従来のシャンプー製品からの脱却を訴える、「アンチシャンプー」ブランドであるヘアストーリー(Hairstory)。D2Cヘアケア製品の売上がパンデミックによって急増するなか、同社もその恩恵を受けている。
従来のシャンプー製品からの脱却を訴える、「アンチシャンプー」ブランドであるヘアストーリー(Hairstory)。D2Cヘアケア製品の売上がパンデミックによって急増するなか、同社もその恩恵を受けている。
設立後5年になるヘアストーリーは2019年には950万ドル(約10億円)の収益を上げ、2020年はさらに85%の収益成長を遂げた。創業者のイーライ・ハリウェル氏によると、D2C販売とeコマースにフォーカスを据えて美容師経由で販売する体制が、(小売業者を通じた)卸売販売の回避と相まって、成長に貢献しているという。同社はまた、パンデミック中にヘアケア製品の需要が業界全体で高まったことの恩恵を受けている。NPDグループ(NPD Group)によると、米国内でサロンの店舗閉鎖、または営業時間の大幅短縮が行われるなか、2020年ホリデーシーズンにおける高級志向のヘアケア市場の売上高は、前年比で51%増加した。
「2020年はD2C販売と美容師向けの両方で好調が続き、我々にとって素晴らしい年だった」とハリウェル氏は言う。同氏はブランド創立前にはジュリーク(Jurlique)のCEOを務め、その前にはバンブル・アンド・バンブル(Bumble & Bumble)のゼネラルマネージャーを務めている。「自宅でソーシャルメディアに親しんでいる多くの人々がいたのと、同時に広告主の多くがデジタル広告から離れていたので、市場は我々にとってより良いものになった」。
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想像以上に急拡大したD2Cチャネル
メイクアップのようなカテゴリーとは異なり、ヘアケア市場はパンデミックのあいだにも強靭さを見せた。2020年第3四半期にはヘアケア売上は11%増加しており、それに続く形で今年もヘアケア市場は投資家が注目する重要な成長カテゴリーである。
ヘアストーリーの販売モデルはD2Cウェブサイト、Amazon、美容師から構成されている。現在、同社の事業の70%はオンラインD2Cによるもので、30%は美容師によるものである。後者には美容師たちが抱えるクライアントによるAmazon上での購入も含まれている。D2Cチャネルは最近特に成功しており、2020年には93%の成長を遂げ、美容師を通じた販売は62%増加した。同社の事業でD2Cの比重がここまで大きくなることは当初の計画にはなかった。
ハリウェル氏は、5年前にこのブランドを立ち上げたとき「美容師側のチャンネルが事業において主要な駆動力となり、それが最初に成功を見せ、D2C要素はそれに有難いボーナス的に加えられるだろう」と考えていた。しかし、「結果的にそれは逆になった」と彼は語った。
美容師経由にもデジタルアプローチ
同氏によると、美容師経由の販売にもデジタルファーストのアプローチを採用しており、そのためサロンが(パンデミックによって)閉鎖されてもビジネスは成長しているという。これは彼が以前働いていたブランドとは対照的だと言った。ハリウェル氏によるとバンブル・アンド・バンブルは「すべてがサロンと美容師たちの働きのうえに成り立っていた」という。ヘアストーリーはサブスクリプションモデルで運営されており、美容師たちのクライアントによるD2Cリピーター購入に対して美容師に手数料を提供すると同時に、Amazonでの購入にも手数料を提供している。
「美容師の顧客がAmazonで購入するたびに、担当の美容師にクレジットを与える方法を見つけ出した」とハリウェル氏。「顧客が誰なのかが分かる状態でAmazonで販売されれば、我々がすでに知っている人物であることがわかる」。
「消費者ひとりに3回、我々の商品を購入させることができると、この人物はその後も顧客として留まってくれる」と、同氏は述べた。
美容師チャンネルがさらに重要に
しかし、同社が従来のサロンモデルに固執している理由のひとつには、小売販売を避けていることがある。「我々はすべて(の小売業者)を断った。セフォラ(Sephora)もウルタ(Ulta)もニーマン(Neiman’s)も断った」とハリウェル氏。同社は現状のモデルを継続しており、ハリウェル氏は美容師チャンネルが2021年に成長の源泉として加速することを期待している。
同氏は、「1800人弱の美容師」にヘアストーリー販売プログラムに登録してもらうところまで到達して「1年を終えた」と語る。「来年はそれを倍にできると思う。我々は美容師側のビジネスを加速していく」と、彼は言った。
同社によると、手数料ベースの美容師プログラムを通じて、美容師たちに約100万ドル(約1億円)が支払われたという。ハリウェル氏は、特にパンデミック後には、美容師チャンネルの成長がさらに重要になると予想している。「もし美容師の基盤を2倍にすることができれば、次の年も同じような成長を遂げることができるだろう」と彼は述べた。
[原文:How ‘shampoo-free’ hair brand Hairstory achieved 85% revenue growth during the pandemic]
LIZ FLORA(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)