家庭用品 が、小売企業の「生命線」になりつつある

現在、家庭用品の売上が好調を維持している。

ベッド・バス&ビヨンド(Bed Bath & Beyond)の売上は、新型コロナウイルスの感染拡大前、4年連続で減少していた。同社は12月にスティーブ・テマレス前CEOが退任、ターゲット(Target)の元役員マーク・トリットン氏が新CEOに就任したが、前四半期で好調な売上を記録した。

ベッド・バス&ビヨンドは10月第1週に行われた第2四半期決算のなかで、店舗における売上高が6%、オンラインの売上高が80%増を達成したと報告した。トリットン氏は「ステイホームが続くこの未曾有の状況にあって、自宅やライフスタイル関連商品の売れ行きが好調となっている」と述べている。

家具や家庭用品の需要増の恩恵を受けているのは同社だけではない。ウェイフェア(Wayfair)は8月に株式上場後初となる四半期決算のなか、売上高が前年比で83.7%増となったことを報告した。また、8月に行われたターゲット(Target)の第2四半期決算を見ると、店舗売上高は前年同期比で24.3%増となっているが、これを支えているのが30%以上伸びた家庭用品だ。

大手小売各社は家庭用品の売上増は今年の残りの時期も続くと予想しており、クリスマス商戦においてもインテリア商品を主力として準備を進めている。さらに同期間のオンライン販売が25%から35%増加するとも予測されるなか、大規模なEC事業を展開している家庭用品分野の企業にとっては追い風となる可能性がある。ただし、こういった予測も、経済がパンデミックから回復を続けるのか、追加の経済対策や失業給付金が実際に追加されるのかといった不確定要素によって左右される。

カンター・コンサルティング(Kantar Consulting)のディレクター、ティム・キャンベル氏は「これを長期的なトレンドと呼ぶのは躊躇する」と語る。

旅行ではなく家のデコレーションを

家庭用品の売り上げが伸びている最大の理由は、消費者が自宅で過ごす時間が増えるなか、旅行などより自宅の模様替えの関心が高まっているためだ。実際、同分野ではウィリアムズ・ソノマ(Williams Sonoma)やベッド・バス&ビヨンド、ウェイフェアといった企業の売上高が伸びている。ほかにもホームセンターのロウズ(Lowe’s)やホーム・デポ(Home Depot)、そしてウォルマートやターゲット、コールズ(Kohl’s)、メイシーズ(Macy’s)といった大手小売店や百貨店の家庭用品部門も好調を維持している。

たとえばメイシーズは、9月初旬に行われた第2四半期決算報告のなかで、総売上高が前年同期比で35.8%減となった一方、家庭用品が最も好調だったと報告している。これについて同社CEOのジェフ・ジェネット氏は「誰もが家にいるなかで、新しい絨毯やインテリア、家具などの模様替えをしたいと思う人が増えおり、全体から見ると不釣り合いな伸びを見せている」と述べている。昨年の第4四半期、同社で調理器具を除く大半の家庭用品カテゴリーの売上が減少していたのとは対照的だ。

さらに、金利が低い今のうちに家を購入する人も増えており、同分野の小売を後押ししている。全米不動産協会(National Association of Realtors)によると、新築を除く住宅の売上高は7月から8月にかけて24.7%増加し、8月から9月にかけてさらに2.4%増加している。

小売各社は、このふたつのトレンドが続く限り、家具やインテリアの売り上げの伸びは続くだろうと予想している。また、大型家電量販店や百貨店では家庭用品の伸びがそれ以外のカテゴリーの商品を上回っている。たとえば、ターゲットでは第2四半期の家庭用品の売上高が30%以上伸びた一方、飲食料品はおよそ20%の増加にとどまった。また、コールズの第2四半期決算を見ると、部屋着のオンライン売上高が70%以上増加したのに対し、家庭用品は同90%以上も伸びている。

コールズは家庭用品への取り組みを強化している。アナリストの質問に答える形で、同社のミシェル・ガスCEOは「家庭用品部門があらゆるパートナー企業と非常に熱心に取り組んでおり、非常に好感触な報告を受けている」と述べている。

一方で、米国における雇用喪失が長引くこと、そして追加の経済対策が行われないことにより買い物客の可処分所得が減り、家庭用品に消費できる余裕がなくなるのではないかという懸念もある。先述したようにキャンベル氏が家庭用品の好調を「長期的なトレンドと呼ぶのは躊躇する」と表現していたのもそのためだ。

同氏は「現在の業績は、各社の当初の予想をすでに上回っているはずだ」と述べる。「これほどの売上は期待していなかったはずだし、どれだけ続くのかという懸念もあるだろう」。

クリスマス商戦と家庭用品

各社は一方で、不安要素はあっても、クリスマスシーズンで家庭用品の売上が伸びるものとして動いている。バークレイズ(Barclays)が9月に開催したバーチャルカンファレンスで、ウォルマートのブレット・ビッグスCFOは「私は販売担当ではないが、ガーデニング用品などを含め、家庭用デコレーション商品の売り上げはおそらく今年はかなり大きなものになると予想している」と述べている。「下半期に向けて家庭用品の位置づけはさらに重要性を増した」とコールズのガスCEOは語る。

とはいえ、どの小売企業でも調理器具や家具の扱う量を増やせば問題なく乗り切れるというわけではない。たとえばメイシーズやコールズといったアパレル商品への依存度が高い百貨店の場合、家庭用品の販売は好調に推移しているが、アパレル分野や実店舗における売上の減少を補うには至っていない。

ベッド・バス&ビヨンドは既存店やオンラインで家庭用品の収益が増加したものの、総売上は1%減となっている。さらに同社は今後2年で、コストカットのために20店舗をたたむことを決定している。

グローバルデータ・リテール(GlobalData Retail)でマネージングディレクターを務めるニール・ソーンダース氏は、ベッド・バス&ビヨンドについて「記録的な四半期を迎えたのは確かだ。だがこれは根本的に事業が好転したというよりも、家庭用品カテゴリー全体が活況を呈しているためだろう。同社に限らず、同分野で商品を出すあらゆる企業が恩恵を受けている」と語る。ソーンダース氏は、同社について「実店舗の陳列や見た目を改善すべきだ。雑然としており、倉庫で買い物している気分になる」と語り、さらに「宅配サービスを改善し、自社ブランドを増やすべきだろう」と指摘する。実際、同社は10月第1週に、クリスマスシーズンに先駆けてインスタカート(Instacart)と提携して即日配達サービスを開始すると発表した。

またソーンダース氏は、ウィリアムズ・ソノマが「好調な家庭用品の恩恵だけでなく、パンデミック以前からしっかりとEC事業に取り組んでいたことで大きな恩恵を受けている」と語る。同社は第2四半期の決算発表で、オンライン収益が46%増加し、総収益の76%を占めたことを発表した。

米DIGIDAYの姉妹サイトのモダンリテール(Modern Retail)が以前報じたように、ウィリアムズ・ソノマはオンラインで購入した商品の店頭受取といったサービスを2018年から開始していたが、ベッド・バス&ビヨンドはようやく同じようなサービスを始めたばかりだ。さらにウィリアムズ・ソノマは今夏にウェブサイトに製品可視化ツールを導入、カスタマーがサイト上でカスタマーサービスに質問できるようになった。ソーンダース氏は「これがカスタマーエンゲージメントを高めている」と指摘する。

同氏は、今年はクリスマスシーズンも、家庭用品が好調を維持するだろうと予測している。ソーンダース氏は外食やアパレル、旅行などへの支出が減少している以上、その分が家庭用品に流れる可能性が高いと指摘し、次のように述べた。

「家の外で混沌としたストレスのたまる状況が続いており、自宅を居心地の良い空間にして気持ちよくクリスマスを迎えたいと考える消費者は多いのではないか」。

[原文:Home goods sales have become a lifeline for retailers

Anna Hensel(翻訳:SI Japan、編集:長田真)
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