食品や飲料の販売がオンラインへ移行するにつれて、ECは食品スタートアップの戦略での存在感を高めてきた。シエテ・ファミリー・フーズ(Siete Family Foods)はその一例だ。1万3000以上の小売店で製品を販売している同社が、現在は新商品を販売する前に、自社のウェブサイト上でのテスト販売を行っている。
より多くの食品や飲料の販売がオンラインへ移行するにつれて、eコマースは食品スタートアップの戦略のより大きな部分を占めるようになっている。
メキシコ系アメリカ人家庭の主食である、トルティーヤやチップスのグレインフリー(穀物不使用)製品を提供しているシエテ・ファミリー・フーズ(Siete Family Foods)がその一例だ。創業6年の同社は、1万3000以上の小売店で製品を販売しているが、現在は小売店で新商品を販売する前に自社のウェブサイト上でのテスト販売を行っている。
サイト上の 「スモールバッチ(Small Batch)」 という新しいセクションを通じて、来年中に10種類の新製品を発売する予定で、各新製品の販売個数はわずか100個から1000個。目標は、自社製品に対してロイヤルカスタマーがもっとも興味を持っている食品の種類に関するデータを収集し、そのデータを使って小売店にその製品を販売するよう売り込むことだ。
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依然としてオフラインが優勢
eマーケター(eMarketer)は5月、食品および飲料カテゴリーのeコマース売上は今年、前年比で58.5%増加し、もっとも急速に成長しているeコマースカテゴリーのひとつになるだろうと予測した。しかし、食品や飲料の購入の大半は、依然としてオフラインで行われている。
さらに、これらの販売のほとんどは、今でも食料品店で行われており、顧客はひとつの店舗に行くだけで、何十種類ものブランドの商品を手に入れることができる。その結果、シエテ・ファミリー・フーズのような食品や飲料のスタートアップが自社のウェブサイトを使って新製品をテストしたり、データを収集したり、ロイヤルカスタマーのメールリストを作ったりすることが増えている。と同時に、彼らは売り上げのほぼすべて、もしくは大部分を食料品店を通じた卸売の提携関係に依存している。
シエテ・ファミリー・フーズの共同ファウンダーでCEOのミゲル・ガルザ氏は、同社の売上の何%がウェブサイトからで、何%が卸売り提携をしている食料品店からのものかについては明らかにしなかった。しかし、同社はターゲット(Target)、クローガー(Kroger)、ホールフーズ(Whole Foods)、セーフウェイ(Safeway)、アルバートソンズ(Albertsons)を含む多数の食料品チェーンを通じて製品を販売している。同社は昨年プライベートエクイティ会社から9000万ドル(約94億円)を調達して以来、小売業での存在感を急速に高めてきた。
スモールバッチの発想の源
ほかのスタートアップと同様に、同社のeコマース売上はパンデミックのあいだ、特に外出禁止令が施行された春に増加したとガルザ氏は述べた。3月中旬から4月中旬にかけて、同社のeコマース売上は前月比で500%増加した。また、同時期にウェブサイトを訪れた新規顧客数は85%増加したという。
同社は需要の増加に対応するために、以前は店頭ディスプレイ制作を担当していた従業員を数名、倉庫におけるオンライン注文処理に一時的に割り当てた。
ガルザ氏によると、スモールバッチのアイデアを思いついたのは、同社初の限定商品であるグレインフリーのシナモン味スナック菓子、ミニ・ブニュエロス(mini buñuelos)が成功したあとだったという。最初12月にこの製品をウェブサイトで販売し、続いて7月にも「7月のクリスマス」キャンペーンを行い、いずれも数時間で完売した。ガルザ氏は「消費者が非常に喜んでくれる製品であることを示すデータが得られ、提携している小売店にそのデータを伝えた」と語った。同社は11月にウェブサイトでミニ・ブニュエロスを再発売し、その後ターゲット、クローガー、ホールフーズを含む多くの小売パートナーによって販売される予定だ。
「(ウェブ上でのテスト販売を行うことで)消費者からのフィードバックとその反映にかかる時間を短縮することができ、将来的にローンチする可能性のある製品や、消費者が欲しいと思っているのに我々が製造していないテイストについても、より確信を持つことができる」と、ガルザ氏は語る。スモールバッチを通して同社がローンチする最初の商品として、3種類のグレインフリークッキーが10月29日から注文できるようになる予定だ。同社のウェブサイトでは、新製品リリース時に通知を受け取るためのメーリングリストに登録することを顧客に勧めている。
「小売への非常に強力なメッセージ」
主に消費財スタートアップを相手に事業展開しているフィンテック企業サークルアップ(CircleUp)のマネージングディレクター、カレン・ハウランド氏によると、食品や飲料のスタートアップは、伝統的に見本市にいるバイヤーに新商品を紹介することで、食料品店への売り込みを行ってきたという。「これだと見本市にいるバイヤーが考える、顧客が何を求めているか、そして顧客がどのような味を美味しいと思っているか、に大きく左右される」と、同氏は述べた。
しかし、企業がまず自社サイトで製品をテストすれば、たとえば、新製品を導入することで、同社のウェブサイトにおける平均購入量やリピート購入率がどの程度向上したかについてのデータを小売業者に示すことができると、ハウランド氏は言う。「これは小売業者に非常に強力なメッセージを与える」と、彼女は付け加えた。
同氏によると、オンラインでの高い顧客獲得コストは、収益性を低下させる可能性があるため、売り上げの大部分を食料品店に依存しながら、ウェブサイトを使って新製品をテストする食料品や飲料のスタートアップが増えているという。同様にガルザ氏は、シエテ・ファミリー・フーズのeコマースと実店舗における小売販売は「お互いに競合するのではなく、補完している」と述べた。
「スモールバッチでは幅広い商品を提供し、小売店ではより主要な商品を中心に扱う形になるかもしれない」と、ガルザ氏は語った。
[原文:How Siete Family Foods uses e-commerce to test new products]
Anna Hensel(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)