[ DIGIDAY+ 限定記事 ]かつてD2C(Direct to Consumer)ブランドにとって、マーケティングの主戦場はFacebookやGoogleだった。だが現在では、テレビや屋外広告へと展開を広げる企業が増えている。本記事では、D2Cブランドのアトリビューション測定方法について網羅し、彼らが今日直面する最大の課題について説明する。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]かつてD2C(Direct to Consumer)ブランドにとって、FacebookやGoogleはそれなくして成り立たないほど大きな収益源だった。だが現在では、テレビや屋外広告、ダイレクトメールといったチャネルへと展開を広げるブランドが増えている。それにともない、もっとも売上に結びつきやすいチャネルはどれかという情報がこれまで以上に求められるようになってきた。
ハブル(Hubble)やリチュアル(Ritual)といった数々のD2Cブランドと提携してきた、パフォーマンスマーケティングエージェンシーのソーシャルウィズイン(SocialWithin)のCEO、ファヒーム・シディキ氏は「おそらく大半のEC企業や小売ブランドが直面する最大の課題が、測定とアトリビューションだろう」と指摘する。
そこで本記事では、アトリビューションについて知っておくべき点を網羅し、D2Cブランドが今日直面するアトリビューションにおける最大の課題について説明しよう。
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――ブランドがよく口にするアトリビューションとは何か?
アトリビューションとはつまるところ、ある商品が売れたときにどの広告チャネルのおかげで売れたか把握することだ。たとえばあるカスタマーがインスタグラム(Instagram)でマットレス広告を見たとしよう。そしてそのあと地下鉄でまた別の広告を見て、さらにポッドキャストでブランドについて耳にしたとする。その後、このカスタマーが商品を買った場合、いったいどの広告チャネルのおかげで購入に結びついたのだろうか?
――D2Cブランドは、なぜそんなにアトリビューションを気にしているのか?
ブランドが主に卸売で商品を販売していた頃は、カスタマーが商品を発見できるチャネルの数は限られていた。コールズ(Kohl’s)やターゲット(Target)、ノードストローム(Nordstrom)など、どの店舗であってもそれは同じだった。
だが、D2Cブランドの場合、デパートに卸してカスタマーに商品を紹介してもらうのは難しい。そこで各社は、ウェブサイトにカスタマーをもっとも呼び込んでいるチャネルがどれかを把握しようと考えた。そうすればそのチャネルへの投資を増やせるとともに、貴重な広告費用を新規客の獲得につながらないチャネルに無駄遣いせずに済むというわけだ。
――アトリビューションがここまで重要になった「本当の」理由は?
「動機として多いのが『とにかくFacebookへの投資を減らしたい』という考えだ」。そう指摘するのはフリーランスのマーケター向けプラットフォーム、マーケターハイヤー(MarketerHire)の共同創設者でCEOのクリス・トイ氏だ。たとえばD2Cブランドのブルックリネン(Brooklinen)やボンバス(Bombas)はある時点では広告予算の8割近くをFacebookに振り分けていた。もはやFacebookによって築き上げた企業といっても良いだろう。だが、Facebookの広告が高騰を続けたことで、そこに変化が生じた。ブランドはかつてのFacebookと同じくらいカスタマーを集められ、かつ安上がりで済むチャネルを探そうとしている。そこで必要となったのがアトリビューションだ
――アトリビューションは、どうすれば測定できる?
実際のところ、アトリビューションの測定について唯一の正解は存在しない。もしあなたが正解を見つけたら、あなたのところにD2Cブランドが大挙して押し寄せてくるだろう。
――では、ブランドはどのように測定しようとしているのか?
もっとも一般的な測定手法は「ラストクリック」だ。これはカスタマーが商品購入前に、最後にクリックした広告が販売に「結びつけた」と考える手法となっている。だが一方で、ファネルの第一段階のほうが重要だと考えるマーケターも存在する。これは寝具や食器など、購入前に調査をはじめたカスタマーが最初に目にした広告は、カスタマーの脳にブランド名を刷り込む効果があるという考えに基づいている。これは卵が先か鶏が先かといった問題ともいえるだろう。ほかにも人気のあるアトリビューションの手法が、「マルチタッチ」だ。こちらはカスタマーが実際に購入するまでに見聞きした、あらゆるチャネルを追跡しようとする手法となっている。
――ポッドキャストで聞いた広告や地下鉄で見た広告など、クリック形式以外のフォーマットの場合はどうするのか?
D2C黎明期には、多数のブランドが屋外広告に割引用のコードをつけていた。いまでもこの手法を用いているブランドは存在する。このやり方であれば、カスタマーが地下鉄の広告用のコードを使えば、マーケティングチームがどのチャネルか把握できる、というわけだ。
だがなかには割引コードを使うのを忘れるカスタマーもいる。そんななか、購入後の調査を行うブランドが増えている。オンラインで購入したカスタマーに直接「どうやって当社のことを知ったか」を尋ねる手法だ。遠隔医療会社のロー(Ro)でグロース部門のバイスプレジデントを務めるウィル・フラハーティ氏が以前、モダン・リテール(Modern Retail)に語ったところによると、同社が昨年秋にボストンで大規模なテレビや屋外広告キャンペーンを行った際に、オンラインで購入した多数のカスタマーに調査したところ、テレビおよび屋外広告ではじめてローというブランドを知ったというカスタマーが多かったという。もし、同社がラストクリックのみを使用していれば、アトリビューションはカスタマーが購入にあたって最後に広告をクリックしたFacebookやGoogleになっていただろう。遠隔医療D2Cスタートアップのヒムズ(Hims)でマーケティングおよび買収部門のバイスプレジデントを務めるエミリー・ボシュウィッツ氏は、同社は過去にリフト分析を重視していたと明かしている。ひとつの都市で屋外や新しいキャンペーン手法を実施し、そのあとにその都市でブランド知名度調査を実施することでキャンペーンによる知名度向上の効果を測る手法だ。
――ブランドはあらゆる手法を試すべきか?
アトリビューションをめぐる最適な手法を見つけ出すよりも大切なことがある。ある手法を考えたら、そのモデルを使い続けることだ。そうすれば新しいチャネルを試したとき(たとえばその月の広告予算の5%をPinterestに投じた場合など)にも、「同じ基準で比較」できるとトイ氏は主張する。同氏はアトリビューションに関し、ある程度の満足が行く手法を続けることが重要だと指摘する。あまりにも変えすぎて逆にリスクを増やしているブランドが多く、またさまざまなアトリビューションの手法を試すのに時間を費やしすぎると、開発やクリエイティブのテストといったマーケティングに置けるほかの重要な取り組みがおろそかになってしまうだろう、というのがトイ氏の主張だ。
シディキ氏もまた、「オンライン企業にとって、唯一の真実を得られる情報源など存在しない」と指摘している。
Anna Hensel(原文 / 訳:SI Japan)