D2Cワイン・ブランドのユージュアル・ワインズ(Usual Wines)がマーケティング戦略の一環として、SMSとテキストメッセージによるコミュニケーションを利用したファーストパーティデータの獲得に着手した。
D2Cのワインブランドであるユージュアル・ワインズ(Usual Wines)がマーケティング戦略の一環として、SMSとテキストメッセージによるコミュニケーションを利用したファーストパーティデータの獲得に着手した。
2019年の創業以来、ユージュアル・ワインズは消費者と双方向の関係を築くことに注力しており、ワインとチーズの組み合わせから、最新の配送状況に至るまで、あらゆることの直接的な問い合わせをユーザーに促してきた。テキストメッセージやSMSの利用を始めたのも、同じく2019年のことである。しかし同社の最高経営責任者(CEO)で共同創業者のマット・デュークス氏によれば、2020年には収益全体の20%以上を、テキストメッセージやSMS経由の直接的な注文が占めるようになったという。
さらに同社は、消費者から学んだことを自社のマーケティング戦略やブログコンテンツ、さらには商品開発に生かせるようになり、先だってもロゼの新商品をリリースしている。これらのことからわかるように、消費者は本当に興味のあるものを見つければ、リアルタイムで情報を提供してくれるのだ。
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「消費者とダイレクトなコミュニケーションラインを持つことで、開発や発売に先駆けて商品がウケるかどうかを効果的に評価できるようになった」とデューク氏も明かしている。
「直接対話をするための場所」
ユージュアル・ワインズでは、顧客データベースとブランドコミュニティの拡大に向けた双方向コミュニケーションの一環として、電話番号、メールアドレス、およびウェブサイト上でのレビューといった情報を重視。それと同時に、消費者のプライバシーが重要視されるようになっていることを踏まえ、戦略の見直しも常に行っている。
プライバシー保護に関する規制強化が今後も進むと思われるなか、ファーストパーティデータの重要性も高まりつつある。Google Chromeもすでに、サードパーティCookieの廃止計画を明らかにしている状況だ。米DIGIDAYが先にレポートしたとおり、業界では今後、電話番号やメールアドレスといったファーストパーティデータがCookieに代わる強力な武器になっていくのかもしれない。
ユージュアル・ワインズの場合、ワイン・ホットライン(Wine Hotline)という独自のライブテキストを活用した双方向コミュニケーションをマーケティング戦略の中核に置いている。具体的には、ワイン・ホットラインを通じて消費者の質問に答える、カートを復元する、カート内に残っている商品の購入をリマインダーで促すといったことを行っており、アウトバウンドな利用方法はごく一部にとどまっている。
デュークス氏はワイン・ホットラインについて次のように述べている。「顧客にテキストメッセージを送るのは、新商品のリリース時や会員向けのプロモーション実施時だけだ。どちらかといえば、消費者が困ったときに利用するオープンフォーラムであり、当社と直接対話をするための場所だと言える」。
この領域に踏み込むときの留意点
マーケターの中には、SMSマーケティングが苦手な人もいる。だがメール&SMSマーケティング・オートメーション・プラットフォームのオムニセンド(Omnisend)でゼネラルマネージャーを務めるジェイミー・サットン氏が指摘するように、技術的な進化によってプラットフォームが普及した現在、マーケターはSMSを実験的なメディアではなく、中核的なマーケティング戦略のひとつとして統合利用することを余儀なくされつつある。
サットン氏が言うように、「ファーストパーティデータをGoogle広告やFacebook広告に連動させるのは、多くのマーケターがやり残している領域」であるというのが現状だ。
一方で同氏は、マーケターがこの領域に踏み込むには注意が必要だとも警告している。
メールマーケティングが飽和状態になったいま、SMSやテキストメッセージベースのマーケティングはマーケターにとって、競争優位性を築くのにうってつけの戦略だ。トランザクション関連のメッセージ(注文の最新状況など)を、販促的なメッセージやデータ収集の目的で活用すれば、そこから得られた知見をマーケティング戦略や広告予算の見直しに生かすことができる。
「現在は、時間をかけて消費者の信頼を勝ち取りつつ段階にある。(SMSマーケティングを)収益の柱として扱うのは難しい」とサットン氏は分析し、消費者とのコンスタントなコミュニケーションをマーケターが乱用するのは望ましくないとの見方を示した。
メディアプランニングの全容
ユージュアル・ワインズは2019年の創業以来、デジタル空間に根を下ろしており、デュークス氏によると広告予算の3分の1はFacebookおよびインスタグラムに投じているという。また、デジタル広告予算(具体的な額はデュークス氏は回答を控えた)については抑制と均衡のシステムを採用し、単一のプラットフォームを優先しない方針を貫いている。
残りの広告予算のうち3分の1は無料メディア、メール、およびブログ用リソースに、そしてあとの3分の1はGoogleのペイドサーチ、スポンサードポスト、およびインフルエンサープログラムに投じているという。
同社は目下、チャネルの多様化と、ウェブサイトのブログページの充実を図っているところだ。
消費者も歓迎するようになるはず
将来的には、SMSテクノロジーはさらに利用性が高まり、消費者もシームレスなコミュニケーションを歓迎するようになるだろう、とサットン氏はみている。つまり、SMSプラットフォームを利用するマーケターも増大するということだ。
「いまから1年半以内にSMSの利用に着手しないブランドは、消費者の変化に追いついていけなくなるだろう」とサットン氏は締めくくった。
[原文:How a DTC wine brand is finding first-party data in SMS]
KIMEKO MCCOY(翻訳:SI Japan、編集:長田真)
Illustration by IVY LIU