小売各社は現在、ホリデーシーズンに間に合うように、顧客に商品を届けることに神経を集中させている。だが1月には、また新たな頭痛の種との戦いが彼らを待ち受けている。返品処理だ。いくつかの研究から、オンラインで購入された商品は、実店舗で購入された商品よりも返品される確率が高いことがわかっている。
小売各社は現在、ホリデーシーズンに間に合うように、顧客に商品を届けることに神経を集中させている。だが1月には、また新たな頭痛の種との戦いが彼らを待ち受けている。返品処理だ。
いくつかの研究から、オンラインで購入された商品は、実店舗で購入された商品よりも返品される確率が高いことがわかっている。なかでも、オンラインアパレルの返品率の高さはトップクラスだという。今年は、実店舗を訪れる代わりにオンラインでホリデーシーズンの買い物を済ませる人が増える見込みだ。この点も考慮に入れて、小売各社は、例年よりも返品を希望する顧客が増加するという起こりうるシナリオに備えている。
そのための準備として、小売企業の多くは返品ポリシーを拡大し、顧客が不要な商品を返品できる期限を延長するだけでなく、返品方法の拡充もはかっている。ルルレモン(Lululemon)やリーバイス(Levi’s)などの小売企業は顧客の便宜をはかり、自社のモバイルアプリで簡単に返品手続きができるようにしている。ハッピー・リターンズ(Happy Returns)やナーバー(Narvar)といった、返品処理を専門に引き受けるスタートアップ各社は、フェデックス(FedEx)やウォルグリーンズ(Walgreens)などの企業と提携し、小売店だけでなく、さまざまな場所で買い物客が返品手続きを行えるようにしている。
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「返品コストは高くなりつつある」
今年の春、数多くの重要な小売店の大半が休業に追い込まれると、一部の顧客は店舗の営業再開を待って返品を行った。これにより、小売各社は返品の山との格闘を余儀なくされ、カスタマーサービスには顧客から返金状況に関する問い合わせの電話が殺到した。なかには、カスタマーサービスの臨時スタッフを雇い入れる小売企業もあった。ウェイフェア(Wayfair)は今年6月、カスタマーサービスのスタッフ500人を追加雇用する計画を発表、ルルレモンもスタッフ500人を店舗からカスタマーサービスセンターへ配置換えしたと、ウォール・ストリート・ジャーナルは当時報じた。
小売各社はいま、今春の再現を回避して、出荷と返品処理にかかる費用がマージンをむしばむことのない体制を敷くことをめざしている。
「小売各社は、コストを削減しなければという巨大なプレッシャーに襲われている」と、ハッピー・リターンズの共同創業者でCEOのデビッド・ソビー氏は語る。「新型コロナウイルスの影響による追加料金や、ホリデーの追加料金、毎年上がるさまざまな料金などにより、返品にかかるコストは高くなりつつある」。
小売企業にとってもっとも費用対効果が高いのは、顧客が商品を自社の店舗に持ち込むという返品方法だ。だが必ずしも、この方法がすべての顧客に都合がいいというわけではない。そこで一部の小売企業は、顧客本人が別の店で返品手続きを行える体制を整えつつある。たとえばAmazonで買った商品の場合、その商品を顧客はコールズ(Kohl’s)で返品できる。このトレンドは数年前から続いているが、その勢いは今年のホリデーシーズンに向けてさらなる加速を見せている。
返品スタートアップたちの戦略
ハッピー・リターンズの戦略は、同社が「リターンバー」と呼ぶ店舗のネットワークを構築することだ。リターンバーとは、どの小売企業から買ったかにかかわらず、その小売企業がハッピー・リターンズを利用しているかぎり、顧客はそこで商品の返送手続きができるスポットだ。ハッピー・リターンズは今年10月、同社のリターンバーネットワークにフェデックスが新たなパートナーとして加わったと発表した。これにより、顧客は全米各地にある2000以上のフェデックス・オフィス(FedEx Office)の店舗で返品手続きができるようになった。リターンバーの数は現在、サイモン・モールズ(Simon Malls)や、ペーパー・ソース(Paper Source)の店舗、ベッド・バス&ビヨンド(Bed Bath & Beyond)の店舗をはじめ、2600にのぼる。一方、ハッピー・リターンズのライバルであるオプトロ(Optoro)も今年、同社のソフトウェアを利用している小売企業の顧客を対象として、ステープルズ(Staples)の各店舗で返品手続きを行えるようにした。
世の中がコロナ禍に突入して以来、ハッピー・リターンズに対する小売企業からの需要が増加していると、ハッピー・リターンズのソビー氏は話す。スティーブ・マデン(Steve Madden)やマック・ウェルドン(Mack Weldon)をはじめとする、150以上の小売企業が今年、同社の顧客リストに加わったという。
同じくハッピー・リターンズのライバルであるナーバーもまた、今年に入ってサイモン・モールズとの提携を開始し、同クライアント(リーバイス、ギャップ[Gap]など)の顧客を対象として、サイモン・モールズの一部店舗のコンシェルジュデスクで返品手続きを行えるようにした。ナーバーは今年、UPSとの新たなパートナーシップのテストも行った。これにより、コール・ハーン(Cole Haan)の顧客はUPSの約5000店舗で、商品を梱包したり、ラベルを印刷したりすることなく、商品を返却できるようになった。チェーン・ストア・エイジ(Chain Store Age)によれば、今回はコール・ハーンの顧客のみを対象とするテストだったが、ナーバーは、ゆくゆくはこの返品サービスをほかの小売企業にも広げて展開したいと考えているようだ。
返品を減らすことが最大の課題
小売各社が今年、実行を余儀なくされた変更点は、ほかにもある。そのひとつは、希望者が商品を、人同士の接触をできるだけ抑えながら、店舗で返品できるようにすることだ。リーバイスの米国事業部でプレジデントを務めるマーク・ローゼン氏は、米DIGIDAYの姉妹サイトであるモダンリテール(Modern Retail)に対し、今年11月、顧客は同社のモバイルアプリで返品の申し込みを行ったあと、レジに商品を持っていくのではなく、店舗に設置された返品ボックスに返却することで、一連の手続きを完了できるようになったと述べた。そしてまた、返品処理をなるべく簡単にすることで、同社のカスタマーサービスチームの負担を軽くすることも、その狙いのひとつになる。
とはいえ、こうした返品の単純化は、この戦いの氷山の一角にすぎない。イーマーケター(eMarketer)のeコマースアナリスト、アンドリュー・リップスマン氏は、返品処理には時間もコストもかかる以上、そもそもの返品数を減らす方法を見つけることが、小売企業にとっての最大の課題だと話す。
「返品の処理や棚の補充には人件費がかかる」と、リップスマン氏はいう。「今年のホリデーシーズンの返品数の急増は、多くの小売企業にとって重荷になるだろう」。
[原文:How retailers are preparing for more returns than ever this holiday season]
ANNA HENSEL(翻訳:ガリレオ、編集:長田真)