ジグソーパズルメーカーであるブルーカズーが何気なく始めたTikTokが、今では同社の商品開発のための重要なプラットフォームになっている。商品開発やカスタマーサービスにTikTokを活用するブランドは増えつつある。他サービスに比べ分析に手間はかかるが、それでもブランドにとっては価値ある情報が得られるのだ。
ジグソーパズルメーカーであるブルーカズー(bluekazoo)の共同創業者、アブラハム・パイパー氏は、TikTokが自社の商品開発の場になるとは考えてもいなかった。
パイパー氏は「TikTokは、言わば『お遊び』で始めた」と明かす。「顧客とのコミュニケーション手段になったのは、嬉しい偶然だった」。この「偶然」はブルーカズーに売上増をもたらし、同社は新商品の開発に取り組んでいる。
同社のみならず、TikTokを利用しているブランドたちは投稿に寄せられたコメントに目を通し、顧客からの質問に答え、トレンドを確認し、商品の改善につなげている。
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価値ある顧客からのコメント
オーガニック、プロモーション投稿の両方でコメントを確認するというのは手間のかかる作業だ。それでも、顧客のコメントには目を通すだけの価値がある。一瞬でフィードバックを得られるため、それだけ早く商品の改善につなげられる。ブルーカズーに限らず、TikTokユーザーの傾向や特徴を理解し、辛抱強くその声に耳を傾けている企業は少なくない。
ブルーカズーのもうひとりの共同創業者、ジョン・ソーウィン氏はTikTok上に企業プロフィールを作成したが、実際に新商品に関するフィードバックを集めるのに使ったのは個人アカウントだったという。ソーウィン氏は「パズルの箱に表記する文字は金・銀・白のどれがいいか?」「パズル用の接着剤を発売したら興味はあるか?」といった質問を通じ、TikoTok上でのコミュニケーションを始めたという。
TikTokの個人アカウントを新商品開発のためのリサーチツールとして活用するなど、ブルーカズーのソーシャル戦略立案時には考えもしなかった。だが、この種の活動の甲斐もあってパズルの売上は伸びているという(増加数は非公開)。2020年のブルーカズーの売上は160万ドル(約1億7400万円)で、四半期ごとの平均成長率は600%にも達した。
ブルーカズーは現在、TikTokとメールでアーティストから新しいパズルを募集している。「TikTokで寄せられた応募作品を5時間以上かけて吟味した。いまのところ、3人のアーティストと交渉中だ」とソーウィン氏は話す。
カスタマーサービスにも活用
一方、D2Cメガネブランド、ペアアイウェア(Pair Eyewear)はTikTokをカスタマーサービスに利用している。たとえば配送ポリシーの連絡や、「遠近両用レンズを扱っているか?」といった質問などを受け付けているのだ。共同創業者のソフィア・エーデルステイン氏は「見込み客の質問に気軽に答えられるTikTokの存在は、非常にありがたい」と述べる。
また、D2Cの日焼け止めブランドのハビット(Habit)も、TikTokに寄せられたフィードバックを商品の改善に役立てている。CEO兼創業者のタイ・アダヤ氏は「コメントすべてに目を通せるわけではないが、少なくともトレンドをつかむことは可能だ」と話す。「日焼け止めについては誤った知識を持っている顧客が多い。そこでTikTokで『日焼け止め入門動画』を投稿してみた」。
この動画は大人気となり、ハビットはTikTokのプロフィールページにQ&Aコーナーを開設。まもなく同社ウェブサイトにもQ&Aコーナーを設置予定だという。
上記のようなTikTokのコメントを有効活用しているブランドは少なくない。こうした企業は、有料投稿でもオーガニック投稿でも、コメントに注意を払っている。ただし、Facebookとは異なり、TikTokの広告プラットフォームにはコメント集計機能はなく、プロモーション投稿とオーガニック投稿をそれぞれユーザーが目で確認しなければならない。
ブランドのTikTok利用を支援しているオンライン広告エージェンシーのワラルーメディア(Wallaroo Media) でCEOを務めるアンドリュー・ピーパリネン氏は、「同じクリエイティブで複数広告を出している場合、各広告のコメントをひとつずつ手作業で確認しなければならない」とその手間を指摘する。
分析に力を入れるブランドたち
「作業が面倒な原因は、TikTokのAPIにある」と指摘するのが、ソーシャル&ストリーミング情報分析企業のコンビバ(Conviva)で戦略担当バイスプレジデントを務めるニック・シセロ氏だ。「ブランドやソーシャル分析企業がコメントを確認しやすくするための機能が実装されていない」。この煩雑さを抱えてなお、ブランドはTikTokのコメントを確認して情報分析に取り組んでいる。
たとえばハビットは、TikTokのフィードバックをもとにスターターセットの内容を変更し、肌のアンチエイジングやSPF(Sun Protection Factor:紫外線の遮断効果指標)についての説明や、塗り方などについてより具体的な情報を載せるようになった。変更として大きなものではないが、消費者と直接コミュニケーションできるルートを確保・維持できることの意味は大きく、ほかに商品に対するリクエストなども受け付けている。
またブルーカズーのパイパー氏は最近、視覚障碍者が各ピースを手触りで確認しながらパズルを仕上げる様子の動画を制作、投稿したところ何度もタグ付けされた。またその投稿時に、どのようなパズルを商品化して欲しいかを併せて尋ねている。「このような交流の機会もアイデアも、TikTokがなければ実現しなかっただろう」と、プラットフォームの恩恵を語った。
[原文:How brands are using TikTok as a channel for customer service and product feedback]
ERIKA WHELESS(翻訳:SI Japan、編集:分島 翔平)