先日、有名インスタグラマーの一行が北朝鮮に降り立った。少なくともインスタグラマー4人(フォロワー総数約140万人)が、閉鎖的な朝鮮民主主義人民共和国を撮影した美しい写真をフィードに流している。
ブルックリンの写真家タイソン・ホイートリー氏(フォロワー数:約65万5000)、ロサンゼルスの写真家ジェシカ・ゾルマン氏(フォロワー数:約24万7000)、そしてブルックリン在住の作家でデザイナーのクリス・コノリー氏(フォロワー数:約57万4000)は、1週間北朝鮮に滞在。近隣諸国をミサイル攻撃で繰り返し脅す、大部分が世界から切り離された全体主義社会で撮影した美しい写真を、インスタグラムを通して外の世界に紹介した。
先日、有名インスタグラマーの一行が北朝鮮に降り立った。少なくともインスタグラマー4人(フォロワー総数約140万人)が、閉鎖的な朝鮮民主主義人民共和国を撮影した美しい写真をフィードに流している。
ブルックリンの写真家タイソン・ホイートリー氏(フォロワー数:約65万5000)、ロサンゼルスの写真家ジェシカ・ゾルマン氏(フォロワー数:約24万7000)、そしてブルックリン在住の作家でデザイナーのクリス・コノリー氏(フォロワー数:約57万4000)は、1週間北朝鮮に滞在。近隣諸国をミサイル攻撃で繰り返し脅す、大部分が世界から切り離された全体主義社会で撮影した美しい写真を、インスタグラムを通して外の世界に紹介した。
世界最大の競技場だとされる綾羅島(ルンラド)メーデー・スタジアム内部、平壌大学の原子の形をした科学センター、素晴らしくライトアップされた人民大学習堂など、幻想的な写真の数々。投稿には平均5000件のいいね!とたくさんのコメントが寄せられている。投稿数はホイートリー氏が18件、コノリー氏は26件だ。
Advertisement
平壌マラソンを契機に入国
この旅行を組織した米国人インスタグラマーのドルー・ケリー氏(フォロワー数:約7万2900)は、本人のインスタグラムのプロフィールによれば、北朝鮮でマーケティングを教えたことがあり、最近まで4年間、北朝鮮に住んでいた。北朝鮮内から最初にインスタグラムを使いはじめたひとりであるケリー氏は、北京に拠点を置く旅行会社の高麗グループから、平壌マラソンを含む、北朝鮮への6日間ツアーに参加したい人がいないか問い合わせを受けた。高麗グループは中国に本社のある北朝鮮観光を手がける英国企業で、宿泊と旅行計画を手配する。西洋の人間が北朝鮮に入るための数少ない方法のひとつは中国経由だ。
「(私と)同じように人間性を創造的に示すことができるような人々――旅行のための旅費は各自が出した――を招待したかった」と、ケリー氏。そこで同氏は北朝鮮の暮らしに関するインスタグラムのアカウント@everydaydprkのキュレーションも行っている。そこで旅行会社に代わって、自分の人脈に働き掛けた。
マラソンの日に全員10kmレースに出場したことから、大会のたくさんの写真と、加えて食べ物の写真がある。人々が仕事に向かう平壌の列車システムを撮影した鮮やかな写真に、北朝鮮の美しい自然の写真。しかし、北朝鮮のイメージを悪くするおそれのある画像はない。インスタグラマーの一行は終始、北朝鮮の2人組の世話人に監視されていた。決められた旅程に従い、北朝鮮政府と旅行会社が許可した場所にしか連れて行ってもらえなかった。政府がこの旅行会社に今回の旅行を依頼したのかどうかははっきりしないが、高麗グループは年に数回、このような旅行を実施している。
平壌マラソンのゴール地点近く。私も10kmを完走できた。
SNSを理解してない世話人たち
ホイートリー氏は、一行が写真家であることも、インスタグラムに投稿していることも世話人たちはわかっていなかったということは言えると話す。ホイートリー氏によると、携帯電話のチェックは、入国時にはあったが出国時にはなかったという。同氏はVPNと、使用した分だけ課金される旅行者向けのプランを使って写真をアップロードした。ゾルマン氏は、アカウントで質問に答えたなかで、北朝鮮では安心でき、歓迎されていると感じたこと、ただ、滞在中に1枚、写真の削除を求められたことを明らかにしている。その1枚とは池に映った金正日氏の像で、これは許されていないという。
ホイートリー氏は、「要は、我々が全員、写真家で、画像をシェアするのが好きだということだ。我々はどこにいても写真をシェアするし、自然にそうしている」と語る。しかし、もちろんホイートリー氏が撮影できなかったものもあった。たとえば建設中の建物と軍の撮影は禁止されていたという。こうしたガイドラインは、旅行会社と世話人から、旅行の最初に説明があった。またこの旅行はガイド付きだったため、実際には世話人――および政府――が見て欲しかったものを見ただけということになる。
この旅行で気に入った食事は、開城(ケソン)市の伝統料理。これでもランチの一部。おいしい焼酎も少し出てきた。帰宅して本当に懐かしんでいる。
触れられたくない場所
この旅行はインスタグラムのインフルエンサーを使った旅行キャンペーンに似ている。たとえばフォロワー数が65万5000人のホイートリー氏は、以前にも自身が「観光関係」と呼ぶ仕事を請け負ったことがある。オーストラリアの旅行会社のためにカナダの観光当局に雇われ、同国を訪れてヘリコプターで空撮を行ったのだ。
「今回はそれとは違った」と、ホイートリー氏は米DIGIDAYに語った。「ハッシュタグは使わなかったし、アカウントへのメンションもしなかった」。ホイートリー氏によると、一行はただ旅行客としてそこを訪れ、普段やるように写真を撮ったという。
インスタグラムとインフルエンサーを観光マーケティングに活用するのが流行し、鉄のカーテンが面白い動きをみせたようだ。北朝鮮は観光では入れないと思っている人が多いが、実際はそうではない。今回のことで、そのような思い込みがいくらか変化するだろうし、普通なら目にする機会のない、もっぱら核兵器と気まぐれな指導者である金正恩氏という文脈で耳にするだけの国の別の側面を、人々は垣間見れたはずだ。
「公平を期すために言っておくと、世界のどこに行っても、それぞれ触れられたくない場所がある。ただ、北朝鮮が突出しているのは、閉鎖的な社会なので、そのような触れられたくない場所がたくさん報道される点だ」と、ケリー氏は説明する。触れられたくない場所というのは、控えめな表現だろう。国連は「北朝鮮には組織的な広範囲におよぶ深刻な人権侵害」があるとして、その調査のためにいくつもの委員会を作っている。
ううーん。
これが本当の北朝鮮の一部
それでも一行は、マラソン大会のために北朝鮮に入国したほかの観光客1200人と同じ移動の制限を受けたと、ケリー氏。ちなみに、今回の旅程に特別待遇はなかった。さらに旅行会社の高麗グループとは、新しい北朝鮮の旅行プランの実施に向け、話し合いをしているという。
ホイートリー氏ら一行は全員、各アカウントで質問に答えている。ホイートリー氏は、明白な人権侵害については何も目にしななかったが、帰ってきてからは同国について考え方が変わり、全体を見なかったのかもしれないと気がついたという。
同氏にはインスタグラムで、これは「本当の」北朝鮮なのかというたくさんの質問が寄せられている。「そうでないものがあるのは認めるが、私が目にしたものに関しては本当だ。総合すると独特な場所であり、その仕組みについてとても理解が深まった。それはいまも変わらない」と、ホイートリー氏は語っている。
Shareen Pathak(原文 / 訳:ガリレオ)