アスレチックフットウェアブランド、ホカオネオネ(Hoka One One)はコロナ禍中の成長を受け、さらなるグローバル展開を計画している。同社トップのウェンディ・ヤン氏は、ファッション界との独自コラボを次々に展開する理由や、マーケティングにおける高機能性とアクセシビリティのバランスの重要性について語ってくれた。
アスレチックフットウェアブランド、ホカオネオネ(Hoka One One)はコロナ禍中の成長を受け、さらなるグローバル展開を計画している。
リテールリサーチ企業NPDグループ(NPD Group)によると、米アスレチックフットウェア市場がコロナ禍中に、「1桁台半ば」の落ち込みを見せた一方、ホカ社の2021年3月期決算での収益は62%増の5億7100万ドル(約630億円)に達した。ホカは2009年にフランスで創業し、2013年にデッカーズ・ブランズ(Deckers Brands)に買収されたが、上場企業である親会社の傘下に入って以来、同社は毎年2桁台の増収益を記録している。姉妹ブランドのアグ(UGG)やテバ(Teva)、サヌーク(Sanuk)を上回る成長を見せることも少なくない。
ホカオネオネとテバのトップ、ウェンディ・ヤン氏は、2021年度には、ホカをいくつか特定の市場において、いわゆるハウスホールドブランド(一般家庭に浸透している人気ブランド)にすることに焦点を当てており、なかでも中国でのプレゼンスを高めたいと考えているという。
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同社が持続的に成功している理由のひとつとして、ヤン氏はマルチチャンネル販売戦略を挙げる。ホカはオンラインで消費者に直接販売するだけでなく、厳選した品揃えを誇るリテーラーにも卸している。ホカはさらに、高性能スニーカーに最新流行のチャンキーヒールやマキシマリスト的デザインに、カラフルな配色を施し、ファッション好きにも積極的に売り込みをかけている。
同社はまた、話題の最新ファッションブランドとのパートナーシップにも積極的に投資している。たとえば、ニューヨークを拠点とするメンズウェアブランド、エンジニアードガーメンツ(Engineered Garments)と組み、厚底スニーカー、ボンダイ(Bondi)のミスマッチな配色が目を引く、ユニセックス用アイテムを発売した。また、ニューヨークのウィメンズウェアファッションブランド、コリーナ・ストラーダ(Collina Strada)のデザイナー、ヒラリー・テイモア氏は春のコレクションで、手塗りで配色した、カスタムメイドのホカ・スニーカーを披露した。
ヤン氏はこのたびモダンリテール(Modern Retail)のインタビューに応え、ファッション界との独自コラボレーションを次々に展開する理由や、マーケティングにおける高機能性とアクセシビリティ(手に取りやすさ)のバランスの重要性について語ってくれた。なお、長さと読みやすさを考慮し、発言には多少編集を加えてある。
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ーーホカオネオネはフットウェア業界全体のペースを上回る勢いで成長しているが、あなたが思う成功の要因とは?
コロナ禍中、我々は非常に好調だったわけだが、その成長や加速、勢いというものは実際、コロナ禍の発生前からあった。昨年度は不確実性の1年であり、多くの点において、きわめて厳しく難しいものではあったが、ビジネス的見地で言えば、ホカは競合他社をさらに引き離すことができた。
その原動力はやはり、体験や商品、そしてイノベーションを通じて人々と繋がることができる、そして繋がるための努力を惜しまない、ホカというブランドの力だと思う。景気の良い時はもちろん、極めて困難なときは特に、消費者は刺激を受けること、何かと繋がること、そして力をもらうことを求める。我々はあらゆる類のアスリートを、つまりトップ中のトップから、フィットネスという旅路を歩み始めたばかりの人まで、しっかりと応援できるよう努めている。ベテランから初心者まで、すべてのアスリートに新たなソリューションを提供したい。
ーーホカは、米国、カナダ、ヨーロッパ、アジア太平洋で展開するグローバルブランドですが、地域ごとに戦略をどのように変えている?
世界のどこであろうが、ホカというブランドに変わりはない。だからこそ、どの地域においても一貫性を保持できるよう、細心の注意を払っている。ただもちろん、地域ごとに微妙な違いはある。たとえば米国には、現時点でホカの実店舗はないが、中国市場においては、ブランドを売り出す際に、顧客に直に販売する場は不可欠だ。商品の生産ライン自体に変更や調整を加えなければならないことはあまりないが、たとえば、ある地域ではほかの地域よりも受けが良いと思われる配色にするということは、ときどきある。
ーーホカのグローバル拡大戦略について教えてほしい。
大幅な増資ははじめているが、必ずしも新たな市場に入っていくわけではない。ホカは十数年前にフランスで立ち上げたブランドで、ヨーロッパではすでに地位を確立しているが、伸びしろはまだまだある。その場が中国であり、いまは同市場にさらに注力している。競合他社と同様、我々も中国には巨大なチャンスがあると見ている。
グローバル規模での拡大は計画している。海外市場にはすでに進出しているが、そのなかでのさらなる拡大を考えている。そして、米国内での成長継続にも注力している。2021年から22年にかけて、グローバルなマーケットプレイスと繋がるための素晴らしいプラットフォームを構築していく。
ーーホカは機能性にフォーカスする一方、アスリート以外にも人気が高い。必ずしもトレーニングやエクササイズを目的としないスニーカーマニアやファッション性重視の消費者も取り込んでいるが、その理由は?
ホカのように年齢もステージも属性も超えて、多くの消費者を広く受け入れる優れた商品とブランドは、替えがきかないということだ。これはひいき目でも何でもないのだが、我々の美的感覚は今後もますます向上していくと思う。ちなみに、私の末娘は昨年、大学を卒業したのだが、「入学当時は、ホカのスニーカーなんてまず目にしなかったのに、卒業する頃には、寮から図書館までのあいだに、5~6人はホカを履いている人を見るようになったよ」と言っていた。
ーー話題の新進ファッションブランドだけでなく、たとえばコトパクシ(Cotopaxi)やアウトドア・ヴォイシズ(Outdoor Voices)といった老舗アウトドアブランドとも提携しているが、そのパートナーシップ戦略について聞かせてほしい。
私たちのパートナーシップのなかには、同じような考えを持つブランドとのものもある。たとえばコトパクシとのコラボレーションがそうだ。ホカもコトパクシも人と地球を大切にする価値観を持ったブランドだ。また両社ともに米アウトドア用品店REI(レイ)で販売してもおり、そうした点を考えれば、「え? あそことあそこがどうして一緒に?」というほど意外な話ではない。
実際、我々はそれよりもはるかに意外性のあるコラボレーションを行ってきた。なかには、一見、奇妙な取り合わせに思えるものもある。しかし、このようなコラボレーションは、非常に破壊的でインパクトのあるものになる。これは、ライフスタイルやスニーカーカルチャーの観点から私たちの認知度を高めることができているのは、こうしたコラボレーションの力が間違いなく大きい。
ーーそのような一風変わったパートナーシップを検討する際、相手ブランドに求めるものは?
その点において我々は非常に恵まれている。常に多くのブランドからアプローチを受けているが、私たちのチームがどこまでできるのか、そして適切に販売できるかどうかを念頭に置いている。たとえば、「このコラボレーションで我々はストーリーをいくつ伝えられるのか?」といったことを考える。
そして最終的には、この人たちと一緒に仕事をしたいと思えるか? また、彼らのブランドと価値観を尊敬できるのか? が大切だ。もちろん、我々とまったく同じ価値観である必要はないが、オーセンティックと認められるブランドであることは重要だ。彼らは何かを支持しているのか、そしてそれを然るべき形で支援しているのか? 昨今、オーセンティックでないブランドは、消費者にたやすく見抜かれるようになってきている。
[原文:Hoka One One’s Wendy Yang on how the footwear brand approaches fashion partnerships]
Maile McCann(翻訳:SI Japan、編集:戸田美子)