コカ・コーラ(Coca-Cola)は2016年夏、新ブランド「ゴールドピーク(Gold Peak)」の広告でターゲティングするために、ユーザーの検索履歴を利用することはしなかった。その代わりに、Facebook、インスタグラム、Twitterに投稿された写真をチェックし、それに基いてターゲティングを行った。
コカ・コーラ(Coca-Cola)は2016年夏、紅茶とコーヒーの新ブランド「ゴールドピーク(Gold Peak)」の広告で、アイスティー好きの人をターゲティングするために、ユーザーの検索履歴を利用するようなことはしなかった。その代わりに、Facebook、インスタグラム、Twitterに投稿された写真をチェックし、それに基いてターゲティングを行った。
具体的には、画像認識エンジンを利用して、アイスティーが入ったグラスやポットとともに、楽しそうな表情で写っている写真を投稿した人々を特定。また、スナップル(Snapple)、オネスト・ティー(Honest Tea)、リプトン(Lipton)といった競合ブランドの缶やボトルを写した写真を投稿した人々を見つけ出した。そして、これらの人々がインスタグラムやFacebookやTwitterからモバイルサイトやアプリに移ったときに、ゴールドピークの広告を提示した。広告が掲載されたサイトやアプリは40種類以上に及ぶという。
たとえば、アイスティーポットが並べられたピクニックテーブルの写真をインスタグラムのどこかに投稿した人がいたとしよう。ゴールドピークはその人を写真から特定し、その人がビジネスインサイダー(Business Insider)でニュースを読んでいるときや、アプリ「アキュウェザー(AccuWeather)」で天気をチェックしているときに、広告を表示したのだ。
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画像認識でターゲティング
「我々は何年も前から、ソーシャルリスニングをターゲティングに活用してきた。だが、こうしたソーシャルプラットフォームでテキストがシェアされることは、いまやほとんどない」と、米広告企業IPGメディアブランズ(IPG Mediabrands)の子会社アンシブル(Ansible)でバイスプレジデントを務めるベンジャミン・ブリング氏は語った。「(コンテキストが)あいまいになりがちな、テキストベースのターゲティングとは異なり、画像はもっと微妙なニュアンスのコンテキストを伝えられる」と、ブリング氏はいう。
トロントに本拠を置くモバイル広告プラットフォーム企業のクループ(Cluep)は、独自の画像認識エンジンを開発している。このエンジンは、ソーシャルネットワーク上で公開されているすべての写真を分析し、ブランド、製品、ロゴ、状況を特定する。そして、そのソーシャルネットワークのユーザーがモバイルアプリやモバイルサイトに移ったときに、彼らの関心、活動、ライフスタイルに基づいてエンゲージメントを図るのだ。
現在、ナイキ(Nike)、マクドナルド(McDonald’s)、トヨタ自動車、アンダーアーマー(Under Armour)といったブランドが、クループと提携してこうしたビジュアルターゲティングを行っている。画像認識自体は新しいものではないが、クループの創設者でCEOを務めるカラン・ワリア氏によれば、クループはプラットフォームとして他社を一歩リードしているという。Facebookなどのプラットフォームは自前の画像認識エンジンを使用しているものの、ブランドがそのエンジンを利用して、ユーザーの投稿した写真に基づいたターゲティングを行うことを認めていない。
今後の課題は効果の維持
さらにクループは、自社の広告サーバーとリアルタイム入札システムを使って、ソーシャルメディアプラットフォーム以外の有料モバイルアプリやモバイルサイトに、複数のサプライサイドプラットフォーム(以下、SSP)との提携を通じて広告を表示できるようにしている。クループは、Twitter、Facebook、インスタグラムと提携し、これらプラットフォーム上のすべての公開データにアクセスできる。また、複数のSSPと手を組み、クライアントの広告を自動配信できるようにもしている。
「我々は、画像認識と広告のすき間を埋める取り組みを大規模に行っている。我々のような方法で画像ベースのターゲティングを行っているアドテクプラットフォームはほかにない」と、ワリア氏は語った。
さらに注目すべきことに、人々はこうした広告を気味悪く思っていないようだ。大手パブリッシャーのサイトでベータテストを行った複数のブランドで、コンバージョンやクリックスルー率が業界基準値の5~10倍になっているとワリア氏は説明する。コカ・コーラはクリックスルー率が2%を超えているが、この割合はゴールドピークのクリエイティブにおける通常の基準値の3~4倍だという。
「コカ・コーラにとって最大のKPIは、店舗に向かう人々の数が増え、その結果店舗の売上が増えることだ」とブリング氏は述べた上で、次のように語っている。「このパフォーマンスを維持できれば、間違いなくほかのクライアントもこの手法を検討することになるだろう」。
Tanya Dua(原文 / 訳:ガリレオ)
Image: Gold Peak Facebook