中小規模のスポーツリーグは、Facebook動画を利用して生中継の観戦者を増やしている。なかには、Facebook上で試合中継を配信する場合もある。彼らがFacebookを利用する理由はそのターゲティング能力にあり、熱狂的なファンや、エンゲージする可能性がとくに高い層にリーチできるからだ。
中小規模のスポーツリーグは、Facebook動画を利用して生中継の観戦者を増やしている。
米メジャーリーグサッカー(MLS)は、今年2度目となる「ハイネケン・ライバルリー・ウィーク(Heineken Rivalry Week)」のテレビ生中継の視聴者を増やすため、Facebookとインスタグラム用に12本の動画広告を制作。ターゲットは、両SNSを利用するサッカーファン、MLSの特定チームのサポーター、その他のスポーツ視聴者層だ。このイベントのうち5試合は、週末にかけて米国とカナダで全国放送される。米国の放送局はESPN、FOXスポーツ(Fox Sports)、ウニマス(UniMas)、カナダではTSNだ。
「我々の事業で、今年Facebookとインスタグラムを活用しなかったものはない」と、MLSのブランドおよび統合マーケティング担当バイスプレジデント、デビッド・ブルース氏は語る。
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ブルース氏によると、現在MLSのマーケティングおよびメディア関連支出の少なくとも半分は、Facebookに投じられている。これにはMLSが主催するイベントのチケットをファンに買ってもらったり、観戦してもったりするためのマーケティングや広告も含まれるが、投資の大部分を占めるのは放送の告知だと、ブルース氏は明かす。
うまくいったMLSの戦術
MLSが自社制作したハイネケン・ライバルリー・ウィークの動画広告は12本。これらはFacebookとインスタグラムに特化しており、縦横比は正方形で、グラフィック表示は大きく、テレビスポット広告によくあるボイスオーバーのナレーションは使われていない。10秒バージョンと15秒バージョンがあり、最初の3秒は放送日時を表示。動画の大部分はスター選手やハイライトを中心に流すが、放送情報は動画広告の最初以外にさらに1~2回表示される。
これらの広告は、多様な市場において特定オーディエンス層に向けて表示される。ターゲティングに使われているのは、MLSが独自にファンから集めたファーストパーティーデータと、FacebookのデータでMLSの特定のチームや選手のフォロワーに関するもの、MLSの動画をシェアしたり「いいね!」したユーザーに関するものだ。
ブルース氏によると、MLSの戦術はうまくいっているという。今年6月の前回のハイネケン・ライバルリー・ウィークでは、ポートランド・ティンバーズ対シアトル・サウンダーズ戦の中継で同様のFacebookキャンペーンを実施。MLSが提供したニールセン(Nielsen)のデータによると、視聴者数は2016年にESPN2で放送されたMLS試合中継の平均を26%上回ったという。MLSは昨シーズンのMLSカップで実施したFacebook放送告知の効果も検証し、広告を見たユーザーはMLSカップをTV観戦する確率が24%高かったことがわかった。
安価な広告枠も後押し
米国内でマイナーなほかのスポーツリーグも、Facebook上で放送を告知し、Facebook上で試合中継を配信する場合もある。彼らがFacebookを利用する理由はそのターゲティング能力にあり、熱狂的なファンや、エンゲージする可能性がとくに高い層にリーチできるからだ。Facebookは従来メディアより広告枠が安いことも、こうした傾向を後押ししている。
たとえば、今春Facebookと契約を結んだワールドサーフリーグ(WSL)は、今シーズンの全試合をFacebook上で配信する。
サーフィンは天候に大きく左右されるため、WSLはほかのスポーツリーグとは違う方法を採用している。WSL自身も、「ヒート」と呼ばれるサーフィンの試合をいつ生中継できるかを確実に把握できないので、ユーザーにライブストリーミングの配信時間を示すのは難しいと、WSLのマーケティング担当VP、クリストファー・カルバートソン氏は語る。「だからこそFacebookが強力なのだ。リアルタイムでファンにリーチし、見てもらうことができる」。
狙ったファンを獲得可能
MLSと同様、WSLもオーディエンスセグメントを構築していて、ウェブサイトの訪問者などのファーストパーティーデータと、Facebookが提供するさまざまな地域のサーフィンファンに関するデータを組み合わせている。
いざライブストリーミングを視聴してもらう段階では、配信はFacebook、WSLウェブサイト、WSLアプリで行われ、ファンに向けたターゲット広告で告知される。クリエイティブの中心はプロサーファーたちによるパフォーマンスのハイライトで、たとえばオーストラリアのファンとブラジルのファンには異なる選手の映像が表示されると、カルバートソン氏は説明する。WSLは通常、放送告知キャンペーン向けに動画広告を15~20本制作している。
WSLがこうしたアスリート中心のパーソナライズされたFacebook動画広告を利用する場合、ライブストリーミングのCTRは2~3倍に増加すると、カルバートソン氏は明かす。
「Facebookの精密なターゲティングツールのおかげで、我々は独自の方法で狙ったファンを獲得できている」と、カルバートソン氏は語った。
Sahil Patel (原文 / 訳:ガリレオ)