夏が到来し、OOH(Out of Home:屋外)キャンペーンが盛んになってきた。
ここ数年、新興ブランドはオフラインでのブランド認知度を高める手段として、OOH広告を活用してきた。特に夏のあいだは、人々が自宅よりビーチや公園、空港などで過ごす時間が増えるためだ。
インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)によれば、OOHへの支出は公式に2019年の水準に戻り、2023年には82億ドル(約1兆1800億円)に達する見込みだ。オーダーメイドでローカライズされたキャンペーンを構築するオプションが増えたこともあり、今年OOH広告をテストする小売ブランドは増えている。
しかし、このチャネルを使用する業者が増えるにつれ、そこで目立つことも難しくなってきた。チェンバレンコーヒー(Chamberlain Coffee)がウォルマート(Walmart)限定商品を訴求するために学園都市に掲出した広告看板、プライマルキッチン(Primal Kitchen)のビーチバナー、ウェイ(Ouai)の旅行に特化したキャンペーンなど、単に主要都市に広告看板を設置するだけでなく、その先を見据える企業が増えている。これらの企業によると、定番の広告と違うものを提示することで、ブランドへの認知度を高め、新しいタイプの顧客を取り込むことができる。
こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトです
夏が到来し、OOH(Out of Home:屋外)キャンペーンが盛んになってきた。
ここ数年、新興ブランドはオフラインでのブランド認知度を高める手段として、OOH広告を活用してきた。特に夏のあいだは、人々が自宅よりビーチや公園、空港などで過ごす時間が増えるためだ。
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インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)によれば、OOHへの支出は公式に2019年の水準に戻り、2023年には82億ドル(約1兆1800億円)に達する見込みだ。オーダーメイドでローカライズされたキャンペーンを構築するオプションが増えたこともあり、今年OOH広告をテストする小売ブランドは増えている。
しかし、このチャネルを使用する業者が増えるにつれ、そこで目立つことも難しくなってきた。チェンバレンコーヒー(Chamberlain Coffee)がウォルマート(Walmart)限定商品を訴求するために学園都市に掲出した広告看板、プライマルキッチン(Primal Kitchen)のビーチバナー、ウェイ(Ouai)の旅行に特化したキャンペーンなど、単に主要都市に広告看板を設置するだけでなく、その先を見据える企業が増えている。これらの企業によると、定番の広告と違うものを提示することで、ブランドへの認知度を高め、新しいタイプの顧客を取り込むことができる。
主要都市以外の可能性の検討
チェンバレンコーヒーはこの夏、はじめて全国レベルでOOH広告に参入した。同社は昨年夏に700万ドルを調達し、2022年秋にはCMOとしてリズ・エイハーン氏を迎え入れた。実店舗への参入により、同社はより若い層のオーディエンスに的確にリーチしようとしている。
D2Cブランドである同社は4月、ウォルマートの4100店舗でRTDドリンク(Ready to Drink:すぐ飲める)缶を発売し、5月にはそれに伴うOOHプロモーションを行った。そのために同社は、特に主要な市場における大学周辺や下町の学生や若い専門家をターゲットに据えた。たとえば、ヒューストン大学(University of Houston)やアリゾナ州立大学(Arizona State University)の近くのデジタルキオスクで広告を配信し、徒歩での往来が多いダラスのアメリカン航空(American Airlines)アリーナの近くには広告看板を出した。
「我々の主なターゲットはZ世代であり、Z世代向けのコーヒーと紅茶のブランドを作り上げようとしている」と、エイハーン氏は米モダンリテールに語った。チェンバレン社は意図的に、ロサンゼルスやニューヨークのような大きな市場ではなく、小規模の都市を選んだ。これらの都市は、特に夏のあいだにOOHキャンペーンが多くなる傾向があるとエイハーン氏は述べる。
「メッセージを伝える時間はわずか数秒間しかない。そのため、「さっと飲める美味しいコーヒー」とか「美味しいコーヒーを簡単に」などのごくシンプルなメッセージだけを使用している」と同氏は述べた。
注目すべき点として、同社は創業者でインフルエンサーでもあるエマ・チェンバレン氏を登場させ、ウォルマートで販売していることを広告看板で目立たせる機会をうかがっていた。同ブランドは、ウォルマートの店舗が多く集中している地域、つまり1カ所ではなく、より多くの店舗に広告を出したかったのだ。クァンメディアグループのCEOを務めるブライアン・ラッパポート氏は、OOHキャンペーンについてチェンバレンコーヒーと協力してきたが、差別化要因のひとつになるのは、こうした小規模な市場でウォルマートの買い物客に的を絞ってきたことだと語った。「ウォルマートの駐車場をターゲットとし、駐車場のバナーを買い取った」と同氏は述べた。「そうすることで、人々が店舗に入ってこのコーヒーを目にした人々の頭には、ブランド名とチェンバレン氏の顔が心に浮かぶようになる」。
この試験的な広告は、これまでのところ成功している。チェンバレンコーヒーは、キャンペーンを実施した市場で、RTD商品ラインの売上が5%増加した。このキャンペーンにより、オンラインでのタグや、ファンが撮影した広告看板の写真も増加した。同ブランドは、秋に人々が大学キャンパスに戻ってくる時期に合わせて、広告看板掲示の第2弾を行う予定だ。
地域密着型のアプローチ方法で関連性を高める
地域密着型広告を専門とするOOHメディア会社、ケバニ(Kevani)の創業者であるケビン・バータニアン氏は、OOHが静的なものである必要はないという点について同意見だ。ケバニは今夏、スマートウォーター(Smart Water)や、トポチコ(Topo Chico)、ジャックダニエル(Jack Daniel’s)、コカ・コーラ(Coca‑Cola)などのキャンペーンを手がけた。同氏は、夏の期間にOOHへの出稿が増える傾向がある飲料ブランドにおいては、特にこれが当てはまると同氏は述べる。
「人々は従来よりも出歩くようになっているため、広告を市場に合わせてローカライズすることが重要だ」とバータニアン氏は述べる。ときには、地域によって「やあ、ロサンゼルス(Hey LA)」や「やあ、マイアミ(Hey Miami)」といった言葉を表示するだけでいいと同氏は付け加えた。しかし、AIの使用により、ニュースのサイクルやイベントに応じてデジタルOOH広告の表示を文脈に合わせることができるようになってきている。「AIにより、ブランドはローカライズされたスクリプトを迅速に生成して、人々の注目を的確に集められるようになる」と同氏は説明する。
パントリーブランドのプライマルキッチン(Primal Kitchen)は5月、「マヨモーメント(Mayo Moment)」というキャンペーンを開始した。これはOOH広告、体験的なアクティベーション、インフルエンサー、TikTokのトークショーを組み合わせたものだ。2015年に設立された同社は、現在では2万を超える小売店舗で販売されており、流通量は昨年より25%増で推移している。このため、同社は調味料メーカーとして、健康食品の買い物客以外にもブランドの認知を広めようとしている。同社でマーケテイング担当バイスプレジデントを務めるアナ・ゴッシュ氏は、「身近でありながら思考を刺激する、すべてが本物の食材を中心としている」クリエイティブを作り上げるのが構想だったと語った。
OOHディスプレイにおいて、同社はベニスビーチやジャージーショアのような夏の観光地を明確にターゲットとしている。たとえば、同ブランドの遊び心のある広告看板のひとつは、「ニセモノだらけのロサンゼルスにホンモノを見つけた!(Hey, look, something in LA that’s not fake)」という文字とともに、同社のケトフレンドリーなアボカドオイルのマヨネーズの画像を見せるというものだ。この広告に合わせたサンプリングのアクティベーションを近隣で実施し、プライマルキッチンの宣伝カー、マヨモビール(Mayo Mobile)が12時間で1000個以上のサンプルを提供した。
同社は、キャンペーンの次の段階として、オーガニックの無糖ケチャップを使った同様のディスプレイをバーベキューの時期に合わせて実施する予定だとゴッシュ氏は述べた。これには、7月4日の独立記念日の週末にマリブとマンハッタンのビーチのライフガードチェアのスポンサーになることも含まれており、「バンズにもっといいものを(your buns deserve better)」というメッセージを掲げている。反対側エリアのジャージーショアでも、7月4日の連休中の5日間にわたり、ビーチ上空を飛ぶ飛行機にこのスローガンが表示される。同社はこのキャンペーンによる売上高を公表していないが、キャンペーン開始以来ソーシャルエンゲージメントは増え続けていると述べた。
@javiluna Your buns really do deserve better 😎 @Primal Kitchen #primalkitchen #ad ♬ original sound – Javi Luna
音楽アーティスト、ジャヴィア・ルナがプライマルキッチンの「バンズにもっといいものを(your buns deserve better)」というメッセージとともにサンプリングをする動画
実際に、旅行シーズンが本格化するなか、使用頻度が少ない空間にOOHを配置しようとする企業は増え続けるだろうと、クァンのラッパポート氏は付け加える。「空港は最近になって広告が爆発的に増えている。特にラガーディア空港のような新しいターミナルでは顕著だ」と同氏は説明した。航空会社もまた、このプロモーション方法に乗り出している。ヘアケアブランドのウェイは7月、旅行をテーマにしたセントバーツ(St. Barts)の商品ラインを発売し、ジェットブルー(JetBlue)の国内線全便のスポットを買い取り、映画やショーがはじまる前にウェイのプロモーションを流している。
「ブランドは従来にも増して、現地市場や小売での販売状況に応じて、OOH広告をカスタマイズできるようになった」とラッパポート氏は述べた。
[原文:How brands are getting creative with summer out-of-home campaigns]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Chamberlain Coffee