「 D2C という用語は時代遅れ」:VCのパートナー、ヘンリー・マクナマラ氏に聞く

グレート・オークス・ベンチャー・キャピタル(Great Oaks Venture Capital)のパートナーであるヘンリー・マクナマラ氏は、スタートアップの創業者たちに、D2C(Direct to customer)戦略を放棄してほしいと思っている。

マクナマラ氏はこう語る。「この5年間でDNVB(Digitally Native Vertical Brand)の一部が規模を大幅に拡大させたのを見て、たくさんの人々が、日用品を用意してインフルエンサーマーケティングを行えば良いのだと考えている。かなり一般的にそう信じられている」。

マクナマラ氏が所属するグレート・オークス・ベンチャー・キャピタルは、オールバーズ(Allbirds)やアウェイ(Away)、ダーティ・レモン(Dirty Lemon)、リセス(Recess)のようなブランドに投資してきたシードファンドだ。マクナマラ氏や彼のチームは、規模と差別化の両方を求めている。

マクナマラ氏によれば、投資に関する判断について言えば、D2C販売は必ずしも大きな決定要因とは言えない。一番影響の大きい要因としては、商品の差別化が、一貫性のあるブランディングや、カスタマー・インサイトを基本にする流通戦略に並ぶという。

以下のQ&Aでマクナマラ氏は、D2CおよびDNVB分野の将来性や飽和状態について、自身の見解を語ってくれた。期待される規模や、インターネットの世界で「混雑した有料道路」のような存在であるFacebookとインスタグラム(Instagram)からの逸脱などについてもだ。読みやすさを考慮して、回答には編集を加えている。

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――純粋なD2Cブランドはもう終わりだというのか? この分野にとって、それは何を意味するのか?

D2Cという用語は時代遅れであり、DNVBのほうが適切だ。直販だけがチャネルであることを意味するわけではないからだ。

オンラインは、ブランドを立ち上げて顧客と直接結びつくためには、信じられないほど素晴らしいチャネルだが、それには、市場や業界、商品、消費者基盤のそれぞれに適切なチャネルの組み合わせを見つけることが不可欠だ。だから、100%オンライン化するものがあるとは思わない。インスタグラム(Instagram)やFacebookのような「インターネット世界の有料道路」において、顧客を獲得するのに掛かる費用が増え、さらに混雑している状況を見ると、特にそう言えるだろう。

新しいブランドについて、私はそう考えている。それらのブランドはオンラインで誕生したが、それぞれが自社に適切なチャネルとパートナーシップの組み合わせを見つけるだろう。

――そうした変化によって、投資先を選ぶ際に、創業者の宣伝文句に対応するときの基準が変わったか?

この数年間で、特にD2Cブランドに関しては、目標は大幅に動いてきた。オンラインで顧客を獲得することに関しては、すでに鞘取りのチャンスがない。かなりの飽和状態であり、もっとも低いところに翻弄されてしまう。

市場シェアを獲得するために、あるいは、いずれは利益になったり、ならなかったりする「再購入しそうな顧客」を獲得するために、喜んで故意に資金を過剰に用いるブランドがある。そしてそれが、その分野のほかのすべての企業に影響を及ぼす。

だから、特にこの段階では、我々のもとにやって来て、いわゆる「D2C戦略」を示すブランドに対しては、我々は非常に懐疑的になっている。そういった戦略は、2012年の日用品には効果的だったかもしれないが、2019年には効果的でないのは確かだ。

人々がD2C戦略に飛びつくのは、ランディングページを簡単に用意して少々のブランディングを行えば、顧客に直接販売できて、もっと高い利益率が得られる、と考えてのことだ。より従来型の消費者向け企業と比べて、それほど差別化がされていない商品であっても、顧客に直接販売できると思っているのだ。

2018年には、我々は流通ベースの企業に投資してきた。もっぱら診療所を通じて販売する大麻ブランドのベシト(Besito)。州ごとに従来型の流通業者を通じて販売する缶入りロゼワイン会社のベヴ(Bev)。従来型の流通と独自の直販を通じて販売しているCBD(カンナビジオール)飲料メーカーのリセス。2018年に投資したこれらは、必ずしもD2Cブランドではない。これらのブランドは、広い視野を持って市場に参入した。厳密には直接販売ではないが、顧客にエンゲージしてやりとりする手段を持ち、顧客が求めるものを知り、デジタリーネイティブでありながらも、顧客がいる場で対面販売している。

――ブランドは、純粋な直販モデルからシフトするなかで、どうやって、顧客データを利用しつつ、従来のブランドと違う方法で営業しているのか?

D2Cブランドの要素のなかには、従来のブランドともっと似ているように見えるものもある。それはそれでいい。だが、我々が価値を見出すのは、顧客と直接やりとりする手段があることだ。一つひとつのやりとりは、必ずしも取引につながらなくてもいい。

我々は、ある考えをサポートする投資を行っている。つまり、消費者が求めるものをより良く理解すれば、開発中の商品や行動を実はあまり変えていない企業と比べて高度なサービスを提供でき、より良い商品で成果を上げられるという考えだ。ただしミレニアル世代は、それ以前の世代とかなり違う欲求やニーズを持っている。

――そうした消費財ブランドに対して、投資家として規模拡大に適切な時間や空間を与えつつも、どのようにして、調達した資金で確実に期待に応えるよう求めているのか?

我々は長期的な投資家だ。すべての企業が、最初の1年で2500万ドルから3000万ドル(約25億から30億円)まで規模を拡大するわけではないし、それで構わないと理解している。根本的に異なる分野のこれらの企業すべてをひと括りにしたくない。マットレス業界とフットウェア業界は根本的に違う。分野ごとに異なる購入行動や消費者、販売戦略がある。

我々にとってそれは、我々のエントリーポイントと、その企業が現実的にどこに立てるかによる。年間売上高が1億ドル(約100億円)に達する潜在力があるとは考えられない企業に、我々が投資するとは思わない。それはつまり、市場が小さすぎるか、チームに十分な野心がないことを意味する。だが、投資家としての我々が、そういう水準の売上高を達成すると期待する時期について、スケジュールを定めることもない。

――カテゴリーの観点か、ビジネスモデルの観点から見て、飽和しすぎていると思う領域はあるか?

どの分野であれ、飽和しすぎているとは私は言わない。だが、超飽和状態のカテゴリーで我々が胸躍るためには、適切なチームと、ビジネスモデルか商品の差別化が必要だ。

私をもっとも懸念させる、あるいは、ワクワクしにくいと思うピッチは、その企業が日用品を販売している場合だ。日用品は、ブランドを構築するのに素晴らしい場合もある。しかし現在の世界では、どういう形で日用品が持続可能なブランドを構築できるかを確認するのが難しい。商品の差別化については、我々は本当に確認したいと考えている。

ピッチに関して最近私が心配になる別のことは、顧客を獲得する方法について、インフルエンサーに金を払ったり、インスタグラムや広告に金を投入したりする以外にはあまり方策もないD2C戦略を耳にする場合だ。そういうのは戦略ではない。

多くの人が、ブランドとはただ、ランディングページとロゴのことだと思っている。だが我々の経験では、これまでに見たなかでもっとも成功しているブランドとは、本当は約束であり、顧客とともに築いていく信頼だ。顧客サービス担当者とのやりとりや、自宅に届く商品など、あらゆるものを信頼できる状態だ。そういった企業を我々は見つけようとしている。

Hilary Milnes(原文 / 訳:ガリレオ)