LGBTQメディア、動画スタジオをクリエイターに無料開放:不適切なフィルタリングを回避

LGBTQを対象にしたデートアプリ、グラインダー(Grindr)には創立から1年になるパブリッシング部門イントゥ(Into)が存在する。プラットフォームの多くは、投稿・配信されたビデオ内で使われるLGBTQのコミュニティ内で使われるスラング、用語などをヘイトスピーチと誤解して禁止・罰してきた歴史がある。イントゥは、そういったプラットフォーム以外でのビデオ配信を求めるLGBTQクリエイターたちの配信アウトレットとなるべく、自身のサービスを提供している。

イントゥはロサンゼルスのウェスト・ハリウッド地区に、プロダクションスタジオをオープンした。LGBTQクリエイターや広告主、またほかのメディア会社がビデオ制作をするためのスタジオとなっている。LGBTQクリエイターたちをサポートするだけでなく、イントゥが所有するサイトなどに効率よくビデオ供給を行うことも狙いだ。クリエイターたちはスタジオを無料で利用できるが、制作したビデオはイントゥのサイト上でもパブリッシュすることに同意しなくてはいけない。スタジオをクリエイターたちに解放することで、彼らが制作したビデオを使って広告を売るというわけだ。また広告主によるビデオ制作のためにもスタジオを利用する計画があるという。広告主の場合は、イントゥに対して制作と配信の費用を払うことになる。

YouTube同様の動き

イントゥがローンチした2017年8月、自社内でビデオを制作するのではなく、外部のクリエイターたちに委託するという選択を採った。そしてコンテンツを確保するためにエディターをひとり、責任者として就かせた。しかし、委託されたインデペンデントのクリエイターたちはしばしば、自分たちのビデオを撮影する場所を持っていなかった。そこで、イントゥはパシフィックデザインセンター内に持つ、ふたつのオフィスのうちひとつをプロダクションスタジオに改築。パシフィックデザインセンターは、160万平方フィートの面積を持ち、デザイン事務所や建築家にオフィススペースを貸し出している。

YouTubeは、YouTubeスペース(YouTube Space)という名称で世界中のクリエイターたちに制作スペースと設備を提供しているが、イントゥのスタジオもそれと同様の働きを行っている。クリエイターたちは、まずビデオのピッチをイントゥのエディターへとeメールする。それをエディタが審査し、撮影のスケジュールを組む、という具合だ。グラインダーの最高コンテンツ責任者でありイントゥの編集長であるザック・スタッフォード氏は、プロジェクトに合わせてクリエイターたちに報酬を支払っているという。

ビデオ制作のためのスペース、設備、そして資金をクリエイターに提供し、イントゥは出来上がったビデオを彼らのサイト、FacebookやYouTubeといったソーシャルアカウント、そしてスタッフォード氏によると、デイリーアクティブユーザー数が380万人も存在するというグラインダーで配信する。クリエイター自身のFacebookやYouTubeチャンネル上でもビデオを配信できる。多くの場合はビデオの権利は、イントゥに譲ることが求められるという。

コンテンツの権利

「一般的には、我々が制作するほとんどのコンテンツの知的財産権は、我々が所有する。我々のサイトで存在するからというのが理由だが、交渉にも対応している」と、スタッフォード氏は言う。

コンテンツの権利を譲ってしまうことに関して、クリエイターたちはためらいを感じるかもしれない。メディア会社たちが自身の知的財産をNetflix(ネットフリックス)Facebookに渡すことをためらうのと同様だ。しかし、イントゥにビデオを渡すことで、最終的にはクリエイターたちがプラットフォームで公開するよりも多くのビュー数を稼ぐ可能性がある。イントゥは、FacebookとYouTubeと協働して、彼らが制作したコンテンツがフラグ検知されないように取り組んでおり、同様の取り組みをクリエイターたちのビデオにも行うと、スタッフォード氏は語った。

「LGBTコンテンツが、YouTubeやFacebookで不適切なコンテンツであるとフラグが立てられるという問題が、ここ数年間のあいだ起きてきた。これはもちろん理解できる側面もある。クィア(queer:「奇妙な」という意味)という単語は、必ずしもネガティブな意味合いで使われているとは限らないが、アルゴリズムはこれを理解することができていない。また誰かのことを「ゲイ」と形容することは、ネガティブな意味合いな場合もあれば、そうでない場合もある。本当に文脈によるからだ」と、彼は説明した。

Tim Peterson(原文 / 訳:塚本 紺)
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