7月も終わりに近づき、Facebookへの広告をボイコットしていた広告主企業は、8月1日から出稿を再開するか否かを検討していた。広告買い付け担当のメディアバイヤーらによれば、大手ブランドに比べ、ダイレクトレスポンスマーケティング頼みの中小ブランドはFacebookへの出稿を早期に再開する可能性が高いという。
7月も終わりに近づき、Facebookへの広告をボイコットしていた広告主企業は、8月1日から出稿を再開するか否かを検討していた。
広告買い付け担当のメディアバイヤーらによれば、ユニリーバ(Unilever)やスターバックス(Starbucks)のようによく知られた大手ブランドに比べ、ダイレクトレスポンスマーケティング頼みの中小ブランドはFacebookへの出稿を早期に再開する可能性が高いという。売上拡大のためにはFacebook上の広告が欠かせないからだ。一方、大手ブランドは、今秋まではボイコットを継続する見通しだ。
あるメディアバイヤーは匿名を条件にこう述べている。「業績が安定している大手ブランドの一部は、Facebookに対し広告出稿停止を宣言し、ヘイトスピーチ規制に積極的な対応をするよう要求した。7月からボイコットに突入したが、いまだに広告を再開していない」。
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大手の再開は11月以降に
大手ブランドはボイコットに対するFacebookの反応に不満を抱いているようだ。同社が確約した取り組みは「コミュニティ規定施行レポート」にヘイトスピーチ拡散にかかわるデータポイント情報を追加することだけで、それ以外の対策は講じていないという。広告主としては自社コンテンツに隣接する不適切なメッセージの場所を制御できる手段が欲しいところで、憎悪表現が含まれるコンテンツの隣に自社広告が表示されるのを防ぐオプトアウトの選択肢が望ましい。こういった隣接コンテンツ問題は、各種プラットフォームを介したネット広告の世界では以前から議論されてきた。課題解決のため、広告主はプラットフォーム側(Facebook)の真摯な対応を求めている。
隣接コンテンツ制御はテレビ、ラジオ、活字媒体の広告買い付けでは一般に行われている。そうした制御ができないのであれば、Facebookには重要な機能が欠けていることになる、と前出のメディアバイヤーは語る。とはいえ、ヘイトスピーチを含む表現に隣接する広告枠の扱いは容易に解決できる課題ではない。技術的に複雑なうえ、利用者のプライバシーへの配慮も必要になるからだ。
Facebookは技術上の問題解決に向けて複数のバイヤーを交えた議論を進めようとしている。「同社の経営幹部に解決を図る意図があるからこそ議論が始まった」とバイヤーたちは言う。ただし、ソリューション構築には数カ月かかるとの見通しだ。
バイヤーたちの見立てでは、大手ブランドの広告出稿再開はFacebookのコミュニティ規定施行レポートの最新版が発行される11月以降になりそうで、レポートはFacebook上でのヘイトスピーチの拡散度合いを示す新たなデータポイントを盛り込んだものとなる見込み。そうした統計データ公表はボイコット参加企業の要求のひとつであり、Facebook側がこれに応じれば、広告主が戻ってくるきっかけになるだろう。
中小は必要に迫られて再開
一方、中小ブランドの場合、早期の広告再開はFacebookの取り組みに対する満足度の表れというより、必要に迫られての選択だ。「中小ブランドにとってFacebookはドラッグのようなものだ」と、あるバイヤーは匿名を条件に述べている。「中小企業はFacebook経由のマーケティングなしにはやっていけない。広告効果は実証されているからね」。
その意見に同調するのは広告代理店のメニー(The Many)でメディアサービス部門のマネージングディレクターをつとめるデイヴィス・ジョーンズ氏だ。「Facebookは多くの企業にとって必要性が高く効果が大きい広告商品を開発してきた。当社のクライアントのなかにも売上のすべてをFacebook経由のビジネスに頼っている企業があり、広告掲載を1カ月間停止しただけで経営難に陥るケースもありえる」。
広告主はボイコット運動が起きた当初、運動に参加しなければ消費者の反発をかうのではないかと危惧していた。しかし、Facebook経由の広告宣伝活動を再開しようという機運が一部で広がるなか、Facebookのヘイトスピーチ対策変更の確約が得られない状況でも「以前ほどの懸念はなくなった」とジョーンズ氏は述べている。
懸念が和らいだ理由のひとつは、ボイコットに参加せずFacebookへの広告出稿を続けているブランドに対する消費者の反発がさほど強くなかったことにある。某社の経営幹部によると、取引先の大半はFacebook上に広告を掲載し続けているが、消費者からの抗議の声は少なかったという。
「いい意味での分散につながる」
一方、7月からFacebookへの支出をとりやめた中小ブランドは代替の広告媒体として、Snapchat、Pinterest、TikTokなどのプラットフォームを試しはじめた。8月に入ればFacebookでの広告運用を再開する可能性が高いものの、それ以外のプラットフォーム経由の広告でも効果が出ているだけに、Facebookへの広告支出は以前より削られることになりそうだと、メディアバイ担当者たちは語る。
「(今回のボイコットは)いい意味でのプラットフォーム分散につながるだろう」と、前出の匿名メディアバイヤーは述べた。
(翻訳:SI Japan、編集:長田真)