靴ブランド「ニソロ(Nisolo)」は2021年12月中旬にサステナビリティー・ファクト・ラベル(Sustainability Facts Label)を発表。この食品の栄養成分表示のようなシンプルなフォーマットのラベルをファッション業界にもたらした。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
ナッシュビルに本拠を置く靴ブランド「ニソロ(Nisolo)」は透明性を推進するため、食品の栄養成分表示のようなシンプルなフォーマットのラベルをファッション業界にもたらした。
ニソロは過去10年間、ペルー、メキシコ、ケニア、米国の工場で、すべての労働者に生活賃金(最低限の生活水準の維持に必要な賃金水準)を提供してきた。同社は次のステップとして2021年12月中旬に、サステナビリティー・ファクト・ラベル(Sustainability Facts Label)を発表。従業員や地球をどのように扱っているのかについて、正確なアセスメントを消費者に提供するのが狙いだ。人材と地球全体に関するさまざまな重点分野について、パーセンテージスコアと概評を記したこのラベルを、ニソロは12/17の週の時点ですべての商品に付けている。
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ニソロのCEO、パトリック・ウッドヤード氏によると、このラベルは製品についての情報を消費者に明確に知らせる手段だという。「ファッション産業は世界でもっとも環境を汚染する産業のひとつであること、そして炭素排出量は海運業界と航空業界を足し合わせたものよりも多いということを認識している人はほとんどいない」と同氏は語る。「人の観点でいうと、衣服の製造に従事している労働者のなかで、生活賃金を得ているひとは世界中で5%にも満たない。製品が自宅に届くまでのあいだに何が起こっているのか、ほとんどの消費者はまったくと言っていいほど認識しておらず、何も知らないというのが現状だ」。
業界全体で現在用いられている26のアセスメントから社会や環境への影響を評価したところ、女性のエンパワーメント、ヘルスケアと医療手当、カーボンニュートラル関連の第三者認証といったイシューには、十分なフォーカスが当たっていないことが分かった。労働者の待遇、工場の状態、サプライチェーンの透明性、インパクトの判断のためのデータポイントは、通常6つ以下だ。ニソロが他ブランドと異なるのは、人材と地球の観点で約200に及ぶインパクトのデータポイントから検証するという、データポイントの構成方法だ。
サステナブルでないことを公に発表するガニー(Ganni)のような施策はハードルが高いだろう。だが多くのブランドが、それぞれが重点的に取り組む分野において変化を起こそうと努め、取り組んでいることをシェアしている。一方EUでは、デジタルパスポートなど製品情報のデジタル化によって、欧州内での再利用やリサイクルを強化しようとしている。
幅広さや底深さ、シンプルさが特徴の、ニソロのラベルはオープンソースであり、方法論が広く公開されている。どのブランドも、このサステナビリティラベルを活用して、生産の透明性を速やかに高めることができるのだ。政府や委員会による統一を待っていても時間がかかるため、もっと早くから始めるべきなのは教育のプロセスだ。「我々はこのラベルの開発に、過去3.5~4年を費やした。消費者の意識を高めるための基盤となるものを、業界内に提供することを目指していた」とウッドワード氏は述べる。
ニソロはさらに、消費者がアドボケート(支持者)になるための後押しもしている。彼らがソーシャルメディアやコミュニティーで#SustainabilityFactsLabelをシェアし、好きなブランドにも透明性を高めてサステナビリティー・ファクト・ラベルを採り入れることを促すよう、呼びかけているのだ。
ブランドによってサステナビリティの用語の使い方が異なったり、評価方法の規制がないという状態は、消費者に混乱を招きかねない。ブランドはグリーンウォッシング(環境に配慮しているかのように見せかけること)や、調達について不明確な情報を流している。自分の服や、ブランドの取り組みが与える影響を把握するのに必要な情報を、消費者に提供していない。
ケイト・ラワース氏の「ドーナツ経済学」では、社会的なサステナビリティは環境的な上限(炭素排出や生物多様性など)と同等に重要だと提唱しているが、ファッション産業のほとんどの認証はこれらすべてを網羅していない。だが、透明性への関心は高まってきている。エイブリィ・デニソン(Avery Dennison)が先日発表した調査によると、エシカルな購入意思決定のために、衣服の生産過程についての一層の透明性を求めている消費者は60%にのぼるという。
[原文:Why Nisolo’s sustainability label could set a new standard for the industry]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:田崎亮子/編集:山岸祐加子)