こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です ※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります D2Cブランドのドーラッシズ(Doe Lashes […]
こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります
D2Cブランドのドーラッシズ(Doe Lashes)のラッシュクイズ(Lash Quiz)で、「Let’s Go」を押すと、つけまつ毛をどのくらい頻繁に着用するか、ナチュラルなメイクアップと華やかなメイクアップのどちらが好みか、子どもの頃一番好きだったカートゥーン(子供向けアニメ)は何かなど、いつくかの質問を投げかけられる。そして最後に、おすすめのまつ毛を教えてくれる。
このクイズは40秒以内で完了するが、2年前の開設以来、データ収集やパーソナライズ、そして商品化の判断に欠かせないものになっていると、ドーラッシズの創設者であるジェイソン・ウォン氏は語る。もしクイズの回答者が、つけまつ毛をあまり使わないと回答すれば、ドーラッシズはメールをカスタマイズして、チュートリアルやお手入れ方法をについての説明を送る。顧客の大部分がナチュラルなメイクアップを好むことが判明したため、ドーラッシズはそのスタイルに合わせた商品を増やすようになった。
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ゲーム化でデータ収集量が大幅増
顧客にクイズへの参加を勧めているのはドーラッシズだけではない。AppleのiOS 14.5のトラッキング防止アップデートと、サードパーティCookieが近日中に使用終了になることは、自社の顧客獲得と広告戦略の一部として長年サードパーティアプリに強く依存してきた小規模eコマースブランドにとって、悩みの種になっている。大手小売業者には安定した顧客ベースと、データ収集を行うためのリソースがあるが、ドーラッシズのようなeコマースブランドはトラッキング禁止への変更に対応するため、クイズやアンケート、インセンティブへの傾倒を強めており、本質的にデータ収集をゲーム化するようになっている。
ウォン氏は、ドーラッシズがクイズによって3倍のメールを収集し、それによってメールマーケティングの収益が「劇的に」増加したと述べている。オクタンAI(Octane AI)とクラビヨ(Klaviyo)による同社のケーススタディによると、このクイズは2020年8月に開始されて以来、平均4.6%のコンバージョン率を誇っている。
「つけまつ毛が目の上に何かを付けるということで、非常に怖い行為であることを我々は熟知している」とウォン氏はいう。「我々は、美容室に行ったときのような、より優れたオンラインショッピング体験のための環境を作りたいと考えている」。
ドーラッシズにはカメラを使用するショッピングクイズもあり、これは目の形状を測定する。ラッシュクイズと同様に、消費者はメールアドレスを共有すれば、最初の買い物で15%の割引を受けられる。
商品化やマーケティングに活用
クイズを採用している企業はドーラッシズだけではない。ファンクションオブビューティー(Function of Beauty)には4つのパートからなるスキンケアのクイズがあり、買い物客に自分の肌のタイプや肌の目標などについて質問する。サードラブ(ThirdLove)には顧客がぴったりのサイズのブラを見つけるためのバーチャル試着室があり、昨年には1900万人以上の人々が利用した。同社は当初、フィットファインダー(Fit Finder)という名前で2017年にクイズを開始し、昨年にデザインとイメージを変更してフィッティングルーム(Fitting Room)となった。
クイズは、ブランドが顧客のデータを集めるのに役立つだけでなく、さまざまな機能を果たすことができる。たとえば水着ブランドのアンディースイムウェア(Andie swimwear)は2017年の創設の直後にフィットクイズを追加した。同社は、水着が従来から女性にとって適切なサイズを決めるのが難しい商品だと考えていた。アンディーのオペレーション・ディレクターを務めるカレン・チョウ氏は「クイズの果たす目的のひとつは、意思決定のプロセスから不確定性を多少取り除くことだ」と、以前米モダンリテールに語った。
イーマーケター(eMarketer)で小売とeコマースのプリンシパルアナリストを務めるアンドリュー・リプスマン氏は、広告主とD2Cブランドは従来、予算の多くをFacebook、Google広告(Google Ads)、インスタグラムのようなチャネルに割り当て、適切なオーディエンスを対象とし、それから売上への影響を測定している、と語っている。効率的な広告ターゲティングができなければ、最終的にマーケティングの経費が増加することになる。
リプスマン氏は次のように述べている。「D2C分野に限らず、あらゆるブランドにおいて、積極的に展開してより多くのデータを集めることを試みてきた。より多くのデータを集めて保有すれば、それらのギャップを埋めるためにFacebookのような別のチャネルに依存することは少なくなる」。
ゼロパーティーデータの重要性
買い物客も、トラッキングされることへの懸念を強めている。スタティスタ(Statista)によれば、iOS 14.5アップデートをインストールした買い物客のなかで、ATT(AppTrackingTransparency:アプリのトラッキングの透明性)プロンプトのオプトイン率は9月の時点で約21%にとどまっている。2021年4月の時点ではこのオプトイン率は11%だった。
オクタンAIのプレジデントで共同創設者のベン・パー氏は、これらのツールはデータを収集するためのより透明な方法だと信じていると語った。同氏のソフトウェア会社は、各ブランドがクイズや調査のようなツールを使用してより多くの顧客データを収集できるよう支援している。クイズでは、各ブランドが特定の情報と引き換えにパーソナライズされた体験を提供するという意図を明示するからだ。
「消費者は、同意なしにトラッキングされることを望まないが、パーソナライズされたエクスペリエンスは望んでいる」と同氏は述べる。クイズや調査によって消費者は、「その情報を自発的に提供していることを認識する。これは根本的に異なるプロセスだ」。
パー氏は、AppleのiOS 14.5アップデート以来、オクタンAIのショップクイズ(Shop Quiz)やカンバセーショナルポップアップ(Conversational Pop-ups)の需要が増加したと述べるとともに、各ブランドはこれらの追跡の変化に備えていなかったと付け加えた。同社はこれまでに、ベンチャーキャピタル資金で1400万ドル(約16億1000万円)を調達した。
同氏は次のように述べている。「2021年は、ゼロパーティーデータが極めて重要になっていくということを、これらのブランドが理解しはじめた年だった。iOSの変更は、この規模のものとしては非常に新しいものだ。しかし2022年は実装の年になることがすでに見てわかる」。
ドーラッシズはクイズによって、顧客に対する自分たちの想定、たとえば経験レベルや、顧客がどの程度の頻度でつけまつ毛を着用するかなどの多くが誤っていることを学んだ。同ブランドは、自分のウェブサイトにクイズを設置することで、マーケティング活動を強化し続け、収益を生み出すことができた。
ウォン氏は次のように述べている。「クイズは簡単なもので、誰でも受けられる。これが必ずしも優位点になるわけではないが、このクイズをサイトに設置しておけば、設置していないほかのブランドと比べてたしかに優位点となるだろう」。
[原文:How startups like Doe Lashes are gamifying data collection to combat privacy updates]
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Doe Lashes