商業ブランドは商品の売り方を知っている。パブリッシャーは大勢の熱心なオーディエンスの集団の作り方を心得ている。そして、貴重なファーストパーティデータにアクセスできるその両者を抱えるメディア企業はいま、広告主の期待に応えられるとして、優位性を高めている。リーフ・グループ(Leaf Group)もそんな1社だ。
商業ブランドは商品の売り方を心得ている。パブリッシャーは大勢の熱心なオーディエンスからなる集団の作り方を心得ている。そして、貴重なファーストパーティデータにアクセスできるその両者を抱えるメディア企業はいま、広告主の期待に十二分に応えられるとして、優位性をますます高めている。
リーフ・グループ(Leaf Group)もそんな1社であり、ハンカー(Hunker)やウェル・プラス・グッド(Well+Good)といった従来型のメディアと、ジ・アザー・アート・フェア(The Other Art Fair)やソサイエティ6(Society6)といったマーケットプレイス/コマースにフォーカスしたサイトを有している。同社はその両方から得られるファーストパーティデータと運営力を活用し、ブランドコンテンツディールにおける広告販売戦略を立てている。
「華々しい、大いに盛り上がるイベントを組み入れたターンキー型のメディア経験をますます創造していきたい。コマースエンジンだけと組んでも、[ブランドは]そこそこのインテグレーション(統合)は得られるかもしれないが、確固たるメディアバリューを手に入れ、ブランドリフトとリーチを達成できるのか? 答えはおそらくノーだ」と、リーフ・グループのブランドパートナーシップ部門SVP、ジョディ・ローンズ氏は断言する。
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ボンベイ・サファイアの事例
そして、リーフ・グループが先頃、有名ジンブランド、ボンベイ・サファイア(Bombay Sapphire)と2019年に締結した複数年にわたるパートナーシップにおいて実践したのが、まさにこのモデルだ。
リーフ・グループは最近、このパートナー契約を更新し、今年3月前半、新発売の缶飲料ボンベイ&トニックを販促する6桁規模の事業を始動させた。
リーフ・グループは複数の自社ブランドをこのイベントに活用した。たとえば、ジ・アザー・アート・フェアにはVRを使ったバーチャルアートフェアを開催させ、ソサイエティ6には所属アーティストに新商品の原材料に絡めたオリジナル作品を作らせ、ハンカーにはイベント内およびサイトで使用する新商品のデジタルアセットを創らせた。
5日間にわたる同オンラインフェアには約3万4000人が集い、参加者にはさまざまな特典が用意された。同マーケットプレイスのネットワークに属する3人のアーティストのブースの訪問や、ボンベイ・サファイアの商品を使ったドリンク作りのテクニックを教える動画の視聴、そしてボンベイ&トニックのバーチャル缶との触れ合い。さらには50人限定で、参加アーティストがバーチャル似顔絵を描くサービスも提供し、それらの作品をイベント内のギャラリーに展示した。
「広告主の狙いは理解している」
この複合型アプローチを形式化するべく、リーフ・グループはローンズ氏をトップに据えたチームを事業の中心に置き、同社の各ブランドが持つ強みを十二分に活かせるようにした。
「我々にはそうしたマーケットプレイスブランドと、メディア企業のアドバタイザーインフラストラクチャーの両方がある。たとえ広告主の目的がマーケットプレイスパートナーシップだけだとしても、我々には大規模なブランドコンテンツチームと制作に長けた人材、そしてアカウントマネージャーがおり、そうしたサービスも提供できる。広告主が目指すところは、よく理解している」とローンズ氏は言う。
もっとも、マーケットプレイスブランドにとって、ブランドパートナーシップの収益はあくまで「おまけであり、ブランド拡大の好機」と捉えていると、ローンズ氏は言い添える。ソサイエティ6は大半の収益を直販で得ており、ジ・アザー・アート・フェアは収益の大部分をアーティストから得ている。たとえば、今回のバーチャルアートフェアの場合、参加した3人に同マーケットプレイスのプラットフォームにおいて販売の場を与える代わりに、相応の対価を要求した。
ファーストパーティデータの聖杯
ファーストパーティデータ戦略に関して言えば、リーフ・グループはこのようにマーケットプレイスブランドとメディアブランドを融合することで、自身のショップを構え、コマースソリューションを構築する多くのパブリッシャーが手に入れたいと願っている優位性を確保していると、メディアコンサルティング企業エビクイティ(Ebiquity)北米のテクノロジー部門トップ、トラヴィス・ラスク氏は指摘する。
「eコマースプラットフォームとリテーラーはファーストパーティデータの極めて重要な提供源にほかならない」と、氏は語る。
というのも、わずか1回の商取引で、eコマースプラットフォームは「ファーストパーティデータのいわば滋養分」をすべて手に入れられるからだという。名前、eメールアドレス、携帯電話の番号、住所――これらをラスク氏は「[誰もが渇望する]ファーストパーティデータの聖杯」と称する。
買物客と読者、それぞれの関心
さらに、リーフ・グループはリテーラー兼コンテンツプロバイダーとして、ユーザー個々の買物客としての関心と読者としての関心が交差する点という、マーケターが欲しがる情報も手にできる。
多様なブランドと多様な興味の多種多様な交わりを把握することは、リーフ・グループのファーストパーティデータ戦略に幅と奥行きをもたらすための重要な鍵だと、同グループCEOショーン・モリアーティ氏は言う。
「我々のオーディエンスがどんな商品に、どんな話題に、どんなコンテンツや経験に関心を抱いているのか。それを知ることで、自社[ファーストパーティ]データを十二分に活用し、パートナー企業が適切なトレンドと適切なオーディエンスを適切な時に同定できるよう、確実に協力することができる」。
次のトレンドをいち早く察知
ソサイエティ6やジ・アザー・アート・フェアおよびそのネットワークであるサーチ・アート(Saatchi Art)に属するアーティスト自体もまた、大局的にはブランドディールにおけるセールスポイントなのだが、そのセールスポイントをまだ十分には活用できていないと、ローンズ氏は認める。
とはいえ、リーフ・グループはソサイエティ6とサーチ・アートに計50万人以上のアーティストおよびクリエイターを擁しており、インテリア装飾およびデザインに関する次のトレンドをいち早く察知できるのは確かだと、モリアーティ氏は断言する。
「ソサイエティ6におけるオーダーメード事業を通じて、我々は生まれつつある最新トレンドを自社プラットフォーム上で直接目にできるわけであり、それはすなわち、顧客と広告主が求めるレリバンス(関連性)およびエンゲージメントの向上において、我々が非常に高い優位性を有していることを意味する」。
[原文:How Leaf Group is tapping into its marketplace brands for ad deals]
KAYLEIGH BARBER(翻訳:SI Japan、編集:長田真)
ILLUSTRATION BY IVY LIU