ホリデーシーズンになると地元に出現するポップアップショップが、デジタルへの模様替えを進めている。これらの季節限定マーケットは長らく、ショッピングモールや繁華街の冬の風物詩となってきた。しかし、今年のホリデーポップアップは少し様相が異なる。ポップアップをオンラインのマーケットプレイスに変更する企業が出ているのだ。
ホリデーシーズンになると地元に出現するポップアップショップが、デジタルへの模様替えを進めている。
これらの季節限定マーケットは長らく、ショッピングモールや繁華街の冬の風物詩となってきた。モールでは、観光客を引きつけるために、空き店舗を冬のワンダーランドに変身させることが知られている。また、繁華街の不動産を持つだけの余裕がない小規模企業は多くの場合、ホリデーマーケットに出店して新規顧客を対面で獲得している。
しかし、今年のホリデーポップアップは少し様相が異なる。依然として対面式のイベントを推進するところもある一方で、ポップアップをオンラインのマーケットプレイスに変更する企業が出ているのだ。理由は、パンデミックによる規制で対面イベントがほぼ不可能になってしまったか、あるいは買い物客の多くは、いまだにオンラインでホリデーショッピングを楽しみたいと見込んでいるかのどちらかだ。問題は、通常ホリデーマーケットに出店するような企業のすべてがオンライン販売に対応しているわけではないということだ。小規模企業がこの新しい状況を乗り切る手助けをしようと、一部の物理的なマーケットはデジタルに移行しつつあり、それと同時に、小規模企業がオンラインで販売できる場所を増やす新たなビジネスも登場している。
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「小規模企業は窮地に陥っている」と、以前ターゲット(Target)でバイスプレジデントを務めたクリス・ウォルトン氏はいう。同氏は先ごろ、ミネソタ州ミネアポリスに拠点を置く十数社の小規模企業から商品を購入できるウェブサイト、アーバン・ルースター・ショップ(Urban Rooster Shop)を立ち上げた。「ホリデーシーズンのポップアップショップ、そしてホリデーシーズン全般が彼らのビジネスの大きな部分を占めているので、この時期は特に彼らにとって厳しいものがある」。
ホリデーマーケットでは、冬に新型コロナウイルスの感染者が増えるという見通しのもとに準備を進めてきた。イリノイ州シカゴのクリストキンドルマーケット(Christkindlmarket)は10月に、今年は物理的なマーケットを開かないと発表した。イベント主催者はシカゴ・トリビューン(The Chicago Tribune)紙に対し、ベンダーの多くが通常ヨーロッパからイベントのために移動してくるため、今年のマーケットは実施不可能だと語っている。代わりに同マーケットでは、40のベンダーが参加するオンラインマーケットプレイスを開設した。
オンラインの顧客を見つけ出す
ミネアポリスを拠点とするクリエイティブエージェンシー、ラボMPLS(Lab MPLS)の創設者モリー・ウィンドミラー氏は、地域にあるモールのギャレリア・イーダイナ(Galleria Edina)とともに、ホリデーシーズンに合わせて44の小規模企業を集めたポップアップ「ホリデー・リイマジンド(Holiday Reimagined)」をオープンする準備を進めていた。ウィンドミラー氏は、来場を予約制にしたり、商品ディスプレイの横にQRコードを配置し、それを使って買い物客が商品の詳細を知り、企業サイトから直接購入できるようにするといった方法で、ポップアップを可能なかぎり非接触的なものにしようとしていた。ところが11月半ばになって、ミネソタ州のティム・ウォルツ州知事が、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、レストラン、バー、ジムなどの事業者に対面式サービスの営業を一時休止するよう命令を発した。
ウォルツ知事の新たな命令の下では、小売店での買い物は許可されるが、ベンダーが出店する市場は許可されておらず、ホリデー・リイマジンドはこれに該当していた。そもそも、この新たな州知事令が出される以前から、ホリデー・リイマジンドの主催者たちは、ミネソタ州の感染者が増えるなかで「人々に集まるよう呼びかけることは間違っている気がする」と話し合っていたと、ウィンドミラー氏は述べている。
ポップアップ用のウィンドウディスプレイはすでに設置を終えていたが、イベントがバーチャルに移行しても、そのままそこに残される。まだ実店舗に来る買い物客が足を止めてウィンドウディスプレイを目にし、QRコードを使って地元企業のことを知ってくれればとの期待からだ。
ホリデー・リイマジンドは、ラボMPLSが過去5年間にわたって毎年開催してきたポップアップイベント「ザ・コレクティブ(The Collective)」の延長線上にある。このイベントがあったおかげで、ラボMPLSはメール購読者のリストを作成していた。ウィンドミラー氏によると、ラボMPLSは購読者に毎週メールを送信し、さまざまな地元企業や、イベント用に制作されたホリデープレイリストなどのコンテンツを紹介しているという。ラボMPLSはさらに、ホリデー・リイマジンドをバーチャル化する取り組みの一環として、それらの企業をフィーチャーしたオンラインギフトガイドを作成し、ラボMPLSのウェブサイトでプロモーションしていると、ウィンドミラー氏は述べている。
「このような取り組みは、ザ・コレクティブの参加企業に大きな成功をもたらしている」とウィンドミラー氏は述べたが、具体的な売上高は明らかにしなかった。同氏によると、バーチャルイベントの効果をラボMPLSがこれまで手がけた実店舗のポップアップと比較して判断するには、QRコードやラボMPLSによるほかのデジタルマーケティングの取り組みを通じて、今後数週間にどれだけの売り上げがもたらされるかを見てみなくてはならないという。
インフラを構築する
ウォルトン氏は、多くのマーケットがバーチャル化を進めるうえで最大の課題は、ホリデーマーケットに出店するような小規模企業の多くが通常、オンライン販売に対応する準備が整っていないことだと述べている。パンデミックの影響で今年になってようやくeコマースのウェブサイトを作っていたとしても、自社ウェブサイトと別のオンラインマーケットプレイスの両方で販売する体制が整っているとはかぎらない。「シーズン限定のポップアップでもっとも厄介なのは、常に在庫管理だ」とウォルトン氏はいう。
これは、ウォルトン氏と共同創設者のアン・メッゼンガ氏が11月に立ち上げたアーバン・ルースター・ショップが解決しようとしている課題の一端でもある。現在アーバン・ルースター・ショップには、ミネアポリスにある十数社の企業の商品が掲載されている。商品の購入はすべて、アーバン・ルースター・ショップのサイトから直接行うことが可能だ。しかし同スタートアップは、サイトを介して販売する小規模企業に注文情報を伝えるために、独自のソフトウェアシステムを構築している。「そのようにして日々、同一の在庫を処理している」と、ウォルトン氏はいう。
またウォルトン氏は、小規模企業はバーチャルのホリデーマーケットやその他イベントを通じて商品を販売することを検討する前に、「何よりもまず、素晴らしいオンライン体験を提供できなくてはならない」と述べた。
[原文:Holiday pop-ups are going virtual]
ANNA HENSEL(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:長田真)