D2C下着ブランドのパレード(Parade)は、かつてビクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)が支配していた分野に新しく挑戦している新規ブランドのひとつだ。だが、パレードのようにZ世代の注目を集めたブランドはほとんどない。
D2C下着ブランドのパレード(Parade)は、かつてビクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)が支配していた分野に新しく挑戦している新規ブランドのひとつだ。カルチャーにおけるビクトリアズ・シークレットの重要性が低下するなか、無数のD2Cブランドが市場シェアを獲得しようとしている。だが、パレードのようにZ世代の注目を集めたブランドはほとんどない。
パレードは、2019年10月にローンチしてからまだ2年も経っていないが、100万枚以上の下着が売れている。同社は2020年だけで1000万ドル(約11億円)以上の収益を上げており、それはもっぱら消費者に直接販売するeコマースサイトからのものだった。同社の広報担当者によると、2021年の年間売上高は4倍になる見込みだという。
カテゴリーの拡大と収益性の達成
その成長を加速させるために、創業者でCEOのカーミ・テレズ氏は、同社のチームはふたつのことに集中していると言った。それは、カテゴリーの拡大と収益性の達成だ。まずカテゴリー拡大に関しては、Z世代のあいだでヒットすることを期待して、ブラレット(ノンワイヤーな軽量かつ快適なブラジャー。デザインの一部がファッションとして見られることを念頭に設計されたものも)ファッションを発売した。同社は4月下旬に1000万ドルの最新の資金調達ラウンドを完了し、2300万ドル(約25億円)の評価額に達した。
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ラウンドをリードしたのはマヴェロンべンチャーズ(Maveron Ventures)で、彼らはオールバーズ(Allbirds)やドールズキル(Dolls Kill)などのブランドに投資している。ヴァイスべンチャーズ(Vice Ventures)、シュラグベンチャーズ(Shrug Ventures)、グレイクロフト(Greycroft)、カシウス(Cassius)、レアラーヒップー(Lerer Hippeau)を含む5つのベンチャーキャピタルもこのラウンドに参加した。しかしテレズ氏が、VCの支援を受けるブランドの多くが採用している急成長戦略とは対照的に、収益性の達成と維持に何よりも重点を置いていると述べていることは特筆すべきだろう。彼女は、ブランドが利益を上げたあとに集まる金額を、さらに大きくすることに興味があると語った。
テレズ氏は、これまでの同ブランドの急速な成長は、オンラインと対面の両方でコミュニティを育み、ビクトリアズ・シークレットの代替品を探している若者たちに適切な場所とタイミングで製品を提供することが大きな要因となっていると考えている。
インスタグラム中心のSNS戦略
同ブランドはオンライン、主にインスタグラムを通じて、60万人のフォロワーを持つ女優ジュリア・フォックスのような大物セレブから、わずか数千人のフォロワーを持つマイクロインフルエンサーまで、さまざまな規模の人物たちからのブランドに対する無償のサポートを活用してきた。パレードは創立の年に6000人以上に無料サンプルを提供するメッセージをインスタグラムで送付。同ブランドは特に女性とノンバイナリーを自認する人々に接触し、それらのグループ内における規模と人種の多様性を最大化することを優先した。
インスタグラム上でパレードがタグ付けされている画像は、何千枚も投稿されている。そのなかには、ブランドからの呼びかけなしで、ファンたちが自ら投稿したものも多い。
パレードは5月1日に最新の対面イベントをマイアミで開催した。それは、イベントスペース「フリーホールド(Freehold)」の外側に設立された小さなアイスキャンディのポップアップ販売スタンドの形を取った。アイスキャンディーを配ったり、ブランドを宣伝したり、割引コードを配ったりした。彼らはまた、屋外マーケティングも活用しており、ニューヨーク市とロサンゼルスというふたつの主要市場でブラレット・コレクション用の看板を設置しているほか、ブランド発足以来2カ月ごとにバス停広告といった屋外広告を出している。さらに、最近ローンチしたTikTokアカウントには1万人のフォロワーがおり、ブランドやユーザー生成コンテンツを紹介している。
「革命には草の根活動が必要」
「下着のように人々の気持ちがこもったカテゴリーに革命を起こすには草の根運動が必要だと考えていた。私たちは何のPRもせずコミュニティに依存して世界中にパレードについて伝えた」とテレズ氏は語り、今後のビジネス上の意思決定の参考として、オンラインコミュニティからのフィードバックを信頼していると付け加えた。「2〜3年間だけ意味を持つようなブランドを作るのは簡単だが、パレードを10年間継続して文化的に重要なブランドにするには、私たちのコミュニティに耳を傾けることから始まり、コミュニティに耳を傾けることで終わる」。
ビクトリアズ・シークレットのような「セクシー」になることは、下着ブランドとしてのパレードを創始するときに意図しなかった、とテレズ氏は言った。彼女は、ビクトリアズ・シークレットが見せるような、男性の視点を意識して作られたプロダクトや広告を避けるために「アメリカの下着体験を書き直すことをしたかった」と話した。
サードラブ(ThirdLove)やエアリー(Aerie)といった下着ブランドの人気が高まっている一方で、ビクトリアズ・シークレットは依然として下着業界で支配的な勢力だ。同社の市場シェアは16%で、ほかのどのブランドよりも高い。ちなみに、パレードの20万人の顧客は市場の約0.5%を占めている。2月にビクトリアズ・シークレットの親会社のLブランズ(L Brands)が発表したところによると、ビクトリアズ・シークレットのデジタル売上は前年同期比で33%伸び、20億ドル(約2210億円)の収益を上げた。これは同ブランドにとって、前四半期に比べて大幅な改善である。ちなみに、同ブランドの2020年8月期の売上は10億ドル(約1100億円)弱だった。
巨大ブランドは若者を理解してない
しかし、Z世代におけるパレードの人気と短期間での目覚ましい成長は、同ブランドを市場のなかで良いポジションに位置づけている。
「パレードは成長を続けており、インクルーシブネス(サイズ・人種といった面で多様な属性を受け入れること)を通じて顧客との強いつながりを生み出している」と、成長コンサルタント会社トゥー・ニル(Two Nil)のマネージング・ディレクター、アンドレ・アルタチョ氏は言う。「(下着)カテゴリーにはさまざまな選択肢があるが、パレードが成功したのは成長を続けるための基盤を持っているからだ。(基盤とは)コミュニティだ」。
テレズ氏は、ビクトリアズ・シークレットのような大企業は、究極的には現代の若い顧客が何を求めているのかを理解していないと言った。
「単一の美学を推進する巨大ブランドの時代はとっくに過ぎ去った」と彼女は言った。「彼らは、下着という、人々がもっとも親密な感情を持つ衣服カテゴリーが、消費者が一番、自己表現と快適さを渇望するカテゴリーであることを理解していなかった」。
[原文:How underwear brand Parade reached $10 million in revenue in 2020]
DANNY PARISI(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)