テキサスを拠点として70年の歴史を持つマットレスメーカーのドーメイ・スリープ・プロダクツ(Dormae Sleep Products)は、プライベートブランドをゼロから立ち上げ、顧客への直接販売市場に参入する方法を見出した。その背景には、広告代理店との連携があった。
テキサスを拠点として70年の歴史を持つマットレスメーカーのドーメイ・スリープ・プロダクツ(Dormae Sleep Products)は、プライベートブランドをゼロから立ち上げ、ベッド・イン・ボックス(箱に梱包されて配送されるマットレス)の独自ブランドでD2C市場に参入する方法を見出した。これを実現するため、今年7月4日の週末のブランドデビューに向けて、オースティンに本拠を置く広告代理店のグレイテスト・コモン・ファクトリー(Greatest Common Factory)と連携して、プラットフォーム、ブランディング、広告などを作り上げた。
過去1年半の成果が、新しいベッド・イン・ボックスブランドのミルトン(Milton)だ。このブランドは、親会社の70年の歴史を宣伝しながら、若い消費者に比べてベッド・イン・ボックスに懐疑的とみられる高年齢層の消費者をターゲットにしている。ほかのブランドのコンセプトを検証するなかで、この広告代理店は4つの潜在的なブランドについて、それぞれ200人の顧客にオンラインでテストを行い、どのブランドの提案と価値がよく受け入れられるかを検証した。その結果、競合がひしめくベッド・イン・ボックス市場で戦うために有効と考えられる、このブランドの差別化要素が見つかった。
ミルトンのCEOであるマイケル・カロトキン氏は、「ローンチには数多くの要素があり、あらゆることを協調しながら考案、作成、実行することが必要だ。我々は、製品に使われる材料や製造方法については知っていたが、市場に参入する方法については分かっていなかった」と、メールで答えた。
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ミルトン創設の背景
グレイテスト・コモン・ファクトリーのクリエイティブおよび戦略のリーダーであるジョン・トラハー氏によれば、今日新しいブランドを立ち上げようとしている企業には、提供される製品やサービスを超えた差別化ポイントを見出すことが重要だという。それを実践するために、この代理店の6人でチームを構成し、4つの異なるブランドのオプションとプラットフォームを作成し、そのうちのどれが消費者に受け入れられる可能性があるかを調査した。
トラハー氏は、「私たちはそれぞれのケースについて、ブランドを説明するプラットフォームと背景となるストーリーを書き上げたが、そのなかではミルトンの説明が最上位となった。これまでも我々はリブランディングに携わり、この方法で複数の方向性や名称変更について調査したが、これほど包括的に実施したことは今までなかった」と説明している。
トラハー氏は、広告代理店が勝てるブランドコンセプトにたどり着けば、「必要となる[広告の]実践はずっと簡単に見出せる。自分たちが何者で、なぜその説明をするのかといった点で全員に共通認識がある」と述べている。
ブランド創設に広告代理店の力を
広告代理店が企業と連携して新ブランドを立ち上げるというのは新しいコンセプトではないが、通常これは広告代理店ではなくブランディングエージェンシーの仕事だ。最近では、レッド・アントラー(Red Antler)やジン・レーン(Gin Lane:現在はD2C持株会社のパターン[Pattern])のような広告代理店が、ハリーズ(Harry’s)やリセス(Recess)といった派手なD2Cブランドでの取り組みで有名になっている。
このような広告代理店のいくつかがブランド創業者と当初から提携して成功を収めてきたことから、ほかの代理店でも同じサービスの追加を検討している可能性がありそうだ。D2Cブランドと連携するメディアエージェンシーのデジショップ・ガール(Digishop Girl)のCEOであるカティヤ・コンスタンチン氏は、「私たちはこのような関係性の取り組みを何年も行ってきているので、ブランドがこの点でD2Cのスタートアップ企業に助言するのが新しいことだとは必ずしも考えていない」と、話す。「あるクリエイティブエイジェンシーでは、その一部を新しいブランドの開発と立ち上げに焦点を当てることに割り振っている」。
「ブランドが存在する理由はあるのか」
D2Cの投資家でアドバイザーのニック・シャルマ氏はシャルマ・ブランド(Sharma Brands)の創業者であるが、「これが機能するのは、『代理店』にはすでにリソースがあり、過去にそれを100倍にするために必要だったことから得られた知識があるからだ」と述べ、以前一緒に仕事をしたブランドで、彼はこのモデルを使ったという。「したがって、我々に相談してもらえれば、フルフィルメント、パッケージング、サイトの構築などについて心配する必要がない。私たちがそのすべてのプラットフォームになる」。
シャルマ氏は、企業が代理店と連携してブランドのコンセプトを一から考えていくことがもっと一般的になっていくと信じている。「さらに興味深いのは、そもそもブランドが存在する理由はあるのかという点だ」とシャルマ氏。「代理店やVCからの提供されるあれやこれやで『空白』が埋まるのを見ているだけなのか、そして我々は現実の問題を解決するために会社の創業者を追いやってしまうのだろうか?」
[原文:How a 70-year-old mattress company created a new bed-in-a-box brand from scratch]
KRISTINA MONLLOS(翻訳:SI Japan、編集:小玉明依)