主にZ世代の消費者とSNSで関係を築き、人気が再燃していたサンダルブランドのクロックス(Crocs)。ほとんどの企業と同じように、米国がロックダウン(都市封鎖)に入るやいなや、同社も実施中のキャンペーンをすべて停止した。しかし、再びソーシャルマーケティングに目を向けたことで、状況は急速に変わりつつある。
2000年代初頭に一躍ブームとなったクロックス(Crocs)は、このところ人気のシューズブランドとして再び人気を高めていた。それを可能にしたのは、主にZ世代の消費者の存在と強力なソーシャルマーケティング戦略だった。
だが、ほとんどの企業と同じように、米国がロックダウン(都市封鎖)に入るやいなや、クロックスはマーケティング戦略にブレーキをかけ、実施中のキャンペーンをすべて停止した。しかし、再びソーシャルマーケティングに目を向けたことで、状況は急速に変わりつつある。
クロックスのEMEA(欧州/中東/アフリカ地域)マーケティングディレクターであるヤン・ル・ボゼック氏がDIGIDAY+ 会員専用コンテンツ、DIGIDAY+ TALKSの最新エディションで語ったところによると、パンデミック中にはもっぱらソーシャルメディアがブランドを宣伝するための場所になったという。
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また、既存のファンの声に積極的に耳を傾けるのはもちろん、新しい人々に見てもらい、潜在的な顧客との関わりを広げるうえで、ソーシャルメディアが重要なメディアになったとル・ボゼック氏は話す。
同社がこれまでソーシャルプラットフォームに投稿してきたメッセージや画像は、現在の状況に合わせて変更する必要がある。だが、3カ月かけてマーケティングチームの体制を復活させたル・ボゼック氏によれば、チームはニューノーマルに対応する準備ができており、顧客の目を再びブランドに向け、顧客を呼び戻すメッセージを発信するためのプランをすでに作成しているという。
01:我々が学んだこと
俊敏性を保ち、すぐに行動を再開する
チームは俊敏でなければならないというル・ボゼック氏にとって、パンデミックがはじまったときにマーケティング戦略をすばやく停止するというのは、その一例に過ぎない。同氏によれば、チームは既存のマーケティング資料やプロモーションを新しい状況に合わせて利用する方法を見つけ出す必要に迫られたという。そのため、人々が屋外や公共の場にいるような画像の投稿は控えざるを得なくなった。
また、もっぱら「在宅勤務」をメッセージの中心に据え、ソーシャルファーストキャンペーンを新たに作成しなければならなくなったと、ル・ボゼック氏は振り返る。インスタグラムのストリーズでリモートワークをテーマにしたGIFスタンプシリーズを投稿したのもその一環だ。
ル・ボゼック氏は、状況が正常化するまでの各段階に合わせて彼のチームがどのような準備をしているのか、またそれぞれの段階でどのようなメッセージや画像が最適なのかについて説明した。
- ロックダウン中:「快適になりたい? お届けしますよ。(Need comfort? We deliver.)」
- ロックダウンの解除後:「いい気分で、いい買い物。(Good feels and good deals.)」
- 企業や学校の再開後:「フレッシュなペア(1足)を、フレッシュなエア(空気)のために。(A fresh pair for fresh air)」
- 大規模な集まりの解禁:「着飾らずに、一緒に行こう。(Come together as you are)」
- 正常化後:「シューズを、そしてショッピングを楽しめる日が再び。(Happy feet are here again. And here for a deal)」
TikTokなどへのアプローチ
ル・ボゼック氏によれば、ロックダウン中にソーシャルメディアを利用する消費者が増えたことから、クロックスはソーシャルメディアプラットフォームを最優先に位置づけ、ソーシャルファーストでタイムリーなキャンペーンの作成をはじめたという。
81万8000人のフォロワーを抱えるインスタグラムは、いまでも彼とチームがファンや消費者ともっとも頻繁に関わっている場所だと、ル・ボゼック氏はいう(その手段は、投稿への「いいね!」やコメント、あるいはダイレクトメッセージだ)。一方、19万1100人のフォロワーを抱えるTikTokは、チームがコントロールできる余地の大きいコンテンツベースのキャンペーンを展開するのに魅力的な場所となっている。
- 「有料広告にもそれなりの機会はあるが、コンテンツの作成は我々が直接影響を及ぼすことができる。しかもすばやく実施することが可能だ」とル・ボゼック氏は話す。このようなコンテンツキャンペーンには、アプリのユーザーを対象としたチャレンジやコンテストなど、ブランドやブランドのハッシュタグに多くのオーガニックなエンゲージメントをもたらす取り組みも含まれる。
- そうしたコンテストの一例が「#ThousandDollarCrocs(1000ドル・クロックス)」だ。これは、自分が持っているクロックスのフットウェアを価格が1000ドル(約10万円)に見えるようにカスタマイズして投稿するというものだった。優勝者には1000ドル相当のクロックス製品が授与されたが、このチャレンジハッシュタグは1900万ビューを獲得し、このハッシュタグを使って作成された動画の数は4万件に達した。
- ル・ボゼック氏はTikTokがもたらす別のメリットとして、Z世代の消費者とのつながりやクロックスがまだ進出していないような海外市場とのつながりを、TikTokが最初から持っていることを挙げている。
クロックスのインフルエンサー戦略
ル・ボゼック氏によれば、チームがコラボレーションしているマイクロインフルエンサーや有名人は、提携前からクロックスのファンであったことが確認できた人たちだという。「我々が提携している有名人やインフルエンサーは、製品を提供する前からクロックスを購入していた人たちだ。この事実は当社のブランドの信頼性を実によく示している」と、同氏は話す。ただし、インフルエンサーや有名人との提携が本当に大きな成功をもたらすのは、思いも寄らない人たちと一緒に仕事をしたときだ。
- ミュージシャンのポスト・マローン氏は、クロックスとコラボレーションした有名人の1人だ。彼のアルバムアートが使用された3種類の限定版製品は、発売のたびに完売となった。
- クロックスは、ロックダウンの直前にケンタッキーフライドチキン(KFC)とのコラボレーションも発表し、ニューヨーク・ファッション・ウィーク期間中にキャンペーンを開始した。KFCのチキンバケットのように見えるサンダルを制作し、フライドチキンに似せたアクセサリー(ジビッツ・チャーム)を取り付けたのだ。ル・ボゼック氏によると、このユニークなパートナーシップのおかげで、メディアの報道が増えたという。
- このようなパートナーシップは「認知度を高める」だけでなく、「新しいタイプのオーディエンスにリーチする」ためのものであり、それこそが大きな目標なのだとル・ボゼック氏はいう。また、クロックスはブランドにとって重要な信頼を確立しながら新しい潜在顧客にリーチしたいと考えているため、大企業や有名人と提携するだけでなく、マイクロインフルエンサーとのパートナーシップを増やすことに注力しているとル・ボゼック氏は話す。「大勢のマイクロインフルエンサーがさまざまなコミュニティで活動しており、彼らと彼らが所属するコミュニティが強く結びついていることを我々は十分に理解している」とル・ボゼック氏は語った。
02:スライドを見る
Kayleigh Barber(原文 / 訳:ガリレオ)