手頃な価格の品揃えを提供する米百貨店のコールズ(Kohl’s)は、デジタルデバイスによって進化する顧客のニーズに対応するため、デジタル需要に合わせた改革を断行している。
デジタル企業へ成長を遂げるために、コールズ社内で計画を主導するのは、CTO(最高技術責任者)のラトナカー・ラブー氏だ。同氏は重点分野として、クロスチャネル統合のほか、オンラインや店頭の顧客に合わせてパーソナライズされた体験、および実店舗での体験の改善を挙げている。
顧客を重視したデジタル戦略の強化によって、2017年末までに売上高210億ドル(約2兆3000億円)を達成することが、2015年10月に設定されたコールズの目標だ。2016年2月25日に同社が発表した2015会計年度第4四半期(1月30日締め)決算では、売上高が前年同期比で1%増加した。
手頃な価格の品揃えを提供する米百貨店のコールズ(Kohl’s)は、デジタルデバイスによって進化する顧客のニーズに対応するため、デジタル需要に合わせた改革を断行している。
デジタル企業へ成長を遂げるために、コールズ社内で計画を主導するのは、CTO(最高技術責任者)のラトナカー・ラブー氏だ。同氏は重点分野として、クロスチャネル統合のほか、オンラインや店頭の顧客に合わせてパーソナライズされた体験、および実店舗での体験の改善を挙げている。
顧客を重視したデジタル戦略の強化によって、2017年末までに売上高210億ドル(約2兆3000億円)を達成することが、2015年10月に設定されたコールズの目標だ。2016年2月25日に同社が発表した2015会計年度第4四半期(1月30日締め)決算では、売上高が前年同期比で1%増加している。
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ラブー氏は、コールズの発展を促す2大原動力として、2013年にシリコンバレーに開設したデジタルセンターと、ウィスコンシン州のコールズ本社で2015年に開設したイノベーションセンターを挙げている。3年かけてデジタルチームを構築してきたラブー氏は、2016年と2017年がコールズにとって転機になるという。
クロスプラットフォーム
コールズは2015年はじめ、ロイヤルティ報奨プログラム「イエストゥユー・リワード(Yes2You Rewards)」を開始した。会員数が2015年11月時点で3300万人に達したというこのプログラムでは、顧客が購入するたびに獲得する報奨ポイントを、ほかの特典やクーポンとともにまとめて記録する。
ラブー氏によるとコールズでは、このプログラムと、チャージ(入金)可能な同社のカードを「Apple Pay」に組み込むことで、顧客がクーポンを切り取ったり、ポイントを集めたりする際、クーポン券や会員カードが分散していることで生じる問題をなくそうとしているのだ。顧客が「イエストゥユー」アカウントを使って、モバイルウォレットにある店舗ポイントやクーポン、特典を紐付けて設定すると、モバイルWebやアプリ、デスクトップ、店舗でそれらが自動で適用されるようになる。
ラブー氏は「ロイヤルティプログラムは、すべてのチャネルで自動的に有効になる。摩擦のない体験にすることに力を注いだ成果だ」と、評価した。第4四半期決算の発表時にも言及されていたが、コールズのモバイルアプリを使っているのは1100万人。これは「イエストゥユー」会員の3分の1に相当する規模だ。
スマートフォンの時代において、ロイヤルティプログラムはよりいっそう重要性を増している。顧客たちが何をするにもスマートフォンを利用するなかで、小売業者らは、電子取引システムを超えて自社のモバイルアプリへのエンゲージメントを促進する新たな方法を模索しているのだ。こうした傾向は、2016年の小売動向に関するFBICグローバル(FBIC Global)の報告書でも指摘されている。
FBICのエグゼクティブディレクター、デボラ・ワインツウィッグ氏は次のように記している。「今後は、顧客に合わせてパーソナライズした体験を採用・促進する小売業者が増えるだろう。ブランドや小売業者は、ロイヤルティプログラムや会員プログラムの改善に投資することでこれを実現できる」。
パーソナライゼーション
ラブー氏によると、新たなロイヤルティプログラムによって、コールズのショッピング体験は、実利的なレベルで顧客ごとにパーソナライズされるという。実利的なレベルとは価格のことだ。顧客がモバイルやデスクトップで製品を探して表示したり、店頭でモバイルアプリの機能を使ってアイテムをスキャンしたりすると、モバイルウォレットに特典やクーポン、貯まっていればポイントが自動的に適用されて、顧客ごとに異なる最終価格が表示される。
ラブー氏は「人々は何をどこで買うかを考える際、ブランドと個人的につながりたいと思う。パーソナライゼーションは人々が期待している機能だ。ただし、本当にうまくやらなければ、ただのノイズになってしまう」と話す。
ほかのパーソナライズ機能としては、毎日のニュースレターや製品ページに掲載される「あなたへのおすすめ」アイテムの改良や、顧客が頻繁に訪れる店舗に在庫があるアイテムのみを反映させた製品フィードを表示するモバイルアプリツールがある。
アプリ解析を行う企業ロカリティクス(Localytics)のCMOであるジョッシュ・トッド氏は、「小売業者はここで次の段階に進める。目的は、ただ販売するだけでなく、より深い関係を築くことだ。提供するコンテンツ、製品、サービスが、その人の実際の生活でどう連携するかを見つけることだ」と、コメントしている。
エクスペリエンス
コールズは2016年2月、不採算店舗18店を2016年中に閉鎖する一方で、顧客体験をさらに手際よく調整できる、より小規模な業態の新店舗7店をオープンする計画だと発表した。
ラブー氏によると、コールズはこれらの新店舗と一部の既存店舗で、タブレットを設置したデジタル通路を実験導入するという。買い物客は、たとえばベビー用品などの売り場を見てまわる際、実際に陳列されている商品に加えて、ネットで買える商品も確認できる。さらに、品切れ情報やネット限定アイテムの情報も表示される。
「デジタル体験のなかには、店頭で効果を発揮するものもある」と、ラブー氏。初回のテストが成功したら、この通路用タブレットをコールズの全1100店舗に導入する予定だ。
コールズはまた、物理的な店舗ネットワークを利用して一連の配送業務を改善する計画だ。ネット販売に加えて、店舗での受け取りや店舗からの配送を開始したほか、一部の市場では即日配達を試験導入する。
「我々はこれを、受注の処理という観点からだけでなく、店舗ネットワークを最適化するうえで大きな機会と見ている。さらに店舗では、それぞれの顧客体験が改善されることになる」とラブー氏は語った。
Hilary Milnes(原文 / 訳:ガリレオ)
Image via Nicholas Eckhart