D2Cのバックパックブランド、ブレヴィティ(Brevite)は、TikTokに寄せられる批判的なコメントに対して、動画回答機能を使って直接回答し始め、短い動画で批判に反論したり、製品に関する質問に答えたりしている。その回答動画は昨年、11本で10万回以上再生され、同社の売上が200%アップしたという。
ディラン・キム氏が、昨年TikTokをブランドマーケティングに使い始めたときに目に止まったのは、そこに集まるネガティブなコメントだった。
創立6年になるD2Cのバックパックブランド、ブレヴィティ(Brevite)の最高マーケティング責任者かつ共同創業者を務めるキム氏は、衝撃を受けた。だが、これは、ソーシャルメディアを活用するブランドのほとんどにとっては見慣れた光景なのだ。
懐疑的なコメントや、製品の品質を疑問視する声、価格や外観を批判したりするコメントが投稿されることはよくあることだ。しかし、ほとんどのブランドがこれらのコメントを無視するのとは対照的に、キム氏は製品の紹介のスタートポイントとしてコメントを利用することにした。TikTokの動画回答機能を使って否定的なコメントに直接回答し始め、短い動画で批判に反論したり、製品に関する質問に答えたりしている。
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動画回答機能は2020年3月にTikTokで開始され、一般的にはユーザーがフォローアップ動画やコメント投稿者からのリクエストに応えるために使用されている。昨年、ブレヴィティの回答動画は11本で10万回以上再生され、キム氏はTikTokのおかげで売上が200%アップしたという。ブレヴィティにはTikTokのフォロワーが4万6000人いる。
上部のコメント:「なるほど、でもバッグに100ドル(約1万900円)も払うわけないでしょ。どんな金持ちよ、私」
動画のキャプション:「我々のカメラバッグと、どこでも手に入るカメラバッグの違いは何か?」
スペックを掘り下げるのに最適
プラットフォームとしてのTikTokは、米国では2017年にローンチされたばかりで、まだかなり新しく、ブレヴィティのようなブランドはまだ新しい使い方を実験しているところだ。キム氏によると、表面的な美しさを重視するインスタグラムとは異なり、TikTokは製品のスペックを深く掘り下げるのに最適だという。そのため、同社のバックパックのようなパフォーマンス重視の製品には理想的だと、彼は言う。
4月のある例では、小売価格が約100ドルの同ブランドのバッグに対して、アリババ(阿里巴巴)で10ドル(約109円)で購入できるバッグに相当するとのコメントが投稿された。キム氏はこのコメントに対して短い回答ビデオを投稿し、10ドルのバッグにはおそらく備わっていない、ブレヴィティのバッグの多くの機能を説明した。この動画の再生回数は2万回となっている。さらに、この動画にもコメントが付き、それに回答する形でさらに2本の動画が投稿され、そこでは防水機能がついているかどうかといった質問に答えている(防水機能はついている)。
ブランドのマーケティングチームは現在わずか3人で構成されているため、キム氏はほとんどの動画を自分で制作している。同氏によると、TikTokが主要なソーシャルチャネルになったのは昨年だという。ブランドのTikTok上のデザイン方針はインスタグラムに比べるとはるかに自然で、作り込み度は高くないが、そのことがエンゲージメントの向上につながっていると彼は言った。
「TikTokについてなら、1日中話すことができる」と同氏は言う。「TikTokはとても楽しいメディアだ。実験する余地はたくさんある。(TikTokの)飾らなさと透明性はエンゲージメントを持つうえでとても楽しいものであり、批判(コメント)に対する私たちの反応はそれを反映している」。
遊び心やユーモアを忘れないこと
インスタグラムと比べると、TikTokではコンテンツ制作に費やす時間を減らしても、ブランドたちはより大きな成功を納めることができる、という同氏の評価にアナリストたちも同意している。eコマース企業オクテーンAI(Octane AI)の最高経営責任者マット・シュリヒト氏は、「インスタグラムとは異なり、TikTokのクリエイターたちは、カジュアルなコンテンツや粗い編集でもバイラルさせることができる」と述べた。
キム氏によると、この戦略における最大の課題は、こうした回答動画のトーンを明確にすることだという。彼は、同ブランドが攻撃的であったり自己弁護的であったりするのではなく、遊び心があったりユーモアを込めた皮肉的なものになることを望んでいる。動画は批判コメントの投稿者を批判したり、ほかのブランドを攻撃したりするものではない。批判に対しては率直に答えるだけだ。
たとえば、バッグはアリババの10ドルのオプションと区別がつかないという主張に対する回答動画のなかで、キム氏は「私たちのバックパックと、どこでも手に入るバックパックの違いは3つに集約される。それはより良い素材、より良い機能、そしてより良いインパクト」と冒頭に要約している。
ブレヴィティは完全に自己資金で運営されており、昨年の売上は300万ドル(約3.2億円)を超えている。キム氏によると、同ブランドは2021年はその数字を上回る軌道に乗っているという。
[原文:How Brevite used TikTok’s comment response feature to drive a 200% lift in sales]
DANNY PARISI(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)