過去数年間にわたって、テキストメッセージによるマーケティングは、大手小売業者やD2Cブランドのあいだでトレンドとして成長してきた。このチャネルが成熟した現在、各ブランドは特定の時点における各社の優先順位に応じて、より多種多様なSMS戦略を試みはじめている。
こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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ブラックフライデーの特売がはじまってから、SMSを使用するブランドはさらに増えている。
過去数年間にわたって、テキストメッセージによるマーケティングは、大手小売業者やD2Cブランドのあいだでトレンドとして成長してきた。最初は、人々の電子メールの受信トレイがますます詰め込まれるようになるなか、顧客と簡単に結び付くための方法と見なされていた。このチャネルが成熟した現在、各ブランドは特定の時点における各社の優先順位に応じて、より多種多様なSMS戦略を試みはじめている。特に今年のホリデーシーズンに、マーケターやブランドは、配送の遅延や、どの商品の在庫があるか顧客に通知するため、SMSが有効であることに気づいたと語っている。
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通知をパーソナライズ
シービーツー(CB2)は2018年に最初のSMSチャネルを開設し、顧客からの問い合わせや調査用に使用してきた。今年のホリデーシーズンの戦略は、顧客の同社へのエンゲージメントと商品への関心に基づいてテキストメッセージの通知をパーソナライズすることだと、同社のブランドマーケテイング担当ディレクターを務めるリズ・リーブズ氏は米モダンリテールに語った。
「当社はこの2年間で、SMSへの投資を推進し、自社ブランドのストーリーを示して、時間をかけてエンゲージメントを築き上げる機会を見いだした」とリーブズ氏は述べている。
同社は、今年になってその戦略が機能しだしたと語る。同社のSMSプロバイダのアテンティブ(Attentive)によれば、ブラックフライデーからサイバーマンデーまでの期間にシービーツーのSMS顧客リストは昨年の同時期よりも30%近く増えた。またSMSからの売上も、新規および既存の顧客にわたって昨年よりも24%増えたとしている。
リーブズ氏は、SMSで顧客をエンゲージさせ続けるよう、シービーツーはSMSサブスクライバーのリストに含まれる顧客に対して、2021年のホリデーシーズンにどのような種類のプロモーションや製品アラートを受け取ることを希望するか、選択肢付きの質問を多く問いかけるようにしたと語る。「当社はそれぞれの顧客からの応答、たとえばホームエンターテイメントやギフトのコンテンツへの関心などに基づいてキャンペーンをセグメンテーションする」と同氏は述べている。
シービーツーは10月からはじまる各ホリデーの特売をプロモートするためSMSを使いはじめ、その対象には季節ごとの装飾品やエンターテイメント商品も含まれている。12月初頭には、SMSキャンペーンの焦点は締め切りについての配送日のメッセージを送ることに切り替わった。「最近、注文から2日での配送が可能になったので、いまそれをプッシュしている」とリーブズ氏は述べる。年末商戦のあとでは、シービーツーのSMSは在庫のある商品や「店舗内ショッピング、オンライン購入・店舗受け取りを促進する」ことが中心になると、同氏は述べている。
小規模ブランドのSMS活用事例
小規模なブランドもまた、この年末、SMSの促進から利益を受けていると語る。D2Cのウォーターボトルの新興企業であるハイドロジャグ(HydroJug)でマーケティングコーディネーターを務めるミッシェル・セルナ氏は、同社がブラックフライデーの週末にSMSでの収益が急増したと語る。週末の売上の約30%はSMSでの急増によるものだと同氏は述べている。同社はSMSマーケティングテクノロジーのポストスクリプト(Postscript)とのパートナーシップにより、ホリデーシーズンのショッピングイベントにおいてサイト全体で30%、一部商品は50%の割引キャンペーンを行った。「当社のSMSキャンペーンでは、『ハイドレーションをお手頃価格で贈る』ことをプロモートするのに重点を置いた」と同氏は述べている。
それ以後、ハイドロジャグは12月全体を通してコンバージョンを伸ばすために尽力している。同ブランドは2019年後半にSMSを使いはじめ、それ以来「新規顧客が早めにSMSにオンボーディングするよう働きかけている」とセルナ氏は述べている。
ほかのマーケターが感謝祭に動いた(※通常、感謝祭当日は休日となる)のと同様に、同社も(感謝祭翌日の)ブラックフライデーのSMSプロモーションを感謝祭当日に送ることを決定した。「私は限定版の補充について話題を広めるため、感謝祭当日に2回メッセージを送った」と同氏は述べている。同社はサイバーウィーク(11月第4週の週末)を通してこの割合を維持し、その週末の日曜日には何通かの「最終特売」カウントダウンクロックのテキストを送信した。
同ブランドにより、顧客が今月により多くのテキストを期待するよう条件付けされたことから、「当社はクリスマスの週までこの調子を維持する」と同氏は述べる。「当社は配送のデッドラインや最終段階でのギフトのオプションについても、率直にテキストを買い物客に送付する」。ハイドロジャグは12月第3週、SMSを使用して、ブランドアンバサダーのボトルスリーブコラボレーションなど、新しい限定版のリリースをプロモートする。クリスマス前の最後の週(12月第4週)には、eギフトカードのプロモートに切り替えると、同氏は述べている。
要求される微妙なバランス
しかし、これらの種類のキャンペーンには非常に微妙なバランスが要求される。ハイドロジャグは1日に何回も顧客にテキストを送付することで成功を収めたと語るが、メッセージを顧客に送りすぎたとして非難を受けることになったブランドもある。たとえばファストファッションブランドのファッションノバ(Fashion Nova)は、感謝祭とブラックフライデーの2日間、何通ものテキストを送信したために非難を受けた。同社は昨年も、Covid-19の給付金小切手をファッションノバの注文に使うようテキストで顧客に送信したことで悪評を受けることになった。
それでも、SMSがブランドでテストに広く使用されるチャネルであることに変わりはない。これは、SMSが電子メールなどと比べて比較的未開拓のチャネルであるためだ。ブランディング代理店のザファウンデーション(The Foundation)でeコマーススペシャリストを務めるアドリアナ・ウィリアムズ氏は、衣類の手入れ道具ブランドのスチーメリー(Steamery)、天然石けんブランドのソーダー(Soeder)、炭酸水用機械メーカーのアールケ(Aarke)などのクライアントにとって、SMSが今年のプロモーションの大きな部分を占めていたと語る。ウィリアムズ氏は、2021年4月にこれら3つのブランド向けにテキストメッセージによるマーケティングを活用しはじめた。しかしこの数カ月で、ザファウンデーションはSMSによるギフトガイドを作成しはじめ、顧客が簡単にショッピングを行えるようにした。「これらのブランドは3つとも、プロモーションについてのメッセージを送るたびにコンバージョンが明白に急増した」とウィリアムズ氏は述べている。
消費者が複数のブランドから毎日テキストを受け取るとき、ブランドの顧客の好みに合わせてSMSをセグメンテーションすることが重要であることに気づいたと、ウィリアムズ氏は語る。ザファウンデーションが自社のブランド一覧について見出した有効な方法のひとつは、「メールのキャンペーンから除外してよい」SMSサブスクライバーのリストを維持することだと、ウィリアムズ氏は述べている。これにより、同じ日に複数のテキストメッセージとメールを同じサブスクライバーに送付してしまうことを回避できる。
「たとえばアールケの顧客は、画像があるメッセージを好む。ただし、そのメッセージが明確に特売の話をしている場合は別だ」と同氏は言及している。もっとも良い結果を収めたメッセージのひとつは、最近送られた、アールケの炭酸水製造機械を並べた「家族写真」だったと、同氏は述べている。
急成長しているチャネル
シービーツーやハイドロジャグと同様に、ザファウンデーションもホリデーシーズンのショッピングのデッドラインを顧客に思い出させ、早めにショッピングをはじめてもらうためにテキストメッセージによるキャンペーンを使用している。
「同時に当社は、放置されたカートや、参照中に放置されたセッションに対する自動アラートをトリガーするまでの時間も短縮した」とウィリアムズ氏は述べる。「急ぎの雰囲気にするため、4時間から1時間に短縮した」。
より多くの消費者がブランドに対してホリデーシーズンの特売や、配送の遅延の通知を期待している現在、このような通知を迅速に行うためSMSは有効だと、シービーツーのリーブズ氏は語っている。
同氏は次のように述べている。「全体として、SMSは当社の構成のうちもっとも急速に成長しているチャネルのひとつだ。このため、当社は将来的にSMSをどのように使用するかを積極的に検討している」。
[原文: How brands are incorporating text messages into their holiday marketing strategies]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:長田真)
Image via CB2