スプレー式デオドラントとともに、ボディーソープ、保湿オイル、キャンドルなどのパーソナルケア商品を販売する キュリー (Curie)は、ホームショッピングチャネルのQVCで成功した戦術を応用し、TikTokでの存在感を高めようとしている。2つのチャンネルは、同社が新製品を開発・発売する方法の形成にも役立っている。
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キュリー(Curie)は、スプレー式デオドラントとともに、ボディーソープ、保湿オイル、キャンドルなどのパーソナルケア商品を販売しており、ホームショッピングチャネルのQVCから得られた教訓を活かして、TikTokでの存在感を高めようとしている。
2021年2月にQVCへ初登場して以来、このパーソナルケアブランドの創業者は、その後の1年間でさらに10回、同ネットワークに登場し、さまざまな商品のプロモーションを行った。キュリーの創業者兼CEOのセアラ・モレ氏は2022年、QVCで成功したオンエアの戦術を応用し、TikTokでキュリーの存在感を高めている。この2つのチャンネルは、同社が新製品を開発・発売する方法の形成にも役立っている。
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QVC以外にも、キュリーはノードストローム(Nordstrom)、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)、アンソロポロジー(Anthropologie)とも卸売パートナーシップを結んでいる。「しかし、QVCは我々のマーケティングチャネルとして圧倒的に大きなものだ」とモレ氏は述べている。2021年、QVCとTikTokは合計でキュリーの売上の60%を生み出した。一方で、キュリーのTikTokからのコンバージョン率は現在のところ5%だとモレ氏は語っている。
QVCがほかのマーケチャネルに及ぼした影響
モレ氏がはじめて自宅のリビングからQVCに出演したとき、キュリーのクレイデトックスマスクは10分間で売り切れた。「この1年間で、私が自社商品について語る方法はQVCによって変わった」と、同氏は述べている。
キュリーのような多くのブランドは、過去数年間にわたりFacebookライブ(Facebook Live)やNTWRKなどのデジタルプラットフォームを使用してライブショッピングをテストしてきた。しかしキュリーは、QVCとTikTokが売上を上げるのに成功していることに気づいた。モレ氏は、これらの2つのチャンネルのオーディエンスがこれまで以上に重なり合っていると主張している。「すべてのTikTokユーザーがZ世代の高校生というわけではなく、QVCのすべてのオーディエンスが高齢層の消費者というわけでもない」と同氏は述べている。同社は、QVCとTikTokの両方において、28歳から42歳がコア層であることを発見したという。
「TikTokとQVCでの成功は、人々が認識しているよりも深く関係している」とモレ氏は説明する。わき専用の炭マスクは、Tiktokのオーディエンスのあいだでキュリーの最大の人気商品になった。このマスクはキュリーのQVCの生放送枠でも売り切れ続出で、同氏はこれがオンエアを使った成果だとしている。
QVCのセッションを通じて、モレ氏はオーディエンスがクリーンな成分リストよりも、製品の見た目や使用感を重要視していることを学んだ。「このため、ウェブサイトのコピーも、それを反映したものに変更した」。同氏は現在、その言葉をTikTokとインスタグラムの投稿の両方に応用している。
TikTokではQVCと同様に、オーディエンスがどのようなものに引き寄せられるかをリアルタイムで把握することが重要だと、同氏は語る。キュリーの場合、商品を使用しているところを見せるのが、もっとも再生回数と売上が伸びる傾向がある。たとえば、キュリーのタグが付いた人気のある投稿の多くは、利用者が同ブランドのボディウォッシュを使って体毛を剃っているところを見せているものや、商品を使いながら結果について説明しているものだ。
同社のリーチの多くはオーガニックなものだが、昨年はTikTokで広告も開始し、Facebookやインスタグラムの広告よりも成功を収めていると、モレ氏は述べている。「当社はインフルエンサー、有料とオーガニックのコンテンツを組み合わせたものをTikTokで流し、何千もの再生回数と『いいね!』を獲得している」と同氏は語る。
商品開発の具体化
キュリーが動画に特化した2つのチャネルで成功したことは、同ブランドの新商品開発にも影響を与えている。QVCとTikTokでの成功によって、キュリーがリリースする商品の種類が変わったわけではないが、形状やパッケージはオーディエンスの反応に触発されたと、同氏は説明している。
例のひとつとして、同ブランドから2021年にリリースされた、瓶入りのホイップのボディウォッシュがある。灰色のデトックスマスクが顧客のあいだで人気になったことから、新しいボディウォッシュはより視覚的にアピールするようなものをめざし、マシュマロのような泡立ちの手触りにしたと、同氏は語る。「色鮮やかで泡立った手触りのボディウォッシュが、透明なデオドラントや消毒剤より、常に多くのトラフィックを引き起こすことに気づいた」と同氏は述べている。
次は、今年9月に別のボディケア商品を発売する予定だ。「これは、市場に存在するほかの商品とは見た目も感触も異なったものになるだろう」という。
ソーシャルオーディエンスに順応する、具体的にはTikTokのアルゴリズムを解読することは、消費者向けブランドにとってますます重要になってきた。
D2CブランドとTikTok戦略について協働するブランディング代理店のフォージ(Forge)の創設者であるアシュウィン・クリシュナスワーミ氏は、このプラットフォームでは各ブランドが、「商品が使われているところを見せることで、視聴者がスクロールを止めるような動画」を求められると語っている。
もちろん、バイラル化の可能性がある独自の製品を保有していれば有利だと、クリシュナスワーミ氏は語る。しかし、TikTokの多数のブランドのなかで目立つには、ライブ販売のヒントを適用するのもひとつの独自の方法だと、同氏は説明する。「今日では、単にトレンドの音楽やボイスオーバーとしての文章の読み上げ以外のものが必要だ」と同氏は述べている。キュリーの場合、同社のボディケア商品のユニークな特徴を紹介することが、インスタグラムの洗練されたブランド写真よりも共感を呼ぶと、同氏は言及している。
キュリーにとって、QVCを使ったリアルタイム販売と、TikTokを使ったブランドの認知の組み合わせが、売上を促進するための鍵になってきた。「2つのプラットフォームのオーディエンスを掛け合わせながら、成長を続けていきたい」とモレ氏は述べている。
[原文:How Curie is incorporating QVC tactics into its TikTok strategy]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Curie