日本の大手自動車メーカーであるホンダが、同社で初となる仮想現実(以下VR)を駆使したブランド動画の制作を発表した。
イタリアのレーシングカーコンストラクターであるダラーラ(Dallara)が製造し、ホンダがエンジンなどで技術支援する超高速車を運転している気分を味あわせてくれる、このVR動画。公開は、5月29日にアメリカのインディアナポリスで開催されるモータースポーツイベント「インディ500」にあわせて行われる予定だ。
日本の大手自動車メーカーであるホンダが、同社で初となる仮想現実(以下VR)を駆使したブランド動画の制作を発表した。
イタリアのレーシングカーコンストラクターであるダラーラ(Dallara)が製造し、ホンダがエンジンなどで技術支援する超高速車を運転している気分を味あわせてくれる、このVR動画。公開は、5月29日にアメリカのインディアナポリスで開催されるモータースポーツイベント「インディ500」にあわせて行われる予定だ。
動画はアメリカ最大の新聞社であるガネット社とタッグを組んで制作され、同社の主要紙である「USAトゥデイ(USA Today)」を筆頭に、傘下にある92社もの地方新聞紙のサイトでも配信される。ほかにも「VRストーリーズ・バイ・USAトゥデイ・ネットワーク(VR Stories By USA Today Network)」と呼ばれる同社のアプリや、「レース・ウィズ・ホンダ・ドット・コム(RaceWithHonda.com)」などホンダが所有するサイトでも視聴できると、ホンダで特定地域のメディアとマーケティングを担当するアーニー・ケルシー氏は話す。
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しかし、視聴者にどうやってVR動画の視聴機器を渡すのか、まだ決まっていない。「ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)」が以前にVR動画をローンチした際は、数百万人もの購読者たちにGoogleが開発したVRヘッドセットの「カードボード(Cardboard)」を提供している。
VRで体験できるダラーラ車は、プロレーシングドライバーであるマリオ・アンドレッティ氏が運転したものだとケルシー氏(アンドレッティ氏は長らくのあいだ、同社が主宰する賞金イベントやコンテストなど多くのマーケティングに出演していた)。「リーチやエンゲージメントを拡大し、レースにもっと興味をもってもらえる方法をずっと探していた」。
マーケティング活用が進むVR動画
ホンダは360度動画やVRをマーケティングに活用したいと考えていたため、パートナーのメディアエージェンシーであるメディアベスト(MediaVest)が、ガネット社との共同を持ちかけてきたところ、今回のVR動画に行き着いたとケルシー氏は語る。
ガネット社が2016年の3月に発足させた新たなブランデッドコンテンツ部門「ゲット・クリエイティブ(GET Creative)」にとって、今回のホンダのVR動画ははじめての仕事だ。この部門は他社との差別化としてVRを重要視していて、広告主はガネット社がもつ1億1000万人ものユニークユーザーにコンテンツを配信できる。これはすでに40本以上ものVR動画を制作しているガネット社だからこそ提供できるサービスだ。
ほかにも、ガネット社とホンダは360度音声でサーキット場の音を再現できるかを試している。動画が広告であることを明確に示すためにも、この動画には「VRストーリー・バイ・ホンダ(VR story by Honda)」というタイトルが付けられる予定だ。ホンダのエージェンシーであるRPAもこのキャンペーンに参加。とある情報筋は、このVR動画は数百万ドルにも及ぶキャンペーンの一環だと話している。
問題はどう届けるか?
数カ月前にパブリッシャーがVRをブランデッドコンテンツのオプションとして扱うようになってから、広告主たちの間で話題になっている。しかし、多くの広告主たちは、VRをどう人々の生活に溶け込ますのかという点に難しさを感じているという。
VRを視聴するためのヘッドセットは高価で、あまり販売もされていない。比較的安価なGoogleの「カードボード」をオーディエンスに届けるのにも、かなりの費用がかかってしまう。このような理由のため、ガネット社はホンダの動画の多くを360度動画形式にしたいと考えている。VR用の視聴機器が無くても動画を視聴できるからだ。
「VRを使って人々をレース会場やピット内に入れることができるならば、力強いエクスペリエンスを提供することができる」と、ガネット社の最高リスク管理責任者であるケビン・ゲンツェル氏は話す。また、広告主からの需要と、ユーザーの行動などからターゲティングするガネット社の能力から、今後は同様のVR動画が多く制作されるとゲンツェル氏は予想している。
ホンダは数年前から、同社の研究開発にてVRを開発してきた。2015年にはドライバーの手助けや同乗者のエンターテインメントを目的とした車内VR機器を開発し、特許を取得している。ケルシー氏によると、VRはホンダのさまざまな部署で使われているという。「20年先の未来を見据えて、VRと自動車の融合を考えているチームもいる」と、彼は話す。「しかしマーケティングの観点から見ると、現時点でも実際にVRを使用し、多くのことができる」。
Shareen Pathak & Lucia Moses(原文 / 訳:BIG ROMAN)