アディダス(Adidas)は、ほかのスポーツウェアメーカーと同様、より多くの顧客を卸売パートナーではなく、自社の店舗やWebサイトに誘導したいと思っている。3月10日に行われた投資家向けのバーチャルミーティングでアディダスは、2025年までに売上の50%をD2Cで構成するという、成長戦略を明らかにした。
アディダス(Adidas)は、ほかのスポーツウェアメーカーと同様、より多くの顧客を卸売パートナーではなく、自社の店舗やWebサイトに誘導したいと思っている。
3月10日に行われた投資家向けのバーチャルミーティングでアディダスは、2025年までに売上の50%をD2Cで達成するという、新たな戦略的成長計画を明らかにした。これを実現するために同社は、データ解析分野への投資や、ロイヤルティプログラムの会員獲得促進、そしてサッカー、ランニング、トレーニング、アウトドア、アスレジャーウェアという5つの主要カテゴリーの製品拡充と、販売戦略への注力を計画している。
これは、アディダスにとって最大の競合相手であるナイキ(Nike)とアンダー・アーマー(Under Armour)が採っている戦略でもある。しかしアディダスは、特に米国に拠点を置くこれら2社の競合よりもこの1年で大きな打撃を受けており、この遅れを取り戻す必要がある。また、アディダスが成長分野として挙げている、アウトドアやアスレジャーなどのカテゴリーへの投資も、競合他社と比べてまだ積極的にはできていない。
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アディダスは2020年、純売上が16%減少したと報告しており、当期純利益も78%減少している。一方、eコマースの売上は53%増加。欧州を主戦場とするアディダスは、昨年同地域では米国よりも厳しい外出禁止令が出されていたこともあり、ほかのスポーツウェアメーカーよりも深刻な打撃を受けた。比較のために書いておくと、アンダー・アーマーは2020年の売上が15%減少したと報告し、ナイキは、通年決算がまだ出ていないものの、2020年12月の決算報告では、実際には売上が9%増加していた。なお直近の四半期、ナイキとアンダー・アーマーのeコマース売上は、それぞれ84%と25%増加している。
アディダスの製品ラインの現状
市場調査企業、NPDグループの上級アナリスト、マット・パウエル氏によると、アディダスはここ数年、米国内でのマーケットシェアをナイキに奪われてきたという。アディダスが米国でマーケットシェアを獲得し損ねている要因の一部に、ナイキが優位に立つ、スニーカー市場で戦ってきた点が挙げられる。NPDの調査によると、米国内における昨年のスニーカー売上トップ10に入ったアディダスの製品は、たったひとつだったという。
アディダスは2020年の投資家向け報告書で、フットウェア上位3つのフランチャイズ、具体的にはウルトラブースト(Ultraboost)、プレデター(Predator)、スーパースター(Superstar)が、2020年のフットウェア売上の34%を占めたと発表した。パウエル氏は、特にウルトラブーストシリーズについて、「ウルトラブーストと、過去の製品とを差別化するための十分な努力がなされているとは思えない。これまでのバージョンアップも、非常にマイナーなものだ。市場は、もっと新鮮なものを求めていると思う」と述べた。
ジェーン・ハーリ・アンド・アソシエイツ(Jane Hali & Associates)の小売リサーチアナリストであるジェシカ・ラミレズ氏は、アディダスは競合他社と比べ、アウトドア向けジャケットや用品、そしてアスレジャーといった消費者が求めているものを追加し、ナイキのACGのようなラインを構築するのに苦戦しているように見えると述べる。「アディダスはパンデミックのなかで、消費者がいま関心を寄せているものに、十分なスピード感を持って対応していないと思う」。
アディダスはD2C販売を促進するため、具体的にどのように品揃えを変更するか、成長戦略の発表のなかでほとんど説明しなかったが、「スポーツから生み出されているが、普段の生活スタイルにも取り入れられる」製品への投資を強化すると述べている。少なくともアディダスでは、これがアスレジャー市場に対する答えとなっているようだ。
なお競合他社にないアディダスの強みは、ビヨンセ(Beyonce)のアイビー・パーク・ライン(Ivy Park Line)をはじめとする、幅広いセレブリティとのパートナーシップだ。有名人とのパートナーシップは、今後も「ライフスタイル面で消費者を魅了するうえで重要な役割を果たす」とアディダスは述べている。しかしアスレジャーに関しては、ナイキだけではなく、ルルレモン(Lululemon)、ターゲット(Target)、コールズ(Kohl’s)など、最近になってアスレジャーの製品ラインを発表した小売企業は多数存在し、アディダスはこれらと競争しなければならない。
デジタルへの投資
発表した新カテゴリーへの投資以外にも、アディダスはデジタル領域に積極的に投資することで、D2C販売を促進するつもりでいる。同社は、2021年に1000人以上の技術社員を雇用する予定で、具体的な戦略については多くを語らなかったものの、より多くのデジタル機能を店舗に導入することに注力すると述べている。
またアディダスは、2025年までにロイヤルティプログラムの会員数を、現在の1億5000万人から3倍超の5億人にすることを目指している。ちなみにナイキは、2019年にナイキプラス(Nike plus)の総会員数が1億7000万人と発表している。
ラミレズ氏は「アプリやWebサイトを店舗に統合するという点では、アディダスよりもナイキやルルレモンの方が優れていると思う」と話す。たとえばナイキは、ナイキプラスのアプリで直接製品を予約・購入できるようにしているが、アディダスにも同様にWebサイトと店舗の連携を、強化して欲しいと考えている。
「アディダスがいまからゲームに参加するのはやや遅いかもしれないが、起ころうとしていることにはワクワクしている」とラミレズ氏は語った。
[原文:How Adidas is planning for DTC to make up 50% of its revenue by 2025]
ANNA HENSEL(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:村上莞)