大手食料品チェーン店を対象にした食料・飲料品の新興企業が、今度はコンビニエンスチャネルに目を向けている。有力コンビニエンスストアに参入する企業もあれば、フードサービスやホスピタリティ、店舗レジで販売する機会を探している企業もある。シングルサーブによる グラブ&ゴー 形式への投資で、すでに増収している企業もある。
こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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クローガー(Kroger)や、ホールフーズ(Whole Foods)、ウォルマート(Walmart)などの大手食料品チェーン店をターゲットにした食料・飲料品の新興企業が、今度はコンビニエンスチャネルに目を向けている。
コンビニエンスチャネルは、ガソリンスタンドから、ミニマート、クイックサービスレストランのグラブ&ゴー(さっと買ってすぐに持ち帰れる食品)のコーナーまで、いくつもの種類の小売を網羅している。食料・飲料品の新興企業は、コンビニエンスストアをブランドへのロイヤルティを構築するための有力な方法とみなすようになってきている。これらのブランドは、より多くの顧客に対して、毎週の食料品の買い出しに、自社商品を加えるよう説得してきた。ソウルリィ(Solely)、カタリナクランチ(Catalina Crunch)、オリポップ(Olipop)などの新興企業は現在、人々が飲み物や軽食をさっと口にしたい気分のときに、自分たちの商品を思い浮かべてもらうことを望んでいる。
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これらの新興企業の中には、セブンイレブン(7-Eleven)やサークルK(Circle K)などの実績のあるコンビニエンスストアに参入する企業もあれば、フードサービスや、ホスピタリティ、店舗のレジなどでマーチャンダイジングの機会を探している企業もある。こうした企業の経営陣は、シングルサーブ(1食分)による持ち帰り形式への投資によって、すでに収益が増加していると述べている。
新しい、コンビニエンスに特化した流通
2017年に創業したフルーツジャーキーのブランドであるソウルリィは、2022年にシングルサーブの持ち帰り形式に注目を転じた。同社は2022年に5万カ所以上の流通ポイントを追加し、そのうちの約20%はコンビニエンスストアが占めている。
同社の最高収益責任者を務めるマイケル・アルガジー氏は、同ブランドの立ち上げから数年間で、コンビニエンスは、「今や我々にとって主要な市場になった」と語る。
同社は最初の数年間、フルーツパウチとマルチパックのスナックをターゲット(Target)やホールフーズマーケット(Whole Foods Market)などのチェーン店で販売することに注力してきた。この1年間で、セブンイレブンや、スピードウェイ(Speedway)、サークルK、カムアンドゴー(Kum & Go)などの有力コンビニエンスストアのチェーンに参入した。
アルガジー氏は、この数年間で健康的なスナックへの需要が増加し、コンビニエンスストアのチェーンも、女性の買い物客により寄り添おうとしてきたと指摘する。またソウルリィは、イビーブラウン(Eby-Brown)やマクレーン(McLane)など、コンビニエンスに特化した卸売業者とも提携した。
しかし、これらの流通ポイントでは、顧客の注目を集めるために別のアプローチが必要だった。ほとんどの人々は、食料品店で買い物をするときと、コンビニエンスストアに入るときとでは、考えていることが違う。「人々は一般的に、キャンディーやポテトチップスのような、気軽に食べられるものを買いにくる。当社の商品は、このような気軽な食品でありながら、健康的であるということを訴求していく」と、アルガジー氏は説明する。同社の新しいSKUには、チョコレートとカカオをふりかけたドライフルーツや、新たに発売された果物を丸ごと使ったグミベアなどがあり、よく売れていると同氏は語る。
「どのような種類の小売業者も、すべての条件を満たす商品を求めている」と同氏は語る。しかし、コンビニエンスで効果的に販売するため、同社はこの1年間、パッケージとマーチャンダイジングの改良を行った。
コンビニエンスでは通常、平均注文価格は低くなるが、シングルサーブ形式で販売することにはいくつかの利点がある。このカテゴリーではリピート購入率も高くなる。しかし、小売業者は店舗面積が一般的に小さく、棚の容積を最適化しようとしていると、アルガジー氏は語る。
そのため、「我々は、商品がよりコンパクトで棚に並べやすく、小売業者の店舗面積を節約できるようにパッケージを変更した」と、同氏は述べている。
ソウルリィは、いくつかのSKUを収納するため、ブランド名入りの棚用トレイを作成した。グラブ&ゴーのフルーツジャーキーのポーチ用に、12個入りのキャディーも用意し、店員が箱から出してレジの近くや壁に並べるのを簡単に行えるようにした。
クリエイティブになる
「コンビニエンス」チャネルといえば、歴史的に、ガソリンスタンドやセブンイレブンを連想する人がほとんどだろう。しかし、一部の食品ブランドにとって、コンビニエンスとは、消費者がさっと食べられるシングルサーブを求める場所すべてを意味する。2017年に創業したケトフレンドリーなシリアル、クッキー、スナックのブランドであるカタリナクランチは現在、コストコ(Costco)や、クローガー、ウォルマートといった全国展開の小売業者で販売されている。
創業者でCEOを務めるクリシュナ・カリアナン氏は、このような大手とのパートナーシップは今でも優先度が高いと、米モダンリテールに語った。しかし、糖分ゼロで低炭水化物というダイエットのトレンドは未だに根強いため、同社は健康的な朝食やスナックをさっと食べたい忙しい人々に向けた小売形式にアプローチしている。同氏は、コンビニエンスチャネルの一部としてホテルやリゾートのミニマート、コーヒーショップ、スムージーバーなども検討していると語る。
「カタリナクランチのブランドを食料品店以外に広げ、自然発生的な持ち帰りの機会を増やすことは、2023年におけるカタリナの流通戦略の重要な部分だ」と、同氏は述べる。同社は2020年6月に、シリアルでは初めてシングルサーブパックのテストを開始したが、この1年間で、ほかの人気商品でもこの形式を急速に採用してきた。
「たとえば、ラガーディア(LaGuardia)などの空港でクランチミックス(Crunch Mix)のパウチを販売したり、マリオット(Marriott)などのホテルチェーンと提携して、シングルサーブのシリアルをミニマートで提供したりしている」と、同氏は述べている。
チェックスミックス(Chex Mix)を健康的にアレンジしたクランチミックスなど、持ち帰り用の販売に特に適した商品もあると、カリアナン氏は語る。シングルサーブのクランチミックスは5月に発売される。
これまでのところ、コンビニエンスへの投資は実を結んでいる。カタリナクランチは2023年の第1四半期に、このチャネルでの売上額が前年同期に比べて3ケタ成長したと、同氏は確認している。「その結果、当社は自社の25種類あるすべてのSKUについて、シングルサーブのバージョンを発売した」と、同氏は述べている。
見出し
フードサービスによるグラブ&ゴーでの販売は、他社にとっても顧客にリーチする新たな販売チャンスだ。
ソーダブランドのオリポップは、スイートグリーン(Sweetgreen)の全店舗でシングルの缶を発売することを、4月に発表した。同ブランドは現在、食料品店や大手小売店チェーンなど、全国2万1000店以上の店舗で販売されている。
同社の共同創業者でCEOを務めるベン・グッドウィン氏は、スイートグリーンとの提携は、オリポップがあらゆる店舗の棚に並び、大手のソーダ企業と競合するというミッションの一環だと語る。「顧客にとってのコンビニエンスは、当社の小売戦略の最重要事項であり、顧客が好みのスイートグリーンの注文をするとき、常に当社の商品がそこで販売されているようにすることは、当社の目標に近づくという意味で、エキサイティングなことだ」と、同氏は述べている。
コンビニエンスでの販売を増やすため、さらに努力が進められている。たとえばソウルリィは、増え続けるポートフォリオすべてについて、持ち帰り用パッケージへの投資を継続する予定だ。同社は新しいパッケージのデザインにより、買い手のあいだで同社が優位に立てることに期待している。
「新しいグミの商品ラインも含めて、すべての自社商品をコンビニエンスストア向けのパッケージにしていきたい。今後3〜6カ月に、コンビニエンスストアをさらに重視し、より多くの店舗での販売を行うことを計画している」と、ソウルリィのアルガジー氏は述べている。
[原文: Grocery startups are eyeing convenience stores and grab-and-go formats for growth]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Solely