レガシーブランドが若い層に訴求するため外観を一新するケースが増えている。1851年創業のベーシック&アンダーウェアの フルーツオブザルーム (Fruit of the Loom)は大手小売業者を中心に販売されてきたが、現在デジタルでの存在感を高め、ブランドとの協業や若いセレブリティとの提携で現代化を進めている。
こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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レガシーブランドが、若い層の買い物客にアピールするために、外観を一新するケースが増えている。
1851年に創業したベーシック&アンダーウェアブランドのフルーツオブザルーム(Fruit of the Loom)は、ウォルマート(Walmart)やターゲット(Target)など多くの大手小売業者で販売されてきた。この数十年は、フルーツのマスコットが登場するコマーシャルで知られてきた。現在同社は、デジタルでの存在感を高め、ブランドとのコラボレーションを開始し、若いセレブリティと協力することで、現代化を進めている。
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今回の刷新は、同ブランドの売上増加を受けたものだ。過去4年間にわたってフルーツオブザルームは実に4000万枚のTシャツ、1900万枚のスウェットシャツ、3800万本のスウェットパンツを販売した。しかし同社は、自社商品が大手小売店舗やオンラインチャネルで確実に売上上位を占め続けるようにしたいと考えている。そこで、一連のマーケティング戦術の実践に加えて、従来からの商品をより環境に配慮した商品となるようリニューアルすることで、これを実現しようとしている。
変化する市場への対応
フルーツオブザルームは6月、フルーティズム(Fruitisms)という名前の最新のキャンペーンを開始し、さまざまなライフスタイルに合わせた幅広い商品ラインアップを紹介した。このマルチチャネルのキャンペーンは、テレビ、有料ソーシャル、および最近開設されたフルーツオブザルームのTikTokチャネルで広められた。最新のキャンペーンは、170年の歴史を持つ同社が取り組んだ1年間にわたる改修戦略の一部で、ミレニアル世代やZ世代の若い買い物客に自社を紹介しようと試みているものだ。この活動とともに、新しいインフルエンサープログラムや、多くのブランドコラボレーションも昨年後半に開始した。11月には、新しいロゴも発表し、従来使用してきたフルーツを組み合わせたイメージを、より鮮明に洗練したものになった。
フルーティズムのキャンペーンで行われている広告のいくつかは、同社のマーチャンダイズのさまざまな側面、たとえば通気性のあるサステナブルな生地や、日常的なファッションのコーディネートに組み入れられるような快適なラウンジウェアなどにフォーカスしている。これは同ブランドの最大の柱であり、数百ものSKUを販売していると、同社のマーケティングおよびマーチャンダイジング担当副社長を務めるアンジェラ・デニスン氏は語る。
「当社は2021年末に、あらゆる部分で刷新に取り組みはじめた。そしてこの方針は成功し、当社のTikTokエンゲージメントは現在、前月比で市場を上回る伸びを示している」と、デニスン氏は述べている。同氏によれば、フルーツオブザルームのソーシャルアカウントは、11月時点で、前年比77%の成長を達成した。
同氏は次のように述べている。「当社はすでにコアとなる顧客とのあいだに長く関係を築いており、彼らはいま、当社のことを子供たちに教えている。市場は進化しつつあり、今日の顧客の嗜好に合わせて当社のブランドを一新する機会がある」。
このためには、Z世代のような若い層の買い物客をTikTokで狙うことが必要だが、「同時に、当社の商品が好みに合わなくなった上の年齢層の顧客に対しても、我々が提供できる商品は幅広く存在するということを示すのも必要だ」とデニスン氏は述べる。たとえば同社のロゴは、何年にもわたる市場調査の結果、簡単な修正だけを加えることになった。「当社はロゴの一新を考えていたが、ロゴの認知度がすでに高いことが判明した」と、同氏は述べている。
クリエイターとのコラボレーション
若い層のオーディエンスのあいだに確固とした認知を築き上げるため、同社はキャンペーンを通じて、アーティストやクリエイターとのコラボレーションを増やしている。今年前半には、いくつかのライブコンサートでストリーミングプラットフォームのビーボ(Vevo)と提携し、ハリー・スタイルズ氏やイマジン・ドラゴンズによるショーを後援した。「これだけで、当社は40億のソーシャルインプレッションを獲得した」と、デニスン氏は述べている。
また、同ブランドは、常に人気が高いユーザー作成コンテンツにも傾倒している。
「多くの若い層の人々が、自身が持っている当社のアイテムをどのようにスタイリングするかをフォロワーに見せているのを目にしてきた」と、デニスン氏は述べる。たとえば、クリエイターが同社のパーカーを、ブレザーなどのかっちりした服と組み合わせたり、同社のスウェットパンツをクロップトップと合わせたりする着こなしを見せるのは、同ブランドに関する外部の投稿のうち、もっとも人気があるものだ。このコンテンツを最適化するため、同社は現在TikTokやほかのソーシャルメディアプラットフォームで同社のインフルエンサーやアンバサダーを増やすべく取り組んでいる。昨年のザラ(Zara)カプセルコレクションに続き、「当社は次に、ブランドのコラボレーションや限定版コレクションなど、新しい取り組みを続々と発表する」とデニスン氏は語っている。
フルーツオブザルームは自社のD2Cウェブサイトにも投資しており、これは同社のマーチャンダイズの幅広さを示すことを主な目的にしていると、デニスン氏は語る。このサイトは同ブランドの商品に関する最大のオンラインサイトで、ほかのどの小売業者より多くのスタイルと色を取り揃えている。「当社は数カ月前にウェブサイトの刷新を行った。また、この数年間で多くのデジタル顧客を維持してきた」。と、同氏は述べている。
現代化とのバランス
しかし、同社のビジネスのほとんどは依然として、大量購入や顧客の補充に依存している。
「当社の強みは小売で、カテゴリーで首位を占めることも多い」と、同氏は述べている。NPDによれば、同社は米国において女性用下着、男性用Tシャツ、男性用スウェットパンツで今年もっとも売れたブランドだ。
歴史のあるブランドが次世代の買い物客に合わせるよう試みるには、このような刷新が不可欠となる。
調査および助言企業のジェン・ゼット・プラネット(Gen Z Planet)の創設者でCEOを務めるハナ・ベン・シャバット氏は、いくつかの保守的なブランドは、若い層の消費者を引き寄せ、同時に上の年齢層の顧客と再度つながりを持とうとするとき、課題に直面すると語る。「すべての顧客に対して理想的なブランドであることは、不可能ではないとしても困難なことだ」と同氏は説明している。
「それでも、フルーツオブザルームのようなブランドには、世代を超えた共感を呼ぶ懐古的な価値を活かせる独自の可能性がある」と同氏は付け加えている。「上の年齢層の顧客はこのブランドの記憶があり、Z世代は過去のものを大いに評価している」。しかし、この層の買い物客は、インフルエンサーのコンテンツやスタイリングキャンペーンなど、商品のインスピレーションを見たいと思うのが普通だ。。「このため、コラボレーションは重要となる。コラボレーション相手に商品を渡して、何ができるかを見るべきだ」と、シャバット氏は述べる。これは、ジューシークチュール(Juicy Couture)、クレアーズ(Claire’s)、トゥルーレリジョン(True Religion)など最近復活を見せたY2Kの人気ブランドに当てはまる。
また、時代に合わせて生産方法を更新することへのプレッシャーも高まっている。「現在の市場は競争相手が多いため、当社の独自性は何なのかを見極めなければならない」と、デニスン氏は述べる。これは、同社のインナーやベーシックアイテムの豊富なラインナップに加えて、さらにサステナビリティを約束することだ。同社は8月、インクルーシブなサイズとリサイクルされた生地による、ユニセックスTシャツの新コレクションを発売した。「生地の柔らかさを強調していくことに変わりはないが、サステナビリティなどのブランドの価値をマーケティングによって組み入れていく」と同氏は述べている。
フルーツオブザルームのような歴史のあるブランドにとって、現代化はバランスが重要だ。「課題となるのは、当社の遺産を堅持しながら、同時に顧客とともに進化していくことだ」と、デニスン氏は述べている。
[原文:How Fruit of the Loom is refreshing its brand to appeal to younger shoppers ]
GABRIELA BARKHO(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Fruit of the Loom