナーのスミット・チャンドラ氏は次のように語る。「企業はコントロールについて、またコントロールをどのように定義するかについて話し始めている。ときには、それは実際にサプライチェーン資産を所有していることを意味する場合がある。とくにいくつかの小さな企業は、最終的には多くのサプライチェーンパートナーと仕事をすることになる。とりわけ多くのサードパーティと仕事をしている際には、コントロールのもうひとつの側面は、市場要因がサードパーティに要求することに対して、企業側が自分たちのやりたいことをするようサードパーティに指示することがどの程度可能か、ということになる」。
その点に関して、エコファッションコープは、農業商社であるプロデューサーズマーケット(Producers Market)への長期的な投資を維持することで労働者への支援を行ってきた。農業従事者の向上支援を優先しているプロデューサーズマーケットは、ブロックチェーンシステムを用いて繊維を追跡できるストーリーバード(Storybird)のeコマースプラットフォームを導入している。「我々のパートナーシップは、アパレル業界を根本から大きく変えるものだ。我々は(エコファッションコープの)顧客や最終消費者に、衣料品の調達と影響の詳細について提供している。(そうすることで)サプライチェーンにおいて信頼と信用を築くことができると同時に、顧客は価値観を表明するブランドを選択できるようになる」と、プロデューサーズマーケットの共同設立者キース・アゴーダ氏は述べている。
ザロフ氏は、サステナビリティの次の段階はテクノロジーに根ざしていると指摘する。「私は25年以上にわたってこのサステナブルファッションのムーブメントを開拓してきた。ファッションの新たな章は、トレーサビリティをデジタル化して、それをテクノロジーの力を活用できるブロックチェーンに載せることだ。そして(フォーカスするのは)ブロックチェーン、DTG(Direct to Garment、服飾品生地に直接印刷すること)、ロボティクス、3Dプリンティングになるだろう」。
クヤナ:ニアショアリングでサプライチェーンをコントロール
多くの小売業者がホリデーシーズンについて不安を抱えているなか、サプライチェーンの解決にはさまざまな戦略が関わってくる。エシカルなサプライチェーンを重要な戦略としているブランドは、むずかしい問題に直面している。その多くは、高品質で迅速な生産と輸送を維持する一方で、労働者の環境改善に向けた継続的な取り組みにどう投資していくかという課題だ。時代を超えて愛され続けるアパレルに焦点を当てたファッションブランドのクヤナ(Cuyana)は、製造を分割してニアショアリング(近隣へのアウトソーシング)することに解決策を見出した。それによって製品の注文から出荷まで、わずか3日で対応できるようになった。
クヤナの最大のギフトカテゴリーは、トルコで製造されたサステナブルな小物革製品だ。ブランドの声明には次のように書かれている。「クヤナはパーソナライゼーション(を可能にする上)でさらなる課題に直面している。商品にはそれぞれ違いがある。一般的な色やサイズ、地理的パターンなどについて、通常のようにサプライチェーン内で余裕を持たせることができず、もっとも難しい製品カテゴリーとなっている」。クヤナでは、モノグラムを入れられるほか、たとえばバッグに付けられるレターチャームなどでパーソナライゼーションを行っている。
2025年には71%のファッション企業がニアショアリングを増やす計画
しかし同社では半仕上げの製品を早めに大量発注することで、ほかのブランドよりも早くアメリカに製品を持ち込み、混雑する港を通過させることができた。「ほとんどの小売業者は、マクロ環境で起きたことに本当に苦しんでいる。その主な理由は、サプライチェーンが遅く、ステップが多く、タイムラインが長いことだ」とクヤナの共同設立者であるカーラ・ガラルド氏は言う。
現在、同ブランドの戦略は、注文にすぐに対応できるように、ブランドの流通センターの近辺に存在していて、なおかつ商品のパーソナライゼーションを実施できる国内業者から調達を行うことだ。マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Co.)のレポートによると、ファッション企業の71%が2025年までにニアショアリングを増やすことを計画している。このような部分的なニアショアリングはとくにアクセサリーに有効で、アイテムを米国内で手作業で仕上げることができ、地域の職人が信頼できるブランド基盤を築くのを助け、米国の製造を拡大することが可能となるだろう。
[原文:How sustainable brands are gaining control of their supply chains]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)