米国の2020年クリスマスシーズンにおいて、各社のマーケターはオンライン収益を伸ばそうと取り組みを続けていた。コロナ禍により、プレゼントをオンラインで購入するケースが飛躍的に増えたためだ。バカルディのウォッカブランド、グレイグースもまた、ECの新たなアプローチを模索しているようだ。
米国の2020年クリスマスシーズンにおいて、各社のマーケターはオンライン収益を伸ばそうと取り組みを続けていた。コロナ禍により、プレゼントをオンラインで購入するケースが飛躍的に増えており、その点では各社の取り組みも当然といえる。バカルディ(Bacardi)の保有するウォッカブランド、グレイグース(Grey Goose)もまた、ECの新たなアプローチを模索している。同ブランドは2020年はじめに家庭用カクテルキットを発売しており、現在オンライン広告の取り組みを加速させている。
米DIGIDAYは2020年末にグレイグースのグローバルマーケティング担当バイスプレジデントのマーティン・ドゥ・ドゥルイユ氏にインタビューを実施。クリスマスシーズンに同ブランドがどういった広告を展開し、また広告のアプローチをどう変化させたかを尋ねた。
なお、以下のインタビューは読みやすさを考慮し、若干、編集を加えている。
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──パンデミックによって広告戦略は変わったか?
パンデミックが始まった当初から、オンラインにおけるカスタマージャーニーは劇的に改善した。カスタマージャーニーの改善に伴い、それぞれのタッチポイントを明確に設定し、メッセージを最適化して、ファネルを通じてより多くのユーザーを購入に導けるようになった。SNSやウェブサイト、検索、メディアパートナー、ECプラットフォームをつなげることでデジタルなエコシステムを構築し、非常に一貫した体験を提供できている。
──オンラインにより多くの広告予算を割くようになったのか?
ここ数年で、当社のオンラインメディア向けの予算は大幅に増えている。ただ米国市場においては、グレイグースにとってテレビの力はいまだに大きい。競合他社をリードするようなブランド力の醸成や、リーチの拡大において非常に効果的だ。ここ数年で従来型のメディアに投じた額は、全体のおよそ6割から7割といったところだろう。
だが2020年はこれが5割、オンラインメディアが残りの5割に近くなっているはずだ。これは当ブランドが目指す方向性にも合致している。2020年の取り組みと、目標を達成できたかをKPIを見ながら調整していく必要がある。だが、当ブランドほどの規模になれば、米国におけるメディア計画で、既存メディアが果たす役割はいまだに大きい。
──SNSの利用時間が増えたため、クリスマスキャンペーンにおけるインフルエンサーの影響力が拡大しているという話をよく聞く。グレイグースにとっても同様か?
クリスマスシーズンについては、2020年は例年と違ったものになったと認識している。しかし2020年のような年であっても、クリスマスは祝うべき素晴らしいことであるということを人々に思い起こさせたかった。インフルエンサーと協力して、クリスマスシーズンをいかに楽しく過ごせるかを示すため、俳優のジェイ・エリスと提携して制作したコンテンツ「ホリデー・ベスト(Holiday Best)」などを公開してきた。ほかのインフルエンサーとも提携し、数週間に渡って視聴者にとって楽しく刺激的なコンテンツを提供し、皆様にクリスマスと年の瀬を楽しく過ごしていただけるよう取り組んだつもりだ。
──クリスマスキャンペーンでインフルエンサーと提携したのはなぜか?
インフルエンサーは、パートナーシップにおいて非常に大きな役割を担う存在だ。SNSにおけるブランドの浸透を助けてくれるし、ECパートナーと合わせてリターゲティングすることで、ユーザーを購入へと結びつける力がある。人々がSNSを利用する時間が増えている今、インフルエンサーのメッセージ拡散力はとても貴重だ。
──ECへの移行が加速したことで、製品提供に関するアプローチはどう変化したか?
自宅で簡単にカクテルを作れるようにする取り組みを進めている。たとえば2020年のテニスの全米オープンでは、デリバリーサービスのカクテル・クーリエ(Cocktail Courier)と提携し、カクテルキットを発売した。カクテルキットには(全米オープン)記念グラスもセットとなっており、自宅でカクテルを合計4万杯作れるだけの売上となった。非常に大きな成功を収めて満足している。
──カクテルキットを再度販売する予定はあるか?
調査したところ、クリスマスシーズンに飲みたいカクテルとしてウォッカを使った「ホリデーパンチ」が人気であることが分かった。そこでホリデーパンチを作るためのツールや材料を提供するキットを制作した。ストリートウェアのデザイナー、アンワー・キャロッツ氏と提携し、家庭でクリスマスシーズンを祝うためのセーターをデザインし提供もした。当ブランドはこのように、さまざまな形でECへの取り組みを強めている。皆様が自宅でカクテルとともによい思い出を作っていただけるよう、今後もさまざまなアイデアを提供していく。
──2020年に試みた広告戦略で、驚かされたものはあったか?
QRコードの使用が大幅に増加した。コロナ禍以前は、QRコードの利用は落ち込んでいたが、今ではQRコードをスマホのカメラを使って利用する人が増えている。そして現在検討しているのがテレビCMやオンライン動画にQRコードを載せることで、オンラインで販売しているサイトにアクセスできるようにすることだ。これについてはすでに試験的に実施している。ユーザーをファネル上部へと誘導し、ブランドの知名度を高められる。ブランド力を高めれば、何か機会を作ることで注文してもらえるようになるし、画面にコンテンツを追加することでブランドと触れ合う機会も増やせる。この手法についてはより力をいれるようになっており、露出面も投資額も増加している。
KRISTINA MONLLOS(翻訳:SI Japan、編集:分島 翔平)