パンデミックが始まって1年が経過した今、ロレアル(L’Oréal)の名を冠したブランド、ロレアルパリ(L’Oréal Paris)は、重要な分野として顧客とのつながり、デジタル・イノベーション、進歩的なマーケティング戦略に注力している。
新興の美容ブランドが市場シェアや実店舗における販売スペースを奪うためにデジタル上の話題作りを活用し続けるなか、伝統的なブランドたちは攻勢を続ける方法を模索している。
パンデミックが始まって1年が経過した今、ロレアル(L’Oréal)の名を冠したブランド、ロレアルパリ(L’Oréal Paris)は、重要な分野として顧客とのつながり、デジタル・イノベーション、進歩的なマーケティング戦略に注力している。
「大きな優先事項のひとつは、我々のブランド・エクイティ(ブランドの価値)を通じて(顧客と)より深くつながることだった」と、ロレアルパリUSA社長のアリ・ゴールドスタイン氏は語った。「私が思うに、新型コロナウイルスが原因で非常に不安定になった環境で、人々がつながりを切望し、本物らしさを切望している。それを我々全員が目撃している。人々はさらに、目的と意味を切望している。もちろん、顧客のお気に入りビューティ製品を提供する必要があるが、それ以上のことが存在している」。
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ユーロモニター(Euromonitor)によると、ロレアルパリはアメリカでも世界でもナンバーワンのビューティーブランドであり、そのことは同ブランドがただ伝統にすがるだけではいけないことを意味する。また、ヘア、メーキャップ、スキンケアといった複数のビューティカテゴリーにも対応し、さらに複雑さを抱えている。しかし、ゴールドスタイン氏によると、パンデミックの最中は、「実質的な外出制限のため、同ブランドも少し隔離されていた」という。ロレアルの消費者製品部門は2020年に4.7%減少したが、2月に発表された決算報告書によると、同部門は「下半期にはガルニエ(Garnier)とロレアルパリによって均衡への回帰が見られた」という。
カラー部門とスキンケア事業
ゴールドスタイン氏はさらに、カラー部門の減少とスキンケア業界全体での成長横ばいを指摘した。「私たちは、市場が経験したのと同じような傾向を経験した」と、彼女は述べた。
ヘアケアはこれまでも、そして今後も明らかに成長を見せる分野である。「ヘアカラー事業は伸びた。当社はヘアカラーの大衆市場でナンバーワンのブランドだ」と彼女は言った。「女性はサロンに行けなかったため、彼らは私たちの(プロダクト)を探し求め、ヘアカラーを使った。人によってはヘアカラーを使うのが初めてだった人もいる。そこで私たちは彼女らの助けになる必要があった」。パンデミックの最中にローンチした同ブランドのオンライン・カラー・コンシェルジュは、スタイリストが対面で行うスタイリングのお勧めをデジタルで再現している。
「製品を選択するための診断ツールが用意されていて、本当に助けが必要な場合には、テキストメッセージを送って、実際のコンサルタントとバーチャルで相談ができる。これは私たちが素早く方向転換した分野のひとつだ」とゴールドスタイン氏は述べた。彼女は、同ブランドのマスカラ事業とスキンケアが細かい分野としてそれぞれ成功したと付け加えた。スキンケア部門は2020年10月に発売した、レチノール入りの「レビタリフト・ダーム・インテンシブズ 夜用美容液(Revitalift Derm Intensives Night Serum)」がその原動力となった。
「スキンケア事業は好調となった。女性が家にいるあいだは、化粧の量が減ったのかもしれないが、そこで肌の手入れをして、ウェルネスの流れを利用する機会があった」と彼女は言った。
eコマースや実店舗の優先順位は変わってきているが、ゴールドスタイン氏はこう言っている、「我々は(物理的な)店舗の優先順位を下げていない。世界が以前の状態に戻ることはないだろうが、(大衆によるワクチンの摂取が完了したあとは)店内のトラフィックは増えるだろう」。
キャッチフレーズの進化
アメリカにおける人種的、社会的不公正をめぐってよりアクションが求められるようになり、ビューティブランドも目的意識と(社会的)使命を中心とした取り組みを行う必要性が、昨年高まった。先月、ロレアルパリは、「ビコーズ・ウィアー・ワース・イット(Because we’re worth it:私たちにはその価値があるから)」というキャッチフレーズの50周年を祝った。このキャッチフレーズは、1971年時の「ビコーズ・アイム・ワース・イット(Because I’m worth it:私にはその価値があるから)」というフレーズから、2010年に「ウィアー・ワース・イット(We’re worth it:私たちにはその価値がある)」というフレーズへと変わることで、より多くの女性に呼びかけるというキャッチフレーズの進化を成功させた。この50周年と合わせて、16年の歴史を持つロレアルパリの「ウーマンオブ・ワース(Women of Worth:価値ある女性たち)」プログラムも進化させた。今年、同ブランドは、慈善活動で表彰された10人の女性それぞれに最大4万5000ドル(約490万円)の個人寄付を提供している。
「私たちは女性に提供している支援を実際には2倍にしたが、それはお金だけが重要なのではない」と、ゴールドスタイン氏は述べた。「ネットワーク、サポートも重要だ。私たちはロレアルのネットワークを活用し、資金調達の専門家やデジタルソーシャルコミュニティの構築の専門家など、私たちが持つリソースへのアクセスを女性に提供している。(私たちは)小さな組織を運営する女性たちの多くが持てていない、基本的な(知識経験やリソース)を提供している。私たちは、消費者との関わりや小売業者とのパートナーシップを通じて、つながりを持つこと、ブランドに目的意識をもたらすことの重要性を認識している」。
[原文:How L’Oréal Paris is maintaining relevance in a changing beauty landscape]
PRIYA RAO(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)