ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)は、昨年9月にTikTokのチャンネルを開設したが、それから1年も経たない今年7月初めにフォロワー数が100万人を突破した。ラグジュアリーブランドが直接的なフォロワーを獲得する方法として注目すべき点とは?
ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)は、昨年9月にTikTokのチャンネルを開設したが、それから1年も経たない今年7月初めにフォロワー数が100万人を突破した。
同じく高級ブランドのグッチ(Gucci)とディオール(Dior)も、ブランド独自のアカウントから安定したコンテンツを配信することで昨年中にフォロワー100万人を達成した。これらのハイラグジュアリーブランドは、1回の投稿で数百万回の再生回数と「いいね!」を獲得することが日常的になっている。ルイ・ヴィトンがTikTokに投稿した過去15回の動画のうち、12回が100万回以上の再生回数を記録しており、K-POPバンドのBTSを起用した7月6日の動画は1500万回以上も視聴されている。
インフルエンサーと協力する低価格帯ブランド
TikTokでの大手ラグジュアリーブランドの成功は、手頃な価格帯のブランドの成功をはるかに上回っている。シーイン(Shein)やファッションノバ(Fashion Nova)など、100万人以上のフォロワーがいるブランドもいくつかあるが、エアロポステール(Aeropostale)、ギャップ(GAP)、アメリカンイーグル(American Eagle)、エイチアンドエム(H&M)のフォロワーは5000人から30万人だ。
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しかしエアロポステールのようにラグジュアリーブランドにくらべて手頃な価格のブランドは、TikTokの大物インフルエンサーとより活発に関係を結ぶことでフォロワー数が補完されているケースも多い。
たとえばギャップはTikTokのフォロワー数がわずか5000人だが、1月にインフルエンサーのバーバラ・クリストファーセン氏が25万人以上いる自分のフォロワーに向けてGAPのロゴ入りブラウンのパーカーを着た動画を投稿、大きな反響を呼んだ。9月にはインフルエンサーのエマ・チェンバレン氏も同じパーカーのブルーのバージョンを1200万人のフォロワーに向けて投稿している。どちらの動画もそれぞれ200万回以上視聴され、ハッシュタグ「#gaphoodie」も1,000万回近く閲覧された。
高級ブランドのTikTok戦略
TikTokのファッション&ビューティーパートナーシップ責任者のチェチェ・ヴー氏によると、ラグジュアリーブランドはTikTokのインフルエンサーと直接関係を持つことはほとんどないという。ルイ・ヴィトンのようにいくつかの好調なラグジュアリーブランドは、インスタグラムなどの一般的なプラットフォームでありがちなブランドを守るイメージは用いず、個性的なコンテンツを制作したり、舞台裏の映像をありのまま公開したりすることでTikTokで成功を収めている。この件についてLVMHからはコメントを得られなかった。
注目すべき点として、ラグジュアリーブランドが直接的なフォロワーを獲得するのは、ブランドの認知度や規模が影響しているというよりは、むしろ投稿の頻度が高いことにあるようだ。たとえばバレンシアガ(Balenciaga)のTikTokのフォロワー数はわずか17万人で、動画1本あたりの視聴回数も数千回程度である。バレンシアガは月に数回しか投稿していないが、一方でルイ・ヴィトンはほぼ毎日、時には1日に1回以上投稿している。
もっとも視聴回数の多いコンテンツの傾向として、写真撮影やキャンペーンの舞台裏、グッチが投稿したビューティチュートリアルのような教育的な動画、そしてコレクションの雰囲気を気取らずに紹介する動画などが挙げられるとヴー氏は言う。たとえばルイ・ヴィトンが7月6日に投稿した、2021年秋のメンズコレクションの服を着用したBTSの動画は、1740万回の再生回数を記録している。
@louisvuitton
##LVMenFW21
##LouisVuitton
##BTS
♬ original sound – Louis Vuitton
「ラグジュアリーブランドは、このプラットフォームでもっともうまくやっているようだ」とヴー氏は指摘する。「最近では、音楽やサウンドオンの環境を活用するファッションハウスが増えていて、私たちのコミュニティから共感を得ている」。主な例として、31万8000人のフォロワーがいるバルマン(Balmain)や8万5000人のフォロワーがいるセリーヌ(Celine)、ディオールなどがある。
Z世代の認知度を高めるために
これらのラグジュアリーブランドにとって、TikTokで強い存在感を示すことには単なるパブリシティ以上のものがある。2月には、ルイ・ヴィトンやサンローラン(Saint Laurent)などのラグジュアリーブランドが参加してTikTokでのバーチャルファッション月間を開催、そのランウェイショウは合計300万回以上視聴され、ライブストリームは80万人以上が同時視聴した。これらのライブストリームではプラットフォーム上ですぐに購入できるコレクションが紹介されている。TikTokは売上高を公表していないが、エンゲージメントが高かったのは、ヴー氏いわく、こうしたブランドがすでにみずから構築していたオーディエンスのおかげだ。
TikTokには1億人以上のアクティブユーザーがおり、そのうち50%以上がZ世代で、これはラグジュアリー市場にとって重要な層だ。TikTokユーザーの42%が18歳から24歳であるのに対し、インスタグラムの同じ層のユーザーは22%しかいない。
「TikTokは、オリジナルの魅力的なコンテンツと一貫した投稿で勝負するゲームである」と語るのは、デジタルメディアエージェンシーのHコード(H Code)でコンテンツ部門責任者を務めるアニー・リール氏だ。
「ルイ・ヴィトンとグッチはその両方を行っている。彼らのコンテンツは人目を引き、よくも悪くもコメントという形で高いエンゲージメントを生み出しており、おまけに並外れてクリエイティブだ。わずか数秒でオーディエンスを魅了する。ブランドの認知度を高めるには、この若い世代のオーディエンスとどのようにつながり、すでに人気のあるものをどう活用すればよいのか、ルイ・ヴィトンはそこをよくわかっている」。
[原文:How Louis Vuitton and other luxury brands cracked 1 million followers on TikTok]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida、編集:山岸祐加子)