この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。 引き取りプログラムや生分解性素材を優先するブランドが増え、アンダーウェアのセクター […]
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
引き取りプログラムや生分解性素材を優先するブランドが増え、アンダーウェアのセクターはよりサステナブルになってきているが、埋立からの完全な方向転換にはいまだ程遠い。
リサイクルが困難なアンダーウェア
米国の環境保護庁は、毎日約1100万ポンド(500万キログラム)の下着が米国の埋立地に捨てられていると推定している。通常、繊維廃棄物のうちリサイクルされるのは約15%にすぎない。下着は個人の衛生という観点からも再利用が限られるため、入念にモニタリングされているテキスタイルのサプライチェーン以外でのリサイクルは困難だと思われる。さらにポリウレタンなどの繊維が混在して製造されているため、新しい下着の原料としてではなく、ほとんどがダウンサイクルとなる。混合繊維は分離するのがむずかしいが、一般的に衣類を新しいアイテムに作り直す際にはそうしなくてはならない。このセクターでは、オーガニック素材や竹素材を取り入れる傾向がかなり増えているものの、発生する廃棄物の量に対抗するにはまださらなる努力が必要である。
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米国ではパレード(Parade)のように古い下着を引き取ってリサイクルしているブランドもいくつかあり、またモディボディ(Modibodi)のように生分解性のあるアイテムを作っているブランドもある。一方、創業2年のアンダーウェアブランドのザ・ビッグ・フェイバリット(The Big Favorite)は、ゴムの使用をやめることで循環性を実現し、その促進に力を入れている。
エイブリィ・デニソン(Avery Dennison)の2022年消費者行動レポートによると、ファッション消費者の60%以上が、ブランドや小売業者は再販やリサイクルプログラムなど、使用後の自社製品に対する利用しやすい選択肢を提供すべきだと考えている。しかし、現在下着ブランドで実施されているこうしたオファーはこのセクター全体で取り組んでいるものではないし、また複雑な問題がないわけでもない。
リサイクル企業と引き取りプログラムを立ち上げたパレード
1月中旬、パレードは、パリ協定の目標に沿った排出量削減への明確な道筋を企業に提供するサイエンス・ベースド・ターゲット・イニシアチブ(Science-Based Targets Initiative、SBTi)に加わった米国初の下着ブランドとなった。同ブランドはまた、テラサイクル(Terracycle)とともに、あらゆるブランドの下着のリサイクルを促進するという、いままでにはない引き取りプログラムを立ち上げている。テラサイクルは米国でもっとも有名なリサイクル会社のひとつだが、最近、高価な引取ボックスをめぐって訴訟に巻き込まれ、それ以降は消費者向けのサービスを修正している。
パレードとテラサイクルのパートナーシップは無料で、下着を埋立地から排除することを目的としている。パレードのインパクト部門のトップであるケリー・スタイブ氏は次のように説明する。「混紡の素材で作られていることが多いこれらの製品を活用して、より有用なものに変える方法をテラサイクルとともに考えなくてはならなかった。現時点では、下着を下着として経済に戻すことはできないが、住宅、断熱材、家具といったものに変えることで、循環型経済の中で利用することができる」。パレードは、バイオ由来のポリウレタン素材を作ることに取り組んでいる。それによって下着がリサイクルされて下着をつくることができるという、完全な循環型モデルとなるだろう。
また、パレードは下着を捨てることの影響について消費者を教育する方法も検討している。素材の革新を優先し、リサイクルプログラムを立ち上げるほかに、サプライチェーンに透明性を持たせる方法を考えている。「私たちはコミュニティをそうした空間に引き込む方法を考え、またそれと同時に、私たちがやっていることを人々が身近に感じ、もっと関与してもらえるような機会も提供している」とスタイブ氏は述べた。
モディボディの生分解性の下着
また、自社で使用している素材がどのように埋立地で分解されるかに注目し、廃棄物を出さないことを目指す企業もある。アンダーウェアブランドのモディボディが2年かけて開発した生分解性ショーツは、天然繊維と生物工学的に合成された繊維を組み合わせて使用している。生理用品としても使用できるよう、それぞれ内側にライナーが付いている。モディボディの創業者でCEOのクリスティ・チョン氏は「これは廃棄物を減らし、製品寿命を迎えても地球に影響を与えない製品だ」と話す。デフィニット・アーティクルズ(Definite Articles)のソックスと同様に、このアイテムは活性土壌や、あるいは温度と微生物が材料の分解を助ける埋立地で生分解される。
モディボディのアンダーウェアは、OEKO-TEX®(エコテックス)によるスタンダード100の認証を受けており、さらに有害な化学物質を含まないことが証明されている。成分の97%は、製品として寿命がきた際には無害な物質に分解されることが科学的に証明されている。
また、ほとんどの素材は活性土壌に埋めると6カ月以内に分解される。このショーツは耐久性にも優れており、100回洗濯しても性能を発揮することがテストされている。そしてモディボディによれば、ほかの製品も同じ品質を提供している。「私たちは責任ある革新を信じており、すべての人を支えて守るための持続可能なソリューションに投資し続けるつもりだ」とチョン氏は述べた。しかし生分解性ブリーフの一部の成分は、分解されるまでにまだ5〜6年はかかるという。
サプライチェーンを再構築する企業
ザ・ビッグ・フェイバリットのような企業は、サプライチェーンをみずから構築し、新しいアンダーウェアへと直接再利用される下着を作っている。ピマコットンで作られたタンクトップやTシャツなど、一般的に使用される幅広いアイテムとともに、同ブランドのアンダーウェアは新しいアイテムに再利用される。そのプロセスはシンプルだ。顧客が衣服についているQRコードを読み取ると、そのアイテムをブランドに返却するためのラベルが作成される。その後、アイテムはクリーニングされ、分類された後、繊維のリサイクルパートナーに送られ、そこからペルーにあるブランドの工場に繊維が戻される。この循環性の方法は繊維がダウンサイクルされず同じシステムに戻されるため、繊維の寿命が長くなることから、間違いなくもっとも環境にやさしい。
[原文:Beauty & Wellness Briefing: Uncovering P&G’s acquisition strategy]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)