食料品 業界は、特にeコマースの増加がけん引し、2020年は10%成長したが、2021年第1四半期の販売は減少した。パンデミックのさなかにおける、さらなる販売増に向けた対応策として、ロイヤルティプログラムに回帰し、ミールキットのような、よりマージンの高い商品を押し出すようになった。
米国では、顧客の買い物習慣が通常に戻り始めた。そんななか、食料品店は彼らの財布の中身の一部が、レストランに奪われてしまうことを心配している。
食料品業界は、特にeコマースの増加にけん引されて、2020年には10%成長した。だが、2021年第1四半期の販売は減少し、ライバルであるレストランが営業を再開しつつあるなかで、食料品店はパンデミックのさなかにおける、さらなる販売増につなげる方法を模索している。こうした状況への対応策として、各企業はロイヤルティプログラムに回帰し、ミールキットのような、よりマージンの高い商品を押し出すようになった。
実店舗への客足は回復基調に
位置情報データ分析のプレイサー・ドット・エーアイ(Placer.ai)によると、食料品店へ実際に足を運ぶ人は、宅配が好まれたこともあり、2020年には前年比で28%も減少したが、2021年3月には客足が戻ってきたという。店舗では、買い物客は従来の習慣に戻り、週末や午前中に、より長い時間をかけてまとめ買いをするという以前と似た買い方をするようになった。「ミッション遂行型ショッピング」、あるいは、事前に決めておいた生活必需品のリストの品だけを、手のあいた時間に混雑を避けて猛ダッシュで買ってくるといった行為は減っている。
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プレイサー・ドット・エーアイのマーケティング担当バイスプレジデント、イーサン・チェルノフスキー氏はこう話す。「『通常の』買い物パターンへの回帰は、我々の購買行動において、ルーティンがいかに重要であるかを示すものだ。食料品店にとってそれは、こうした要素を認識し、それに沿ったビジネスを構築することを意味する」。
オンライン食料品店は、パンデミック以前と比べて存在感を増し続けているが、将来の成長幅は狭まるだろう。ブリック・ミーツ・クリック(Brick Meets Click)とメルカトゥス(Mercatus)が行った「食料品店での買い物に関する調査(Grocery Shopping Survey)」によると、2021年4月のオンライン食料品店の売上は3月より10%減少したという。さらに4月のレストランの売上は3月より4.6%増加していた。
オンライン需要の反動減
このような状況のなか、多くの食料品店の売上は、2020年は前四半期比および前年同期比で一貫して増加していたが、2021年第1四半期は初めて減少した。ウォルマート(Walmart)の食料品部門の売上は、前年同期比で「これまでにないレベルで減少した」と、同社のエグゼクティブバイスプレジデント兼CFOのブレット・ビッグス氏は第1四半期の決算発表で述べている。クローガー(Kroger)でも第1四半期の売上は1%減少している。
調査会社カンター(Kantar)のデータインサイト部門で小売インサイトを担当するシニアバイスプレジデント、トーリー・ガンデラック氏のようなアナリストは、2020年の予測不可能性を考慮すると、前年との比較よりも「これにはより微妙なニュアンスがある」という。2020年、食料品店は極めて通常の第1四半期を過ごし、3月と4月は「狂気じみた買いだめ月間」となり、年の後半は前例のないデジタル売上を経験した。
「当然のことながら、2021年はここまで、2020年に見てきたものと比較して成長の減速があった」と、ガンデラック氏はいう。「2021年の話をする際には、さまざまなものが混在していることを忘れてはならない。これまでのところ、食料品店にとっての2021年は、ジェットコースターのようなものであり続けている」
ロイヤルティが大きな焦点に
2020年に経験したような売上の伸びに追いつこうと、各食料品店は刷新されたロイヤルティプログラムへの登録や、より高価な商品の購入を顧客に勧めている。
チェルノフスキー氏は、「パンデミック以降の成功は、これらのブランドが、パンデミック中やパンデミック前の両方で、いかに効果的に顧客基盤へサービスを提供してきたかによって決まる。ロイヤルティは食料品店市場において大きな役割を果たしている」と話す。
アルバートソンズ(Albertsons)のプレジデントで最高執行責任者(COO)のビベック・サンカラン氏は、2020年度第4四半期の決算発表において、同社のロイヤルティプログラムのメンバーシップは、2020年に「各四半期ごとに前年比で20%以上増加」し、「定着率93.1%で、2540万人の登録者がいる」と語った。サンカラン氏はさらに、ロイヤルティプログラムのメンバーは「登録していない顧客より2.6倍多く支出している」と続けた。
アルバートソンズでは、忠実な顧客に対応するために、有名シェフによる料理対決のような会員限定イベントや、特典、お得情報の提供を開始した。また、現在は別々になっているショッピングアプリとロイヤルティアプリを、将来的にはひとつに統合する計画もある。
顧客管理ツールとしての活用も
ウォルマートは昨年、無料配送と割引が受けられる有料会員プログラム「ウォルマートプラス(Walmart+)」を開始した。ウォルマートのプレジデント兼CEO、ダグ・マクミロン氏は、第1四半期の決算発表のなかで、食料品は「メンバーシップを販売するためのもっとも重要な原動力」のひとつであると述べている。
ロイヤルティプログラムは、顧客が食料品店でより頻繁に買い物をするようになるだけでなく、貴重なデータ収集ツールにもなる、とアナリストはいう。
調査・会計企業KPMGのマネージングディレクター、ジュリア・ウィルソン氏は次のように語る。「新型コロナウイルスの感染拡大中は、人々はとにかく棚の商品を手に入れようとしていたので(ロイヤルティは)フォーカスされなかった。(いまは)ロイヤルティプログラムを利用しているところは、消費者を引き付けるためにそれを使っている……が、賢明な企業はロイヤルティプログラムを利用して顧客の理解を促進している。驚くことに、食料品店の多くは、消費者や買い物客について実際にはよく理解していない」
eコマース分析企業プロフィテロ(Profitero)のプレジデント、サラ・ホフステッター氏は、「現在の最重要課題は、ファーストパーティデータだ。「ロイヤルティプログラムのデータがあれば、人々がどのように、いつ買い物をしているか、バスケットに何を入れているかがわかる……これによって小売業者はデータを基にメディアを販売し、サプライヤーとより良い条件で交渉し、売ることもできる。これはとても賢い戦略だ」
ミールキット売上は2ケタ増
食料品店にとってほかの注目エリアは、パンデミックのあいだ、レストラン内での食事がほとんどできなかったときに、消費者が群がっていたより高価な商品を買い続けてもらうことだ。ニールセン(Neilsen)によると、2020年のパンデミック時にミールキットの売上は18.7%増加したという。アナリストたちは、特に経済が回復するにつれて、こうした高額商品のバンドル購入は続くだろうと考えている。
「消費者はミールキットの使い方を学び、毎日のメニューを補うものとしてそれを使い続けるだろう……我々は景気後退の状況から脱し、消費者が可処分所得を持つより豊かな環境へと移行しつつある」と、ウィルソン氏はいう。
ガンデラック氏はさらに、パンデミック中にオーガニック製品への関心が高まり、「その関心は減ってはいない」と話す。
営業を再開する店が増えても食料品店に有利な傾向があるのは、すべての労働者がまだオフィスに戻っていないという事実だ。同僚と一緒に外食するよりも、家で自分の昼食を作るほうが多い。
「外食のレベルがパンデミック前の水準に達しているとは言えない」と、ガンデラック氏はいう。「我々はまだ、家で料理をして食べることのほうが良いとされる世界に生きている」
[原文:Grocers are betting on loyalty programs, meal kits to keep sales growing in 2021]
MAILE MCCANN(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:戸田美子)