8月が終わり、上場企業各社が規則に従って自社の通信簿を一斉に発表しし終えたところだが、そこで公開される内容は、一般的に市場全体の課題(とオポチュニティ)のバロメーターであると解釈される。
8月第1週には、アドテク界に起きたポストパンデミック時代のゴールドラッシュで注目を集めるデジタル広告測定界の超大手、ダブルベリファイ(DoubleVerify)とインテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science、以下IAS)が、市場全体のトレンドを象徴しているとも見られる、いくつかの発表を伴った業績公開を行った。
今は誰もが変化に対する調整を迫られる流動的な時代だ。そのなかにあって広く認められているのが、ダブルベリファイとIASの両社が、2024年こそはサードパーティCookieの廃止が実現すると考えている、という見方だ。
つまり、最大手のアドテクベンダーにはこの状況に納得していない企業もあるものの、アドテクの「共通通貨」に関する猶予はもうないだろう、ということだ。その一方で、この2社はそれぞれのやり方で進化を始めている。
アドベリフィケーションからメディアアクティベーションへ
まず、両社の最新の四半期決算発表を見てみよう(以下参照)。その結果を受け、2023年第2四半期の決算発表のほぼ一週間後、ダブルベリファイの時価総額は約55億ドル(約7700億円)に、IASは23億ドル弱(約3220億円)になっている。
- ダブルベリファイの第2四半期売上高は1億3370万ドル(約187億2000万円)で、前年同期比22%増。通期見通しは5億5700万ドル~5億6900万ドル(約780億円~約800億円)、EBITDAは1億7100万ドル~1億7900万ドル(約240億円~約250億6000万円)。
- IASの第2四半期売上高は1億1370万ドル(約159億2000万円)で、前年同期比13%増。通期見通しは4億5900万ドル~4億6500万ドル(約642億6000万円~約651億円)、EBITDAは1億4900万ドル~1億5300万ドル(約208億6000万円~約214億2000万円)。
追って開催された決算報告会では、サードパーティCookieなどの確実なデータシグナルやIDFAなどのIDがますます乏しくなっていくなかで、どちらも創業の起源であるアドベリフィケーション企業から、メディアアクティベーションへと軸足を移している様子が見られた。
報告内容によると、ダブルベリファイの第2四半期売上高のうち7790万ドル(約110億円)はメディアアクティベーションによるものだ。これは前年同期比で29%増加しているだけでなく、同社によると広告主からの収入の55%以上を占める。ダブルベリファイがメディアアクティベーション強化を図っていることは、第2四半期の発表に1億2500万ドル(約175億円)でサイビッツ(Scibids)を買収する計画が含まれていることにも明らかだ。
8月が終わり、上場企業各社が規則に従って自社の通信簿を一斉に発表しし終えたところだが、そこで公開される内容は、一般的に市場全体の課題(とオポチュニティ)のバロメーターであると解釈される。
8月第1週には、アドテク界に起きたポストパンデミック時代のゴールドラッシュで注目を集めるデジタル広告測定界の超大手、ダブルベリファイ(DoubleVerify)とインテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science、以下IAS)が、市場全体のトレンドを象徴しているとも見られる、いくつかの発表を伴った業績公開を行った。
今は誰もが変化に対する調整を迫られる流動的な時代だ。そのなかにあって広く認められているのが、ダブルベリファイとIASの両社が、2024年こそはサードパーティCookieの廃止が実現すると考えている、という見方だ。
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つまり、最大手のアドテクベンダーにはこの状況に納得していない企業もあるものの、アドテクの「共通通貨」に関する猶予はもうないだろう、ということだ。その一方で、この2社はそれぞれのやり方で進化を始めている。
アドベリフィケーションからメディアアクティベーションへ
まず、両社の最新の四半期決算発表を見てみよう(以下参照)。その結果を受け、2023年第2四半期の決算発表のほぼ一週間後、ダブルベリファイの時価総額は約55億ドル(約7700億円)に、IASは23億ドル弱(約3220億円)になっている。
- ダブルベリファイの第2四半期売上高は1億3370万ドル(約187億2000万円)で、前年同期比22%増。通期見通しは5億5700万ドル~5億6900万ドル(約780億円~約800億円)、EBITDAは1億7100万ドル~1億7900万ドル(約240億円~約250億6000万円)。
- IASの第2四半期売上高は1億1370万ドル(約159億2000万円)で、前年同期比13%増。通期見通しは4億5900万ドル~4億6500万ドル(約642億6000万円~約651億円)、EBITDAは1億4900万ドル~1億5300万ドル(約208億6000万円~約214億2000万円)。
追って開催された決算報告会では、サードパーティCookieなどの確実なデータシグナルやIDFAなどのIDがますます乏しくなっていくなかで、どちらも創業の起源であるアドベリフィケーション企業から、メディアアクティベーションへと軸足を移している様子が見られた。
報告内容によると、ダブルベリファイの第2四半期売上高のうち7790万ドル(約110億円)はメディアアクティベーションによるものだ。これは前年同期比で29%増加しているだけでなく、同社によると広告主からの収入の55%以上を占める。ダブルベリファイがメディアアクティベーション強化を図っていることは、第2四半期の発表に1億2500万ドル(約175億円)でサイビッツ(Scibids)を買収する計画が含まれていることにも明らかだ。
どのようにアテンション指標を作り上げているのか
ダブルベリファイのCEOであるマーク・ザゴルスキー氏はプレス声明で次のように述べている。「当社のアクティベーション事業はかなりの規模があり、成功を収めているが、この戦略的な投資はそのインパクトをさらに高め、測定データを強化しながら、守りからパフォーマンスへという進化を加速させ、当社の長期的な成長軌道を大きく変えると考えている」。
サイビッツのようなAIスペシャリストの買収は、ダブルベリファイが広告主の広告配信先の評価に確率論的なアプローチを採用することを示すと考える向きもあるだろう。「当社ではアテンションを(ビューアビリティのデータから得られる)露出度とエンゲージメントを掛け合わせたものであると考える」とザゴルスキー氏は米DIGIDAYに語り、次のように付け加えた。「それは、広告がページ上でどれくらいの期間表示されているのか、どこに表示されるのか、実際に人が目にしているのかを評価している」。
米DIGIDAYはIASにもアテンション指標をどのように割り出しているのか尋ねたが、記事作成時までに回答はなかった。ただ、第2四半期決算報告書にはルーメン・リサーチ(Lumen Research)との提携の話題が記載されており、決定論的なアプローチの採用が示唆される。
IASのCEOであるリサ・ウツシュナイダー氏は事前に準備された声明で「6月に『クオリティアテンション』という入札後測定ツールを発表した。クオリティアテンションは、質の高いインプレッションを推進することで、規模拡大の問題なくエンゲージメント率を向上させ、コンバージョン率を高めることを狙っている」と語っている。
だが、「確率論」対「決定論」という議論を考えるとき、ダブルベリファイがティービジョン(TVision)と提携して「アイズ・オン・スクリーン(画面に向けられている目の)受動的なアテンションデータ」を収集し、同社のCTV関連サービスの拡大に活用しようとしていることは注目に値する。
「Cookieは恐竜、アテンションは哺乳類」
両社の第2四半期決算発表後、ルーメン・リサーチのCEO、マイク・フォレット氏はどちらのアプローチもCookieに取って代わることを意図したものではなく、ルーメン・リサーチとIASとの提携はCookie以外の代替手段の模索を示すものだと話す。「Cookieは恐竜でアテンションデータは哺乳類、といったところ」だそうだ。
2社ともメディアアクティベーションへの移行を加速させているが――IASがTV広告配信企業パブリカ(Publica)を買収したことを思い出してほしい――これは、決定論的データがもっと簡単に手に入った日々に広告効果測定企業として生まれた両社のルーツから、あまりに離れてしまっていないだろうか。
いいかえれば、広告入札すべきかの判断の基となる情報を伝える企業が、その結果の可否を判定する審判員でもある場合に、その企業を公正な仲介者と見なすことができるだろうか、という話である。
イービクイティ(Ebiquity)の最高戦略責任者、ルーベン・シュラーズ氏は「利益相反の可能性に自らをさらしているように思う」といい、「すべてはその商業モデルとインセンティブによる。購入されたインプレッションの量に基づいた料金ベースのモデルが、獲得するインプレッションの最大化を目指すインセンティブを生み出すサイビッツのモデルを使用しているのだ」。
広告主にとっては何がベストか
ダブルベリファイのザゴルスキー氏は、同社のメディアアクティベーションの主導権は広告主にあると強調する。「ダブルベリファイは何も決定しない。当社は釣り竿とエサは提供するが、実際に釣りをしなければならないのは彼らだ」。
収益モデル、ひいてはメディア評価のインセンティブについて説明を求めたところ、ザゴルスキー氏は同社の入札前ソリューションがインプレッション単価をベースにしている一方で、サイビッツの場合はメディア費に対するパーセンテージをベースにしたモデルだ、という。ただし、サイビッツをダブルベリファイの下に統合しようと図るなかで、サイビッツのモデルは変わる可能性がある。
「サイビッツの買収が完了したときにそのモデルがどのように変わるのかを検討中だ。明らかに2つのモデルはまるっきり違うのだから」とザゴルスキー氏は語る。「将来的には、広告主にとって何がベストなのかを見極める」。
[原文:How ad tech’s measurement titans are pivoting to attention and activation]
Ronan Shields(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)