カナダの旅行およびライフスタイルブランドであるモノス(Monos)は、2020年のパンデミックによって、売上が90%低下した。そこで、その時に求められていた商品をリリースすることで、転換することを決意。それは、クリーンポッドUVCステラライザー(CleanPod UVC Sterilizer)という衛生器具だ。
2020年3月までの数カ月間、設立後2年のカナダの旅行およびライフスタイルブランドであるモノス(Monos)は、旅行かばんの販売事業で最高50%の成長を実現していた。
そのあとで、世界保健機関(WHO)はCovid-19のパンデミックを宣言し、それに続いて航空機の予約が大量にキャンセルされ、いくつもの国々は各所でロックダウンを実施した。
モノスの最高クリエイティブ責任者を務めるヒューバート・チャン氏は次のように語っている。「当社は依然として売上を伸ばしていたが、その日からすべてが、急激に低下していった。この時点で当社は、会社を存続させるためだけにでも、大きな転換を行う必要があるということを認識した」。
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モノスはチャン氏、ビクター・タム氏、ダニエル・シン氏により2018年に創設され、スーツケースのデザインにおいて「少ない方が良い」の思想を貫いてきた。同社の商品の価格は機内持ち込みバッグの325ドル(約3万7700円)から、大型の預け荷物の400ドル(4万6400円)までにわたる。また同社は、クライメートニュートラル認定(Climate Neutral Certified)のリストに登録された最初の旅行かばんブランドでもあると述べている。
同社のエグゼクティブによれば、2020年にモノスは、ほぼ一夜で売上が90%低下した。モノスは多くの他社たちと同様に、その時点で強く求められていた商品をリリースすることで、パンデミックに応じた転換を行うことを決意した。その商品とは、クリーンポッドUVCステラライザー(CleanPod UVC Sterilizer)という衛生器具だ。
エグゼクティブたちは、2020年にパンデミックにより引き起こされた旅行業界への壊滅的な影響を同社が生き延びられ、2021年にも成長を続けられた最大の理由のひとつが、この商品だったと語る。
クリーンポッドにより生み出された資金により、同社は自社商品のマーケティングで勝負に打って出られるようになり、2020年には新しいコレクションもリリースした。同社はその年、前年比で400%の売上増加を達成した。同社は2022年1月のシリーズA資金ラウンドで1000万ドル(約11億6000万円)を調達し、2021年にも「上向きの状況」が続いたと宣言した。同社は現在、自社商品の品揃えを拡充し、新店舗を開設して、より多くの才能ある要員を雇用するため、新しい資金ラウンドの使用を計画中だ。
旅行に特化した小売業者のすべてがモノスのように幸運だったわけではない。同業のD2C旅行かばんブランドであるアウェイ(Away)は、売上が90%以上減少し、同社はチームの半数を一時帰休して、さらに10%を一時解雇することを余儀なくされた。世界最大の旅行かばん小売業者のひとつであるサムソナイト・グループ(Samsonite Group)は、2020年前半に9憶5340万ドル(約1110億円)の売上減少を報告している。
旅行かばん以外の商品への転向
モノスは2020年春に、短波長紫外線光の高エネルギーのビームを使用して表面を消毒するクリーンポッドUVCステラライザーを発売した。これは、同社がこのアイデアを思いついてから6週間以内に行われた。
「当社は、自社が得意としているのはデザインだと理解している」と、モノスのCEOを務めるタム氏は述べる。パンデミックのはじまったころ、病院はUVCテクノロジーを使用して機器を消毒しており、市場にはその機能を持つ商品がすでに存在していた。「しかし、当社が気づいたのは、このような機器には外観や操作性において一般消費者が使いやすいような商品が存在しないということだった」。
同社の迅速な転向は、旅行ブランドが枠から踏み出した思考を迫られたことを示している。ワクチンの接種が広範に行われたにもかかわらず、人々は依然としてパンデミック前と同じように旅行していない。デザイン会社アータートンリミテッド(Arterton Limited)のマネージングディレクターを務めるウィリアム・ウォン氏は次のように述べている。「人々は従来のように空港を訪れようとしない。減少も起きたが、変化も同様に起きている。人々は別の場所に行くようになり、他国へ旅行しなくなった。国内での旅行が主流になり、消費する商品の種類も変化した」。
パンデミックの襲来への対応として、旅行に特化した小売業者の一部は、自社商品のマーケティング方法を修正したと、ウォン氏は語っている。たとえば、アーターソンの衣装袋はパンデミックの前には旅行用に宣伝されていたものだが、衣類ケア用の商品としてマーケティングされた。
将来を見据えて
パンデミックの開始から2年間がすぎ、モノスのエグゼクティブたちは、消費者が外出をためらわなくなってきたことから、クリーンポッドUVCステラライザーへの需要が減少しつつあると語っている。しかし、クリーンポッドに使用されたテクノロジーからキヨUVCボトル(Kiyo UVC Bottle)という別の商品が誕生した。この商品は2020年後半に発売されたもので、最高99.9%のバクテリアを排除できる。
クリーンポッドにより生み出された資金により、同社は商品ロードマップを推進することもできるようになったと、トム氏は語っている。同社は2020年秋に、バックパックやダッフルバッグを含むメトロコレクション(Metro Collection)をリリースし、その年の収益を大いに押し上げる要因となった。クリーンポッドは2020年の収益の15%にすぎなかったが、「当社はこの商品により操業を継続できただけでなく、どの他社も旅行用品やアクセサリのマーケティングを行わなかった時期に、マーケティングを推し進めることができた」と、トム氏は述べている。
同社は新たに1000万ドル(約11億6000万円)の資金を締結し、今年はさらに多くの旅行かばんと旅行用バッグのコレクションの発売を計画している。また同社は、バンクーバーに最初のフラグシップ店舗の開設を進めているという。
チャン氏は次のように述べている。「当社の商品ロードマップは非常に野心的な計画だ。当社はモノスを、単なる旅行かばんのブランドを超えたものとみている。当社は旅行とライフスタイルのブランドだ。そして、旅行はすべてを包含する体験だと考えている」。
[原文:How DTC luggage brand Monos grew 400% despite pandemic travel restrictions]
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:長田真)
Photo from Monos