2016年2月15日、米高級百貨店チェーン、バーニーズ・ニューヨーク(Barneys New York)が、マンハッタンのチェルシーに旗艦店をオープンした。この店舗は7番街にあり、ひとつの区画をほぼ占拠している。
今回の移転は、同ブランドにとって、久しぶりの帰郷のようなものであった。マンハッタンのチェルシーは、1923年の設立当初に使用していた場所だからだ。戻ってくるのは、20年前に同地の店舗を閉店し、マディソン街に移って以来だという。
また、この帰郷に伴い、モバイル、ソーシャルメディアコンテンツ、オンライン注文からオフラインでの配達や受け取りなど、デジタル部門にも改革を行っている。
このバーニーズ・ニューヨークの新たな旗艦店は、もともとこの場所にあった建物を再利用しているため、土地の歴史と最新技術が繊細なバランスで成り立っている。最先端のデジタルを駆使するバーニーズの新たな旗艦店には、どのようなことが期待できるのだろうか。
2016年2月15日、米高級百貨店チェーン、バーニーズ・ニューヨーク(Barneys New York)が、マンハッタンのチェルシーに旗艦店をオープンした。この店舗は7番街にあり、ひとつの区画をほぼ占拠している。
今回の移転は、同ブランドにとって、久しぶりの帰郷のようなものであった。マンハッタンのチェルシーは、1923年の設立当初に使用していた場所だからだ。戻ってくるのは、20年前に同地の店舗を閉店し、マディソン街に移って以来だという。
また、この帰郷に伴い、モバイル、ソーシャルメディアコンテンツ、オンライン注文からオフラインでの配達や受け取りなど、デジタル部門にも改革を行っている。
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このバーニーズ・ニューヨークの新たな旗艦店は、もともとこの場所にあった建物を再利用しているため、土地の歴史と最新技術が繊細なバランスで成り立っている。最先端のデジタルを駆使するバーニーズの新たな旗艦店には、どのようなことが期待できるのだろうか。
店舗がアプリと連携
コンテンツ提供や店舗案内を行うため、バーニーズは屋内測位システム「iBeacon(アイビーコン)」を搭載した、アプリプラットフォーム「The Window(ザ・ウィンドウ)」をローンチ。旗艦店のオープン初日から、そのアプリを起動すると、2つの選択肢が現れるようになった。ひとつ目はコンテンツ更新を知らせるプッシュ通知の許可で、2つ目は顧客がバーニーズ店舗の近く、もしくは店内にいるかどうかを確認するための位置情報の使用許可だ。
季節ごとのカタログ、デザイナーのインタビュー記事や動画などを含むデジタルコンテンツも、バーニーズの出版部門が編集する紙のカタログ「The Window」からアプリへ配信される。また、チェルシーの旗艦店のオープンを祝うため、現在バーニーズはユーザーに対し、オススメのレストランやスポットが書かれたニューヨークの観光ガイドも配信している。

ビーコン通知の許可を確認するアプリ「The Window」の画面
店内に入ると、iBeaconが導入されたアプリは、より詳しい情報をユーザーに提供。ユーザーの買い物リストや欲しいものリストのなかから、その商品の在庫があるかどうかを教えてくれる。最近では、「The Window」に紹介された商品もオススメしてくれるという。
バーニーズの目論見と現状
バーニーズのデジタル部長、マシュー・ウールシー氏は、「もっとも重要な到達地点はモバイルだ」と語る。「我々は、オンラインとオフラインで顧客とつながるために、顧客データを利用できたことを誇りに思う。これにより、店舗やWebサイトにおいて、より個別化された一貫したエクスペリエンスを届けることができる」と語った。
バーニーズによるiBeaconの利用には、高級小売企業が最新テクノロジーを駆使して買い物客を取り込み、店舗内外で個別化された特別なエクスペリエンスを潜在顧客にも届けたいという戦略が読み取れる。だが、バーニーズのモバイルアプリのダウンロードや利用は、現状顧客頼みになっている。プッシュ通知や、居場所情報の使用許可も同様だ。
リサーチ企業L2による2015年度のオムニチャンネルに関するデータでは、デジタルシンクタンクが調査対象とするブランドのうち、ビーコンシステムを利用しているのは8%。「様子見」のブランドは31%で、10%のブランドはビーコンシステムの利用を検討していないという。
個別のエクスペリエンスを提供
スマートフォンによるビーコンシステム以外でも、買い物客のエクスペリエンスをより個別化し、向上させるためにバーニーズの販売スタッフ全員がiPadを携行。頻繁に来訪する顧客も、店舗やオンラインでの購入履歴を参照することによって識別することができる。
また、買い物客は、Apple社が提供する決済サービス「Apple Pay」を利用できるようになった。販売スタッフのiPadを通して、直接モバイルで決済することも可能だ。
オンライン顧客やモバイル顧客をスマートフォンで識別することにおいて、バーニーズはほかのどの大手小売企業よりも先に進んでいる。購買体験を、顧客それぞれのニーズに特化したものにしようとしているのだ。L2によると、対象ブランド企業の41%が、3年から5年をめどにモバイル顧客の識別方法を導入する考えだという。
バーニーズのCOO(最高執行責任者)、ダニエラ・ヴィタレ氏が、旗艦店のオープン時に記した発表によると、この店舗の目的は、最新技術とスタッフ、そして顧客を融合させることだという。この目的は、「Barneys.com」の再構築と、モバイルにおける「The Window」の応答速度を向上させることによって補完された。
Amazonを目指すわけではない
英通販サイト「ネッタポルテ(Net-A-Porter)」やAmazonのように、バーニーズもマンハッタンとブルックリン在住の顧客を対象に当日配達を開始した。正午までにオンラインで注文をすれば、旗艦店から当日中に届けられる。
L2によると、速達を望む顧客は32%で、無料配達を望む顧客が68%となり、多くは無料配達を好むという。バーニーズでは、ニューヨーク州内の当日配達であれば、通常25ドル(2800円)を徴収する。
バーニーズのデジタル部長、ウールシー氏は、バーニーズはAmazonと同じようなサービスを提供する必要はないと話している。高級小売企業として、顧客の期待を向上させることにのみ注力しているのだ。
「いまのラグジュアリーブランドは、ブランドとして戦略的投資ができる位置にいる」と、ウールシー氏は話す。「我々の目標は、顧客のさらなる期待に答えていくことだ」。
Hilary Milnes(原文 / 訳:BIG ROMAN)
Image via Phillip Pessar