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生活者とブランド、その「接点」をどうデザインすべきか?: Context Discovery が指し示す未来

本記事は、GumGum Japanの代表を務める、若栗直和氏による寄稿です。

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2021年にひとつの時代が終わるーーインターネット広告の話だ。これまで、無意味にユーザーを追いかけ回したり、まったくお門違いだったりした広告は、インターネット環境を劣悪なものに貶めていた。しかし、GDPRやCCPAなどの法律の後押しもあり、ようやくAppleやGoogleなどのテックジャイアントが、重い腰を上げはじめたのである。

つまり、基本的なユーザーの権利として、自分のプライバシーは自分で守ることができる時代が来るのだ。そもそも単純に性年代別に分けて、ひたすら押し付けるような広告の配信方法自体が、乱暴すぎた。事実、すでにアメリカのiOSユーザーのうち31%以上が「追跡方広告を制限する(Limit Ad Tracking)」という設定にしているという。

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これから10年後、ブランドのコミュニケーションのメインターゲットは、スマートフォンネイティブであるZ世代やα世代となる。かつての劣悪なインターネット広告環境をある意味「そういうもの」と受け入れていたX世代やミレニアル世代と違い、うら若い彼らはパーソナライズされたターゲティング広告に対して拒否権を持ち、個人情報に関する企業の扱いについて厳しい目を持つ。

自らのプライバシーに対して実権を手に入れたZ世代やα世代は、今後のインターネット広告のあり方を大きく変えていく。そうした流れは、広告以外のブランドとの接点にも及ぶだろう。なにしろ、彼らはSNSを使いこなし、企業色が強い広告より、社会に通じたリアルで親近感が湧くコンテンツを好むからだ。

そうなるとインターネット広告のあるべき姿が変わり、それに期待されるものは、過去と違うものとなる。とはいえ、ユーザーの「気持ちを動かす」ことがブランディングの根幹ならば、それは変わることがないはずだ。そのうえで、Z世代やα世代の「気持ちを動かす」には、どうすればいいのか?

「気持ちを動かす」広告とは

ここにひとつの例がある。

アメリカのジャーナル・アドバタイジング・リサーチ(Journal Advertising Research)の発表だ。それによると、ブランドが自社で「私たちは私たちが行っていることを信じています。(We love what to do)」という表現をすればするほど、そのブランドの製品やブランドそのものに対する、消費者の評価が上がるというのである。

つまり、ブランドが熱量を持って、自社のブランドを語れば語るほど、消費者はこう認識するらしい。「そこまで言い切るということはきっと、製造過程から販売チャネルまで、それぞれに携わる人々が熱意を持って、さまざまな工夫を行っているのだろう」と。だから、素晴らしい商品が提供されていると感じ、消費者の購入意向が上がるという。

こういった「情熱の伝染」はいたるところで起こり、それを消費者は敏感に察知する。実際、ブランドのマーケティング活動は、念入りにコミュニケーションの設計をしたうえで、数多くのタッチポイントを設ける必要があるのだ。しかも、オフラインやマスメディアを使った訴求の場合は、数々の考査をクリアしてようやく消費者へと届けられる。

しかし、これまでのインターネット広告で、そうしたブランドマーケティングはできていただろうか? 本当の意味で、ユーザーの「気持ちを動かす」ブランディングができていたのだろうか? はなはだ疑問である。

なにしろ、インターネット広告は、大概のものは誰でも簡単に実施できる。そこにやっかいな考査などのハードルは、ほとんどない。多少のお金さえ注ぎ込めば、深く考えることなく、それなりの成果を生み出せてしまうのだ。しかも、デジタルマーケティングは、とかく「刈り取り」に陥りやすい。なにかといえば、すぐに「今なら〇〇% OFF!」というコピーを乱用し、有り合わせの画像を寄せ集めて、クリエイティブを作れてしまう。それを果たして、クリエイティブと呼んでいいものかどうか怪しいくらいだ。

また、量を求めるがあまり、場をわきまえないことも多かった。インプレッションを稼ぐためだけに、素性の知れない怪しいサイト、信頼性あるサイトでも意にそぐわないコンテンツにリーチしたりしていたのだ。つまり、ブランドセーフティもあったものではなかったといえる。こうした状況を改善する覚悟がなければ、Z世代やα世代との関係を構築することもできないだろう。

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生活者とブランドの接点

こういった一つひとつの接点をいかに大切に考えるか。それが我々、GumGumが作ろうとしている世界観につながってくる。

それは、「生活者とブランドの接点をデザインする」というものだ。

我々が手掛けるコンテキスト(文脈)広告は、ユーザーが閲覧している記事コンテンツをAIが理解し、個人情報に触れることなく、それに関連する広告を配信するという仕組みをもっている。この手法の第一人者として我々は、2008年からグローバルでサービスを提供してきた。ユーザーがリアルタイムで興味を持っているコンテンツにシグナルを見つけて、そこにこだわりを持った美しいクリエイティブを表現するーー。そのような、消費者体験を最大化することをミッションにGumGumは、10年以上領域を拡大してきたのだ。

コンテキストというのは世の中に五万とあり、それを見極める作業が発生する。そして、その選んだコンテキストに対して、どんな表現をするべきなのかを考えなくてはいけない。それはまさに、人間同士の触れ合いでも日々行われるコミュニケーションデザインを、デジタル上で再現しているといえる。

人間同士の会話において「空気を読む」ということは、ハイコンテキストな世の中で非常に重要なポイントだ。しかし、現行の個人情報を使ったターゲティング手法は、過去の情報をベースにしたコミュニケーションしか行えず、リアルタイム性がない。つまり、〇〇だから△△だろう、という固定概念に囚われたメッセージが生み出され、まさに「空気を読めない」状況を生み出しているのだ。

千差万別なコンテキストのうち、何がブランドに適しているのか? そして、それはブランドが求めているターゲット層のどういった気持ちにつながって、どうブランドのファンになってもらえるか? コンテキスト広告を使うことで、そういった疑問を解決し、これまで見えていなかった「ブランドにとって最適なリアルタイムのユーザーの感情」を読み解くことができる。これがZ世代やα世代の「気持ちを動かす」ポイントだ。

コンテキストの最適解

国内でも現在多くの広告主が、(広告会社との協業のもと)弊社と「コンテキストパートナー」となり、コンテキストの最適解を発見するプロジェクトを行っている。これは一朝一夕でできるものではなく、日々のラーニング、そしてそれをベースにした仮説検証を行い、効果を最大化しているものだ。

数々の自社調査でわかったことなのだが、たとえば、ある課題解決型の商材があったとして、その課題をテーマにしたコンテキスト上へ素直に広告導線を置いたとしても、ブランディングの観点から逆効果になることがある。これが獲得系のキャンペーンであれば、おそらく素直にCTRは上がり、CPAを下げることができるだろう。だが、CVしていない、その他大勢のユーザーに対しては、きっと「空気が読めないブランド」という印象を与えているのだ。つまり、その場限りのわずかな成果をとって、未来に獲得できるもっと大きな可能性を自らつぶしたことになる。

そういった意味でもコンテキスト広告は、デザイン設計が非常に重要となる。何かしらの過去調査や買い場での傾向などをベースに仮説を立てて、そこからどういったコンテキストがターゲットユーザーにとって最適なのか? それを紐解くパートナーとして、コンテキスト広告を活用してほしい。そこから見える「ファインディングス(Findings)」は、競合には持てない有益な(最強の)資産になるはずだ。

Context Discovery

GumGum Japanでは、このデザイン設計〜実行〜分析〜最適化までの仕組みを「Context Discovery(コンテキスト・ディスカバリー)」と呼び、広告主・広告会社と模索を続ける取り組みを行っている。Context Discoveryは、モーメントの専門家がクライアント企業の課題をヒアリングし、調査チーム、運用チームと一体となり、配信後の分析を行う。その分析結果から見えてきたファインディングスをベースに、広告主・広告会社との折衝を行ったうえで全体への最適化をかける。

現在、主流となっているペルソナ軸でのマーケティング設計に対して、このモーメント軸がユニークなのは、場合によってペルソナ軸とは異なるターゲット層の結果が導き出される点だ。そうなるとメディア単位での部分最適化に限定されず、根幹のブランド戦略やターゲット戦略に寄与できる事例もある。Context Discoveryについては、次回以降の連載記事にて実際の取り組み例を紹介したい。

Context Discovery

若栗直和Naokazu Wakaguri
GumGum Japan株式会社 代表

20年以上にわたり、広告とブランディングを専門として活動。2000〜2017年の間、広告会社オグルヴィ(Ogilvy)で東京・香港・上海・シンガポール・台湾などを拠点に活動。アジア・グローバル向けのブランド戦略・クリエイティブ開発・施策立案に従事。2018年から米・GumGum(ガムガム)の日本代表として国内事業の統括を行い、次世代の広告の開発・普及に取り組んでいる。

Sponsored by GumGum Japan

Written by 若栗直和
Illustration from Shutterstock