ションフェルド氏は、モダン・グルメ・フーズのオーナー。同社はさまざまな商品を製造しているが、ホットチョコレートボムのボンボムズがTikTokで一躍有名になった。マシュマロが詰まったこのチョコレートの球体は、お湯やホットミルクをかけるとホットココアに変身する。
ボアズ・ションフェルド氏の10代の息子は、父親が経営する企業の商品が、TIkTokでバイラルを起こすことを予感していた。
ションフェルド氏は、モダン・グルメ・フーズ(Modern Gourmet Foods)のオーナーで、同社はさまざまな商品を製造している。そのなかのひとつ、ホットチョコレートボムのボンボムズ(BomBombs)が、TikTokで一躍有名になったのだ。マシュマロが詰まったこのチョコレートの球体は、お湯やホットミルクをかけるとホットココアに変身する。ションフェルド氏が米DIGIDAYの姉妹メディア、モダンリテール(Modern Retail)に語ったところによると、同氏は昨年息子から「ボンボムズには、若い消費者のあいだでバイラル化する可能性が秘められている」という話を聞かされたという。
ションフェルド氏は、インフルエンサーエージェンシーと提携して、ボンボムズの宣伝を試みた。その成果もあり、数カ月に及ぶ戦略検討を経て、2020年10月上旬にボンボムズが発売されると、インプレッションが一夜にして急増したという。
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インフルエンサーを起点に
実際にハッシュタグ、#hotchocolatebombsに火が着いたのは10月のことで、現在TikTokで2億回超のストリームを記録している。また、発売翌日にはAmazonでのキーワード検索回数が1800から14万3000に急増。ボンボムズはAmazonでもコストコ(Costco)でも売り切れ、1月にはAmazonのホットココアのカテゴリーで、新発売第1位の座を獲得した。さらにションフェルド氏によると、さまざまなマーケットプレイスで、オリジナルプライスの3倍以上の値段で売られていることもしばしばあるという。
今期は、300万箱以上のボンボムズが小売店に卸売りされており、この需要を満たすべく、同社は製造ライン4本を新規に追加。モダン・グルメ・フーズは、製造個数を1日あたり15万に増やさなければならなくなった。これは、ハンドメイドのボンボムズにとっては大きな挑戦だったという。
「若いインフルエンサーに、ボンボムズで楽しんでもらう。それが我々のアプローチだ」とションフェルド氏は語る。「TikTokのような、クリエイティブなプラットフォームに対しては、オーガニックな成長を促すために、時間を惜しまないことが重要だ」。こうした戦略で重点が置かれるのは、TikTokなどのプラットフォームで、エンゲージメントを最大化できる商品をいかに開発するかだ。
なおションフェルド氏は現在、この勢いを持続させることに尽力しており、オーガニック検索やメディアなど、ほかのチャネルで#hotchocolatebombsのハッシュタグを積極的に追跡している。このバイラルによる需要急増のおかげで、モダン・グルメ・フーズの今年の売上は5000万ドル(約53億円)に到達することが見込まれている。同社のeコマースサイトを海外へ広げる計画もある。「これらのバイラルクリップが飽きられてしまうことのないよう」に、同社は今後も、さまざまな色や味でボンボムズのアップデートを図っていくという。
バイラル製品に挑戦する企業が増加
過去1年にわたり、さまざまな商品がTikTokでバイラルを生んだ。チョコレートボムは、こうした波に乗ったと考えて良いだろう。たとえばホットチョコレートのトレンドは、ホイップされたダルゴナコーヒーを彷彿とさせる。ダルゴナコーヒーは昨年春にヒットし、業界におけるインスタントコーヒーの売上を押し上げた。フィッチ・ソリューションズ(Fitch Solutions)によれば、2020年3月の韓国から輸入されるインスタントコーヒーの売上は65%上昇し、前年比で850万ドル(約8億9800万円)増加したという。
2020年秋には、オーシャン・スプレー(Ocean Spray)のクランベリージュースを飲みながら、スケートボードに乗る男性の動画がバイラル化。オーシャン・スプレーはこれを受け、自社のクランベリージュースに対する需要が急増していることを知った。なおこのクリップは、約7000万回の視聴回数を獲得し、全米各地に同商品の完売をもたらした。
クリエイティブエージェンシーのムーバーズ・アンド・シェイカーズ(Movers+Shakers)のCEO、エバン・ホロウィッツ氏は、自社商品の売上が急増するまで、それにまったく気付かないブランドが少なくないと話す。ムーバーズ・アンド・シェイカーズは、エルフ(Elf)やAmazon、DSWなどのブランドに対して、TikTok活用の支援を行っている。ホロウィッツ氏によれば、モダン・グルメ・フーズをはじめとして、こうした成功例のリバースエンジニアリングを試みている企業が増えているという。
成功するのは10商品にひとつ
ブランドページを作成する、コンテンツを投稿し続けるといった、TikTokにおける寿命を延ばせる戦略を、ブランドが取るのは当然だと、ホロウィッツ氏は話す。しかしその一方で、ブランドによるコミュニケーションが過剰になり、オーガニックな成長機会が失われる可能性も、以前より高まりつつあるという。同氏は「ペイドメディアで投稿を宣伝したり、ショッパブル動画を制作したりといったことも、いまは容易にできる」と強調する。一方、こうしたツールを用いた施策は、対象の製品だけでなく、同ブランドのそのほかの製品、もしくは同ジャンルの他社製品へのハロー効果をもたらす可能性はある。だがおそらく、とくにフードポルノ(food porn:SNSなどで、料理や食事風景を魅力的に写し、視聴者の感覚を刺激する手法) を用いるブランドにとって効果的な戦略は、クリエイティブなコンテンツで、インフルエンサーとコラボレーションすることに尽きるだろう。「成功するTikTokチャレンジの企画は、それほど簡単ではない」と、同氏はいう。ただコストをかけて露出を増やせば良いという話ではないのだ。
だがもちろん、ネット上で話題になるコンテンツの制作に積極的に取り組むには、投資と一貫性も必要になってくる。「運まかせではダメだ」と、ホロウィッツ氏は強調する。
現在モダン・グルメ・フーズでは、親会社を含め「新商品のヒントを得るために、ホームレシピなど、TikTok内のさまざまなトレンドに目を向けている」と、ションフェルド氏は語る。TikTokでの次のプロダクトローンチに向けて、同社はボンボムズがバイラルで収めた成功をいくらかでも再現したいと考えているのだ。「とはいえ、成功するのは10商品にひとつぐらいの割合だろう。我々はそう認識している」と同氏は付け加える。
「我々の商品のどれが、次にバイラルを引き起こす可能性があるか、見極めるのは非常に難しい」と、ションフェルド氏。「テストを継続し続け、もしヒットしたときは、すべてのリソースをそこに結集する準備ができていなければならない」。
[原文:How food brands like BomBombs are going viral on TikTok]
GABRIELA BARKHO(翻訳:ガリレオ、編集:村上莞)