屋外ショッピングモールのボストン・シーポート(Boston Seaport)はテナントと協力して、新しいタイプのサービス用に、より多くのスペースを割り当てるようにしている。それはカーブサイドピックアップやアウトドアダイニングといったサービスで、この夏もモールに買い物客を呼び戻そうとしている。
買い物客の再来に向けてショッピングモールは準備を進めている。そんななか、人々が自宅を出る気持ちになる体験の種類は変わってきた。
棚に並んだ服を手にとって何時間も探すよりも、ネットで選んで店舗でのピックアップを選ぶ人々。映画館で土曜日を過ごすのではなく、屋外に飲食スペースがあるレストランに行く、といった具合だ。これらはショッピングモールも新しい魅力をアピールするために、空間の使い方を再検討する必要があることを意味している。
750万平方フィート(約70万平方メートル)の屋外施設であるボストン・シーポート(Boston Seaport)は厳密には自宅待機期間中も閉鎖してはいなかった。施設内にはエッセンシャルビジネスとされる薬局やテイクアウト対応のレストランなどが含まれていたからだ。しかし、マサチューセッツ州での営業再開が許可される企業が増えるにつれ、ボストン・シーポートはテナントと協力して、新しいタイプのサービス用に、より多くのスペースを割り当てるようにしている。カーブサイドピックアップ(ドライブスルー販売)やアウトドアダイニングといったサービスで、この夏もモールに買い物客を呼び戻そうとしているのだ。
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顧客を取り戻すための対策
店舗閉鎖から数カ月が経ち、顧客を取り戻すにはどのような対策を取れば良いか。それに取り組むために、ショッピングモールとそのテナントたちは、これまでにないレベルでのコラボレーションを求められている。屋内でのコロナウイルス罹患のリスクを恐れる人々を考えると、屋外のショッピングモールは有利かもしれない。しかし、すべてのアクティビティが屋外へと移行することで、アウトドアダイニングやオープンエアのエクササイズクラスなどの競争が激化する。そして、夏に入ってから、こういったアクティビティへの熱意がどれほど続くのかもまだわからない。
「自宅待機以外のアクティビティであれば何に対しても、なかでも特に屋外の飲食体験に対して、買い物客からの需要が急騰しているように思われる」とオムニコム・リテール・グループ(Omnicom Retail Group)のコマース部門シニア・バイスプレジデントであるブライアン・ギルデンバーグ氏は言う。
「特に週末において、来客数に大きな増加が見られている。多くの人たちが良い天気を楽しもうとして、ここに来ている」と、WSディベロップメント(WS Development)のバイスプレジデントであるトッド・ノーリー氏は言う。WSディベロップメントはボストン・シーポートを所有している企業だ。マサチューセッツ州は屋外でのレストラン飲食に加えて、リテーラーも6月8日にオープンを許可しており、現時点でボストン・シーポートの店舗の73%はオープンしている。
コロナウイルス以前のボストン・シーポートの戦略は、ほかの新規ショッピング施設と同様に、アクティビティ主催を優先するものだった。そして典型的なショッピングモールに並ぶアパレルリテーラーよりもモールに定期的に人々を呼ぶようなテナントを確保していた。ここ数年のあいだ、春と夏にはファーマーズマーケットを主催している。また、ボストン・シーポートは、エバーレーン(Everlane)やメジューリ(Mejuri)といったD2Cブランドにも人気の場所となっている。
夏が終わるまで探し続ける
夏期の来訪客数の増加に備えるなか、必要な準備に関して、彼らのテナントと市のあいだの仲介者としての役割を務めることがメインのフォーカスとなっているとノーリー氏は言う。ディナーを提供するに当たって、テナントが適切な酒類販売の許可を確保するための手助けをする、といった具合だ。ボストン・シーポートにはアウトドアのビアガーデンがあったが、ソーシャルディスタンシングを可能にするために座席をいくつか除く必要があった。
また、商品ピックアップ専用の駐車スペースも提供しはじめた。キムコ・リアルティ(Kimco Realty)といった、ほかのショッピングモールでもこれは実施されている。ほかにもリテールテナントたちと協力して、「ショップ・ザ・テーブル(shop the table)」企画も制作に取り組んでいる。これは店舗に入りたくない買い物客のために、道路脇でリテーラーが商品を展示できる企画だ。また、アウトドアのフィットネスクラスも追加している。この様子はここ数カ月のあいだ、ライブストリームも可能となっている。
夏が終わるまでずっと、ほかに追加できることがないかボストン・シーポートは探し続けると、ノーリー氏は言う。アートの展示から、その他の屋外イベントといった具合だ。これによって、新しい体験を求めて、人々がボストン・シーポートへ通い続けてくれることが狙いだ。「ここでは公なアウトドアスペースにおけるチャンスは非常に大きい」と彼は言った。
[原文:How one open-air mall is preparing to drive shoppers back over the summer]
Anna Hensel(翻訳:塚本 紺、編集:長田 真)