このところ、デジタル広告ターゲティング、およびバイイングにおけるカスタムアルゴリズムが一層注目を集めいている。というのも、昨今多くの広告主たちが、データ収集と使用に熱心になっているからだ。
このところ、デジタル広告ターゲティング、およびバイイングにおけるカスタムアルゴリズムが一層注目を集めいている。というのも、昨今多くの広告主たちが、データ収集と使用に熱心になっているからだ。こうした動向を受け、テック企業勢も広告主の効果測定、およびオーディエンスデータに基づくアルゴリズムモデルの構築に乗り出している。その結果生まれたのが、DSPと接続する運用システムであり、これまで汎用型だった広告入札プロセスは、ブランド個々の目的に応じてカスタマイズされる「一点物」へと様変わりしつつある。
「我々のグループ内だけでも、今年度、広告主のカスタムアルゴリズム需要に関する議論は3倍くらいには増えている」と、世界最大手の広告代理店グループ、ピュブリシス・メディア(Publicis Media)のベリファイドテック/コントラクト部門ディレクター、ケイリーン・オーネック氏は語る。広告主のカスタムアルゴリズムへの関心は、数年前から高まっていたが、サードパーティCookieをはじめとする識別子の有効性が減じたことで、ここにきて一気に増大したと氏はいう。「顧客関係の拡充とファーストパーティデータの活用への関心が高まっている。カスタムアルゴリズムの効果的利用についても然りだ」。
カスタムアルゴリズムの強化材料として、広告主がテック企業に提供するファーストパーティデータは、多くの場合、キャンペーン効果測定データか消費者行動に関する情報であり、これまでメディアバイイングやプランニングではあまり利用されていなかった。「カスタムアルゴリズムベースのソリューションに、自らのファーストパーティデータを加えるだけの余力がある広告主であれば、パーソナライゼーションの精度を向上できる。そしてそれは、パフォーマンス全体の引き上げを促すとともに、目的に即した成果を生み出すだろう」。
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パフォーマンス、透明性、ライバルの駆逐
企業のマーケティング/クリエイティブ支援を手がけるエージェンシー、ラップ・ワールドワイド(Rapp Worldwide)の顧客もやはり、プログラマティック広告やマーケティングミックス、そのほかマーケティング/セールス目的におけるカスタムアルゴリズムの活用に、強い関心を示しているが、その動機は最適化された広告パフォーマンス、および透明性に対する欲求だけではないと、同エージェンシーのチーフ・マーケティング・サイエンス・オフィサー、ジョン・ジム氏は語る。目的は、主に知的財産保護とライバルの駆逐にあるという。「彼らのフォーカスポイントは、アルゴリズムの漸次向上に必要な独自データの拡充であり、さらには、そのカスタマイゼーションを自社IP(知的財産)に繋げ、競争優位性を確保することにある」と、氏はDIGIDAYに語った。
「より良いパフォーマンスを求めるだけでなく、ライバルよりも良い道を進みたい、との思いが強いようだ」。こう語るのは、創業2年目を迎えたチャリス(Chalice)のCEO、アダム・ハムリック氏だ。チャリスは先日、ザ・トレード・デスク(The Trade Desk)から(額は不明だが相応の)資金調達を行った、データサイエンスコンサル企業だ。ハムリック氏によると、いま求められているのは広告主の幅広い目標を達成するために設計された「一般的なアルゴリズムモデル」や、GoogleやFacebookに有利なモデルではなく、プログラマティックプラットフォームに「独自の入札指示」を与えるシステムだという。たとえば、顧客のLTVをモニタリングしている企業ならば、ロイヤル顧客とライトな顧客を区別したうえで、最適な広告クリエイティブを出し分けするなど、より効果的なアプローチを望むはずだと、同氏は指摘する。
洗練と成長
ハイムリック氏によると、カスタムアルゴリズムが登場して間もない頃は、まだどのプロダクトも現在のものに比べると「原始的で、非常に使いにくかった」という。だがいまは、クラウドコンピューティングのおかげで、データの取り込みや保存、処理能力が飛躍的に向上し安価になったことで、データを新たな方法で活用できる、より洗練されたツールが生み出されるようになったという。
パリを拠点とするサイビッツ(Scibids)やWPP傘下のザクシス(Xaxis)といった企業も、急速に発展を続けるカスタムアルゴリズム業界に参入している。ザクシスは2018年、自社所有のAIプラットフォーム、コーパイロット(Copilot)を、広告主個々の目的に応じて自由度高くカスタマイズできる、洗練されたサービスに刷新したと、同社プロダクト部門を率いるジェイコブ・グラブチェスキー氏は語る。
グラブチェスキー氏によれば、2021年度、コーパイロットシステムが最適化したデジタル広告のうちカスタムアルゴリズムを用いた事例は、20%を占めている(昨年度は15%)。同社はこれまでに、家具リテーラーが高額購入者にリーチするために配信するプログラマティック広告や、高額の頭金が期待できる人々へのリーチを望む、ネット銀行の取り組みを支援している。「現在多くの広告主が、店舗訪問数や投資対効果といった、より多様な指標を(アルゴリズムに)統合して最適化を図っている」。
またハイムリック氏は、「広告アルゴリズムの構築にはさまざまな方法がある、というのが我々の見方だ」と述べたうえ、以下のように締めくくる。「広告主はいまの状況を、目的別に異なるツールが揃っている状態と捉えるべきだろう」。
[原文:Here’s what’s behind the rise of custom algorithms for digital ad decisions]
KATE KAYE(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)