セール後の「返品地獄」、リテーラー勢の回避策とは?

リテーラー勢は年間最大のセールに向けて強化に勤しむ一方、一大セールに付きものの膨大な返品への対策にも追われている。

2019年、リテーラーはホリデーセールの返品最小化に向けて、さまざまなアプローチを採っているのだ。在庫数の管理徹底、適正な割引率の算定、外部プラットフォームと協力し、返品リスクの高い商品ではなく、ギフトカードの購入を奨励する試みなどは、その顕著な例だ。

返品は処理に少なくないコストが発生するため、リテーラーにとっては純損失となる。返品を受領し、商品として出せる状態にし、小売在庫に戻すには、相応の作業と費用が必要となる。

返品の総額は約60兆円

「ブラックフライデーは小売業界にとって最重要日のひとつであり、すべての注文にシームレスに応えられるよう、リテーラーはかなり前から準備万端を整えてこの一大イベントに臨む」と、リテールテクノロジー会社エディテッド(Edited)のリテールアナリスト、ケイラ・マルシー氏は語る。「返品はeコマース企業に数十億の出費を強いる。これは1年を通じて見られるものだが、ブラックフライデーのような一大セール時にはとりわけ重大な問題となる」。

返品は実際、リテーラーの頭を悩ませる大きな問題のひとつだ。エディテッドによれば、2020年の米国における返品は5500億ドル(約60兆円)相当にも上ることが予想されている。米クーポンサイト、リテールミーノット(RetailMeNot)のデータによると、アパレルは2019年のブラックフライデーにおいて二番人気のカテゴリーであり、つまり、返品によってファッションリテーラーはとりわけ大きな打撃を受けることになる。UKでは、今年のブラックフライデーのアパレル商品の返品額は7億8100万ドル(約850億円)に上ると見込まれており、これは昨年から3億1400万ドル(約342億円)の増となる。

2018年、オンラインショッピングはホリデーセールの36%を占め2017年の1080億ドル(約11.7兆円)から1260億ドル(約13.7兆円)に増加した。実店舗が約10%と最低の返品率を記録したのに対し、eコマースはその倍の20%で、ホリデーショッピング全体では30%となっている。

低リスクの商品に注力

エディテッドの調査結果によると、アパレル商品の返品の主な理由のひとつがサイズだ。ホリデーセール期の購入品の多くはプレゼントであるため、間違ったサイズを買ってしまうケースが多く、また、サイズの合わないものは返品すれば良いと考え、複数のサイズを購入する者も少なくない。2019年のブラックフライデーの宣伝では、贈る相手のサイズを予想しにくい商品に関するものが減少している一方(昨年比で、フットウェアが18%減、ボトムスが14%減)、アクセサリー類(割引されている全ファッションアイテムの23%)関係のものが増加しており、これはアクセサリーには一部の商品を除いてサイズがなく、返品リスクが低いためと、エディテッドは分析している。

アクセサリー類は2018年、ファッションカテゴリーのなかで2番目に割引率が高かった。2019年、アクセサリーはファッション小売業界全体を通じ、ほかのどのカテゴリーよりも在庫が充実している。エディテッドによれば、2018年、ノーズトロム、コールズ、メイシーズ、フレンチェスカ、JCペニーはアクセサリー類を大幅に値下げしており、今年も大半のアクセサリーの在庫を充実させている。

対抗策として、ニーマン・マーカス、サックス・フィフス・アヴェニュー、ユニクロなどいくつかのリテーラーはギフトナウ(GiftNow)の利用をはじめている。このプラットフォームを介せば、ギフトを贈られた者はサイズと色を選ぶことができ、贈る側はギフトカードの味気なさからも、相手の好みのサイズを予想する面倒からも解放される。リテーラーにとっては、サイズ間違いによる返品の削減に大いに役立つと、ギフトナウは謳う。

店舗での返品を奨励

店舗での返品の奨励も、返品による物流的負担を可能な限り軽減する方策のひとつだ。店舗での返品は、返品商品を返送するよりもはるかにコストが低い。店舗での返品の場合、ブランドにかかるコストが約3ドル(約327円)であるのに対し、配送センターに返送された場合は6ドル(約654円)、サードパーティの配送業者が介在する場合は8ドル(約872円)のコストが発生する。UPSは2019年12月一杯、返品商品の配達数が1日100万個以上になることが見込まれると発表した。

「店舗での返品は手間とコストがもっともかからないうえ、追加購入にもつながりうる」と、リテールミーノットのリテール専門家ミシェル・スキュピン氏は指摘する。「リテーラーのなかには、店舗での返品を強く推しているところもある。そしてこれはつまり、実店舗を持たないeコマースリテーラーが不利な立場に置かれていることを意味する」。

そのため、オンライン勢のなかには、従来型リテーラーと手を組み、互いの利益を図っているところもある。たとえばコールズ(Kohl’s)は先頃Amazonと提携し、Amazonの返品を受け付けることにした。後者は返品商品の返送コストの削減が、前者はひとりでも多くの顧客を店舗に呼び込み、追加購入につなげるのが狙いだ。

新しい返品仲介サービス

一方、エヴァーレーン(Everlane)、ロージーズ(Rothy’s)、リヴォルヴ(Revolve)といったD2Cブランド勢――いくつかは実店舗を有する――は、eコマース事業者向けに返品仲介サービスを提供する企業、ハッピー・リターンズ(Happy Returns)と提携している。顧客は全米に700店あるハッピー・リターズのどれかに商品を返品すればよく、ブランド側にとっては、返品商品の返送に関する一連のコストを削減でき、自社店舗からなる巨大ネットワークを構築する必要もなくなる。

DANNY PARIS(原文 / 訳:SI Japan)