ファッションにおけるメタバースのシリーズ。どのブランドがメタバースに参入し、なぜそれが重要なのか、そしてそれがどのようなメリットをもたらしているのかを探る。今回はデジタルの扉を開けてメタバースへと踏み出し、躍進している3つのブランドを紹介する。この分野での11月のトレンドはアートとカルチャーのクロスオーバーだ。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
9月からスタートしたファッションにおけるメタバースのシリーズ、今回はどのブランドがメタバースに参入し、なぜそれが重要なのか、そしてそれがどのようなメリットをもたらしているのかを探る。ここでのメタバースはインターネットの未来像であり、ユーザーが永遠に存在することができる共有の3D仮想世界を指す。
この次世代のオンラインリアリティはすでに急速に到来しつつあり、インターネット上では毎日さまざまなコミュニティが成長している。NFTについての解説で示したさまざまな特徴に関するまとめも参照しつつ、11月の取材ではファッションメディアやエンターテインメントといった新たな分野に、NFTやメタバースがどのように進出していくのかに注目する。ナイキ(Nike)のようなメガブランドがバーチャルワールドへの参入を示唆しており、この分野がさらに拡大していくのは明らかだ。
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今回は、デジタルの扉を開けてメタバースへと踏み出し、躍進している3つのブランドを紹介する。この分野での11月のトレンドはアートとカルチャーのクロスオーバーだ。
RTFKT:アーティストの村上隆氏とともにNFTのアバターをデザイン
RTFKT(アーティファクトと発音する)は、日本人アーティストの村上隆氏と3Dテクノロジー企業ダズ3D(DAZ 3D)と共同でクローンX(CloneX)を開発した。これは大規模な暗号アートプロジェクトで、11月30日にアバターNFTの一般販売を開始している。デジタルで生成された2万体の3Dキャラクターには、どれもランダムなシステムでコンパイルされた独特な特徴がある。村上氏は自身のポップアートの美的センスを取り入れて、アバターの顔や服装、特徴の一部のデザインを手がけている。
重要なポイント:シュプリーム(Supreme)がファッションを変えたのと同様に、RTFKTは、ハイプカルチャーをデジタル領域に持ち込むことでNFT空間でのリーダーになろうと考えている。RTFKTのクローンXプロジェクトは、デジタルスニーカーやストリートウェアからスタートしたRTFKTというブランドの活動の延長線上にある。村上氏のような著名なアーティストとのコラボレーションは、ジャン・ミッシェル・バスキア氏の作品『Equals Pi』が、ビヨンセ氏とジェイ・Z氏を起用したティファニー(Tiffany)の広告を昇華させたように、RTFKTの作品を新たな活動の舞台へと導いている。
ジバンシィ:グラフィックアーティストのチト氏によるNFTで、アーティスト主導の美学を継続
ジバンシィ(Givenchy)はグラフィック・アーティストのチト氏と提携して15点のNFTをポリゴン(Polygon)上でローンチ、それらは11月30日から7日間にわたって開催された模擬オークションで販売された。その販売に使用されたスマートコントラクトの開発に関しては、コンセンシス(ConsenSys)と提携してオーラブロックチェーンコンソーシアム(The Aura Blockchain Consortium)がコンサルティングを行っている。このコンソーシアムは、ブロックチェーン技術をプロセスに取り入れているラグジュアリー企業のネットワークで、LVMHもメンバーである。販売の収益は、ジバンシィのチャリティパートナーである非営利団体でプラスチック汚染をなくすための技術開発に取り組んでいるジ・オーシャン・クリーンアップ(The Ocean Cleanup)に寄付される。
重要なポイント:ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)やバレンシアガ(Balenciaga)のように、スキンやデジタルグッズのデザインでゲーム分野に関わっているブランドは多いものの、独自のNFTをローンチしているラグジュアリーブランドはそれほど多くない。だが、ほかのラグジュアリーブランドも自社の戦略を推進するために、ジバンシィのオーナーであるLVMHが後援するオーラコンソーシアムの協力のもとでブロックチェーン技術やNFTのような製品に興味を持つようになるだろう。
JWアンダーソン:ハリー・スタイルズ氏が着用してカルト的人気となったカーディガンをNFTで再現
11月末、英国のファッションハウスのJWアンダーソン(JW Anderson)は、2020年春のメンズウェアコレクションに登場したカラーブロックパッチワークカーディガン(Colourblock Patchwork Cardigan)が同ブランド初のNFTになると発表した。これはミュージシャンのハリー・スタイルズ氏が着用して有名になったもの。JWアンダーソンは、このカーディガンをハイパーリアリスティックなNFTオブジェとして開発し、新たにローンチされたオークションプラットフォームのザイドローブ(Xydrobe)の最初のアイテムとして提供する。
このカーディガンは、スタイルズ氏が2020年2月にNBCのトゥデイショウ(Today Show)で着用した際に話題となった。瞬く間にファッションの歴史の一部となり、実際のカーディガンは現在、英国の美術博物館V&Aに展示されている。今回のデジタルによる再現はチームが300時間かけて開発したもので、毛糸のすべてをを3Dで作成してからオリジナルのアイテムで使用されている6種類のニットパターンで編んでいる。12月12日に開始する48時間のオークションでの販売による収益は、LGBTQ+のチャリティ団体アクト(Akt)に寄付される予定。最初のリザーブ価格は10,000ポンド(約153万円)となっている。
重要なポイント:この作品は、ファッションハウスが制作した初のハイパーリアリスティックなデジタル作品のひとつであり、工芸品の再現に焦点を当てると意表を突くデジタル作品が生まれることを証明している。TikTokでは、2020年6月にリヴ・ハフマン氏(@lilbittylivie)がこのカーディガンをかぎ針編みで再現する動画が300万回以上の再生回数と94万4000件以上の「いいね!」を獲得するなど、カーディガンの再現動画が拡散したが、そうした流行の波をふまえて制作された初のNFT作品でもある。
[原文:How 3 fashion brands entered the metaverse in November]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)